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禍羽根の王 〜序列0位の超級魔法士は、優雅なる潜入調査の日々を楽しむ〜  作者: supico
■第一幕■ 魔法庁附属、魔法学校・紺碧校。本科3年:編入初日
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晩餐④



「——さぁってと。そろそろ部屋に戻るか」


 キリの良いところで切り出した和久に続いて、ユーリカも頷く。


「そうね。明日に支障があったらダメですもの。また、機会を見つけてお食事会しましょ」

「あざっす! けど、そんときゃナイフとフォークを1本ずつでお願いします」

「……デザートだけで良いってこと?」

「あはははははっ。そうきますか!」


 見当違いのユーリカに爆笑する和久。けれどユーリカの気持ちもわかる。和久が意外にも甘いモノ好きだとわかったのは、密かに一番の収穫だ。


 全員が席を立ち、玄関まで移動したところで、そういえば副会長の姿を全く見なかったことに気付いた。累の中で、従者といえば常に側近くにいるものだという認識があったから、とても意外だ。


「そういえば、副会長は……」

「あぁ、ごめんなさいね、顔も出さずに。夜は自由にしてもらってるのよ。一応冬馬も、紺碧校の副会長であり、特別棟に一部屋貰ってる学生なんですから」


 私の世話ばっかりしてて成績が落ちたんじゃ、本末転倒でしょ?

 そう笑うユーリカは、冬馬のことを大切に考えているのがわかる。ただの従者ではなく、同じ学生として接したい気持ちがあるのかもしれない。


「それにきっと今は、1人で訓練でもしてるんじゃないかしら? 冬馬って、努力してるところを見せるの、凄い嫌いらしくてね」

「あ、俺もその気持ちはわかりますよ。基礎的な魔法で失敗してたりすると、凄い恥ずかしいし」

「和久もそうなのね。私はどっちかというと、誰かに相手してもらいたいタイプなんだけど。……ま、そんな感じだから、話があれば明日でいいかしら?」


 もちろん、何の問題もない。まだ直接会話したことが無かったから、この機会に挨拶でも、と思っただけなのだ。


「はい、じゃあまた明日、よろしくお願いします」


 累がそう返答すると、待機していた使用人が、丁寧に扉を開けてくれた。


 礼を言いながらその扉をくぐったところで、廊下の隅に立つ、見慣れた細身のシルエットに気付く。


「……スズメ?」

「お帰りなさいませ。お迎えに上がりました」


 ハイウエストのフレアスカートを翻して、さっと近づいて来たのは、説明するまでもなく累の従者であるスズメだった。お手本のような綺麗な立礼で主人を出迎え、すぐに廊下の端へと避ける。


「迎えって……えぇと、この距離で?」


 累の部屋までは、ここから数十歩程度。なんといっても同じフロアなのだ。


「何か問題が?」

「何もございません」


 一片たりとも表情を動かすことのないスズメに、早々に折れた累。これは無理だ。

 きっと昼間、揶揄い過ぎた反動なのかもしれない。そう考えれば、この怜悧を装う表情だって可愛いものじゃないか。


 突然現れた累の従者を伺うように、こちらを見ている3人に向き直った。


「えぇと、従者のスズメです」

「本日は累様の為に、このような場を開いて頂き、誠に感謝しております。今後とも宜しくお願いいたします」

「まぁ、峯月くんの従者、凄い愛らしい子なのね……。いいえ、こちらこそ気が利かなかったわ。本来なら、お送りする者をきちんと用意すべきでした。次からは安心してちょうだいね」


 貴族であるユーリカが、さも当然の配慮を欠いたとばかりに謝ってくるが、念のため言おう、ここは学校の寮だ。

 どれだけ過保護なんだよ、と和久の呆れている空気がありありと伝わってくるのが痛い。累だって同意見ではあるのだ。……もう慣れたが。


「いえ、本当にお気遣いなく……。じゃあ、お先に失礼します。今日はご馳走様でした」

「えぇ、またね。明日は全力で基礎トレーニングに励んでちょうだい」


 スズメを伴い帰ろうとする累に、にっこりと完全無欠な笑みを浮かべたユーリカは、至極適切なアドバイスをしたのだった。



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