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現代知識で出来る魔術  作者:
一章 転生したからって別に人が変わるわけじゃない
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二話 美少女に刺されたら男の娘になれるってマジ?

……?


静かに目を開けると、見覚えのない天井が目に入る。確か、スィアリとか言うやつに刺されて、その後……思い出せないな。

一瞬病院かと思ったが、目に入った天井はログハウスのような木組みのものだった。とても病院とは思えない。周りを見ようと思うが、身体は起き上がらないし、手足の感覚も薄い。横を向こうとして首を動かすと、木の柵のようなものと、真っ白いシーツが見えた。……ベッドか?

首を元に戻そうとするが、なかなか動かない。……あれ?


「……あ、あう」


ん?今なんか、赤ちゃんみたいな声がしたな。誰だ?


「あ、起きたのね。はいはい、今行きますよ〜。」


母親らしき人の声が聞こえる。てことは、誰かの家か。それにしても、聞き覚えのある声してる……?


「相変わらず綺麗な目をしてるわね、レアは。今ご飯をあげますからね。」


母親らしき人は、俺を見てそう言う。え?レア?誰のことだ?

……てか、あれ?なんかこいつ、見たことが……!?

思い出そうとしていると、母親は俺を持ち上げ始めた。え!?


「うえ!?」


「あら、どうしたの、急に大声出して。ビックリしてしまったのかしら?」


俺、女の人に抱えられるほど小さかったか?巨人の家なのか?ここ。いや、待て……こいつの顔……。



ああああ!


「あうああ!」


こいつスィアリじゃねえか!何してんの!?


「おあえあいーいえんお!」


「急に騒がしくなった……。あ、ってことは、気が付きました?おはようございます。気分はどうです?」


喋り方がさっきと同じに戻った。やっぱスィアリなのか……。


「あ、どうせ喋れないので喋らなくていいですよ。今あなたは転生して三ヶ月の赤子なので。」


転生……転生か。どうりで刺された後から記憶が無い訳だ。


「詳しい話は歩けて喋れるようになってからですね。まだ首すら座ってないですけど(笑)、まあ前世からの記憶と思考力があれば成長は早いでしょう。……お腹すきましたよね?いま粉ミルクあげますから、待っててください。」


そういうと、スィアリは俺をベッドに戻した。赤子……俺赤子なのか。だから身体が上手く動かせないんだな。それにしても……頭だけ働いて身体が動かないって不便だな。もうちょい進んだ頃に記憶解禁してくれりゃいいのに。

その後俺は、暇を持て余しながら、なんとか歩けるようにまでなった。






「へいシリ。なんでお前がここにいるんだ?」


「なんでって、あなたの母親、スィアリ=カナリアっていう設定だからです。あ、ちゃんと父親もいますよ。今は仕事に出ていますが。」


設定って……。まあわざわざ俺を産んだわけでもあるまい。そりゃそうだ。ちなみに、俺らは今日本語で話しているが、この世界の人間が日本語で喋っている訳では無い。スィアリが俺への配慮に日本語で喋ってくれているだけだ。曰く、暫くしたら言語理解の術式を刻んでくれるらしい。痛くないよね?


「待て。サラッと流したけど、術式ってことは魔法があるのか?」


「魔法というより、魔術ですね。この世界の人間で魔法を使える人間はほとんどいません。いても種火を起こすとか、魔術に劣るものばかりです。」


スィアリ曰く、魔法と魔術は違うものらしい。なにが違うのかよく分からないが……。


「大きく違う点は、術式があるかどうかですね。魔術は術式ありきですが、魔法はそれを必要としません。」


「魔術ってのは誰でも使えるのか?」


「魔力がある人間なら誰でも使うことが出来ます。あなたは人一倍魔力があるので、術式を起動する速度は早いでしょうね。」


人一倍魔力ね……。転生してまで劣等感は感じたくないが、なんで人一倍魔力があるんだ?スィアリに訊いてみると、


「大きな要因の一つは、前世の記憶の有無です。前世の記憶と思考がある人間は、魔力の最大量が高い傾向にあります。まあ、他にもいろいろ要因はありますが、およそはそんな感じです。」


「ほーん……」


前世の記憶と思考、ねえ。まあ、楽に越したことはないか。


「じゃあスィアリ、俺も魔術使ってみたいんだけど。」


「その為には、まずこの世界の言語の他に、「(シルシ)」について学ばなければいけません。」


「「印」?」


初めて聴く単語だな。なんだろうか。


「「印」って言うのは、術式に組み込まれる記号のようなものです。例えば、雷の「印」を術式に埋め込めば、その術式は雷に関した魔術になります。」


「なるほど、機械の部品みたいな感じか。」


「まあ、そんな感じです。雷とか、炎とかの魔術の根本に関する「印」は「基礎印」と呼ばれていて、それ以外は「補助印」と呼ばれています。まあ、詳しくは魔術学校で習うことになると思いますけど。」


「ほーん……この世界に来てまで勉強しなきゃ行けないのか……。どうにかして回避できない?」


あのだる〜い通学を考えると嫌になってくる。何回サボろうと思ったことか……。


「魔術学校には九年間通うことが義務付けられています。義務教育、ってやつです。だるいですよね〜……。」


「妙に実感の篭もったコメントだな。」


「こっちでも色々あるんですよ。……あ、そうだ。父親や人前ではくれぐれも「お母さん」って呼んでくださいね。人前だとあなたはカナリア家の一人息子、レア=カナリアなんですから。あ、「ママ」でもいいですよ。」


語尾に(はぁと)が付きそうなうざったい言い方をするスィアリ。

まあ、確かにはたから見たらへんな家族だわな。


「……「母さん」じゃ駄目か?」


「むう……許容しましょう。」


そういえば、いまぱっと思い出したことがあるから聞いてみるか。


「なあシリ、向こうで転移の話題が出された時、俺随分とすんなり受け入れてたよな。いや、不満とかじゃなくてさ、不思議に思ったんだが。」


「ああ、ちょっと思考誘導の魔術を。」


「は?」


そんなことを話していると、玄関が開く音が聞こえてくる。どうやら父親が帰ってきたようだ。


「さて、お父さんも帰ってきたし、晩御飯にしましょうか。今日はあなたの好きなオムライスよ。」


一瞬で母親モードに切り替えるスィアリ。手慣れてやがるぜ。

てめえ後で覚えてろよ。てか好物までバレてるのか……


「こほん……ほんと?母さんありがと!」


はたから見れば、好物に喜び無邪気な笑みを浮かべる子供に見えている……はずだ。……多分。……きっと。


そうして、黒沢拓希改め、レア=カナリアの新たな人生は始まったのだ。


……スィアリは後で殴った。

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