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禍羽根の王 〜序列0位の超級魔法士は、優雅なる潜入調査の日々を楽しむ〜  作者: supico
■第一幕■ 魔法庁附属、魔法学校・紺碧校。本科3年:編入初日
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訓練が終わって……④


 ユーリカも、和久のコメントに吹き出していたから、同じ心境だったのだろう。


「やっぱり絶妙ねー。——あ、冬馬。貴方も暇なら、一緒に歓迎会、どう?」


 主人の言葉を否定する事は出来ず、だが決して歓迎してない様子の従者を、無謀にも誘ってみたユーリカだったが、


「有難うございます。ですが鷺ノ宮家でお迎えするお客様と同席するのは恐れ多く、今回は遠慮させて頂きます」

「そう……まぁ仕方ないわね。じゃあ私と峯月くん、和久、ニイナの4人分でお願い」

「かしこまりました。では早速手配を致しますので、お先に失礼させて頂きます」


 丁寧な所作で一礼し、歩き去っていく冬馬。

 急展開に翻弄されたままの和久を一瞥することもない、無駄の一切無い挙動には有能さが滲み出ているが、その分近寄り難い印象を受ける。


 結局一言も挨拶出来なかったなぁ……と思いながら視線をユーリカに戻すと、


「ごめんね、冬馬って一線引いちゃうタイプなのよ。同級生なんだから、気軽に付き合えばいいのにねぇ。固いんだから……」


 どうしたらあの性格は直るのかしら? と頰に手を当てている姿に苦笑する。立場上、どうしようも無いだろう。

 真面目な従者では、主人としては奔放なユーリカに付いていくのは、気苦労も多かろうと慮ってしまうが、自分も他人のことはとやかく言えない。


「副会長も大変なんでしょうねー」

「あら。峯月くんも冬馬の味方をするの?」

「いえいえそんな、滅相もございません」

「よーくわかりました。君は今度、私の班でみっちりシゴいてあげる」

「えぇぇっ」

「じゃ、そろそろ集合がかかりそうだし、先に行くわ。また後でねー」


 なんとも気安くバイバイをしていくユーリカに、こちらも手を振り返していいものか悩む。が、さすがに会ったばかりの名家のお嬢様に向かって、手を振るのは気が引けて、小さく頭を下げるに留めておいた。


「イメージと全然違う人だなぁー……って、和久、どうした?」

「……やべぇよー……、俺、テーブルマナーほんっと無理なんだけど……」


 木の根に座り込んだまま凍りついていた和久が、ようやく動いたかと思えば、額に拳を当てて大きく溜息を吐く。


「大丈夫。意外と何とかなるもんだって」

「何でお前はそんなに自信満々なんだよっ……って、特別棟のお坊ちゃんだったか」

「違う違う。出身はごくごく一般的な中流家庭だよ」

「はぁ? じゃあなんで特別棟なんだよ。どう考えても、探知能力だけじゃ割り振られんだろっ。ニイナ以下の運動神経ヤローがっ」

「酷いなぁー。まぁそれもそうなんだけど……あ、ニイナだ」


 何て言い返してやろうかと考えながら視線を上げると、悪口の材料に使われていた話題のニイナが、笑顔で手を振りながら歩いてくるのが見えた。頼ってきた面々に回復魔法を全て施してきたらしく、若干疲れた顔をしている。


 その進行方向には、先ほど別れたばかりのユーリカ。


 案の定、途中でユーリカと擦れ違ったニイナは、ふんわりとした笑顔で挨拶をした。……かと思ったら、突然焦り出したように両手を突き出し、首を振っている。白いふわふわの髪を左右に揺らしながら、必死に何かを遠慮しているようだ。


「……ありゃーニイナも会長に誘われたな……」


 憧れのアイドルに話しかけられたかのように、頬を紅潮させていたニイナが、だんだんと必死の形相になっていく。


「断れなかったみたいだね」


 清々しいまでに上品な笑顔で去っていくユーリカを見送りつつも、うわー……どうしよう……と動いているように見えるニイナの口元。

 混乱したままの仕草で、苦笑する累たちに向かって駆け寄り出した……というところで、足元の小さな石を踏ん付けた。


「あ。コケた」


 ……決して、運動神経がニイナ以下だという称号だけは撤回したい。


 そう強く思った累であった。



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