覗き見王子
あとがきにロトのかっこいい台詞候補あります。
ポイント伸びたら本編で採用だ!
それはある晩の出来事だった。
僕はいつも通りクレアのご機嫌を取るためチキンを骨まで食べて見せた。
下した。
それはもう壮絶に……。
僕のマイルームである地下牢獄(3K)にはトイレがない。
なんで牢獄にトイレ無いんだよっと思うかもしれないが、この地下牢獄はほぼ使われることはない。
ここに入ってくる奴=ほぼ死刑なのでちょっと拘留したらそのまま処刑だ。
だからトイレは必要ない。
僕は腹違いの兄弟達に見つからないようコソコソと廊下へとでる。
見つかると面倒だからな……
クレア辺りに見つかったらほぼ間違いなく
「私の目の前でしなさいホーホッホ」
なんて言われるだろう。
しつこい様だが僕は業界人じゃない。
トイレは静寂の中でするものだという美学を持っている。
もしもセリーナが同じことを言ったら……まあ一度くらい経験するのも悪くはない。
そんなことを考えているとトイレの近くまで来てしまった。
調理場を抜け、右に曲がる通路に入ればそこは楽園だ。
調理場に明かりがついている……
今は深夜だ……朝食の準備をするにしても早すぎる。
僕は恐る恐る調理場を覗くと白い調理帽に白い割烹服を着た少年が鍋を掻き混ぜている姿が見えた。
少年は何だかゴソゴソと割烹服の上下の分かれ目から陰部へと手を突っ込んでいる。
何だか黒い縮れた毛のようなものをがそこから出てきた。
そしてその禍々しい何かを鍋へと入れた。
僕は彼をみてこう思った……友達になりたい。
僕は勇気を出して声を掛ける。
「中々いい趣味をしているじゃないか」
僕が声を掛けると少年は青白い顔になって震えだした。
告げ口されると思ったのだろう。
王族の食事に陰毛をぶち込めば死刑確実だ。
クレア辺りは死ぬまで自分の陰毛を少年に食べさせるだろう。
僕が少年の顔を無表情で覗き込んでいると少年は口を開く。
「何でもしますのでどうかこのことは内密にしてくださいッ」
何でもか……悪くはない。
ではまず僕の質問に答えてもらおう。
「君の名は?」
少年はマーティンと震えた声で答える。
勿論入れ替わったりはしない。
では次の質問だ。
「何でそんなことをしているんだ?」
マーティンは言いたくなさそうに口を結びながら俯いた。
どうしても言いたくないのなら無理して言わなくてもいいが……
僕がそう考えて始めているとマーティンは渋々口を開いた。
「僕はクレア様の男娼にされています……」
男娼……精奴隷か。
よく見るとマーティンはクリッとした目に高い鼻、染み一つない綺麗な肌をしている。
髪型は調理帽をかぶっているためよくわからないが……割烹着姿でこれだけ容姿が整って見えるなら十分美少年だろう……カワイイ系男子だ。
なるほどクレアめ……やっぱりあいつはクズだなと僕は改めて思った。
「なるほど……それで君は仕返しに王族の食事にその禍々しい物を入れたのか」
僕は確認するように言った。
僕もクレアは大嫌いだ。
男娼にされたりはしていないが、飼い犬にはされている。
気持ちは痛いほどよくわかる。
僕が同類を見るような眼差しでマーティンを見つめていると彼は慌てたように僕に言う。
「いえッ!これはクレア様専用のスープです。クレア様はモールスープがお好きなので」
モールとはジャガイモだ。だからモールスープというのはビシソワースだな。
……にしてもあのでかい鍋に入ってるスープ一人で飲むのかよ。
とんでもない芋女だ。
僕が心の中でクレアを罵倒しているとマーティンが愚痴るように言う。
「クレア様はモールスープを大量に飲みたがるので他の王族の方とは別で仕込みをやっているのです」
なるほど……王族の料理とはかなり種類を多く作らなくてはならない。
無駄にいつも豪華だ。
当然全部食べ切るわけではない。
腹違いの兄弟達は大体いつも残している。
通常の食事を作るだけでも大変なのに、個人的な物まで作らされたとなれば陰毛の一つでも入れたくなるだろう……。
「大変なんだな……」
僕は同情するような目でマーティンを見つめる。
するとマーティンは驚いたような目で僕を見つめ返した。
同じ痛みを分かつ同士とはこういうことを言うのだろうか。
僕はそんなことを考えながらマーティンに告げる。
「先程、何でも言うことを聞くと言ったよな?」
マーティンは怯えたような目で僕を見る。
王宮で働く者なら王子達の性格の悪さを知っているのだろう。
侍女や使用人が遊び半分で殺されるからな。
何を要求されるのか怖くて仕方がないという顔だ。
やれやれ。僕は他の王子とは違う。
「僕と友達になってくれないか?」
僕はマーティンにそう告げた。
マーティンは仰天している。
驚きを隠せないようだ。
きっと遊び半分で殺されることを覚悟していたのだろう。
マーティンは仰天しながらも口を開く。
「僕なんかで良ければ……」
こうして僕にこの世界で初めての男友達ができた。
ーー
食卓の間ーー朝食ーー
次の日の朝を迎えた。
実にいい朝だ。
何て言ったって昨日友達ができたのだからな。
この世界に来てから僕に優しくしてくれたのはセリーナだけだった。
彼女とは友達と言える関係だとは思うが女だ。
やっぱり男同士でしかできないことだってあるだろ?
女のセリーナの前ではできない会話や馬鹿な事だって男同士ならできるってわけだ。
僕は歓喜していた。
これからは辛いことだらけの王宮生活の中でも少し楽しいことが増えると……
「お食事をお持ちいたしました」
僕がそんなことを考えていると侍女達が木製の豪華な両扉を開き、豪華な料理を乗せたカートを押しながら食卓の間へと入ってきた。
大きな大テーブルに偉そうに腰掛ける兄弟達の前に次々と料理が置かれていく。
僕は安定の床だ。
目の前にいつもの貧相なお皿が置かれ、その上にカビの生えたジャガイモが置かれた。
生かよ……
昨日のクレアのスープに使った余りだろう。
僕がそう思いつつジャガイモに手を伸ばそうとするとお皿が割れる音が食卓の間に響き渡った。
ガシャーン!!
「ウウッギイイッ」
音の発生源に僕は顔を向けるとクレアが苦しそうに呻いていた。
「アアアッ」と喚き散らしながら大テーブルの上に置かれた料理をぐしゃぐしゃにしながらのた打ち回っている。
あまりに激しくのた打ち回っているため、椅子から転げ落ちる。
ガタンッ!激しく椅子を引き倒しながら床の上でさらにもがき苦しみ……動かなくなった。
「なんだこれはッ!」
第一王子のジャックが侍女達に向かって怒鳴る。
料理を運んできた侍女達を疑っているのだろう。
すると侍女の一人がジャックにポツリとつぶやく。
「私見ていたのですが……クレア様がモールスープに手を付けると苦しみ始めました」
「モールスープだと……?」
訝しげに呟くジャック。
顎にて手を当て考えるような素振りをする。
ジャックは自身の料理にモールスープが無いことに気づき、クレアが好んで王宮調理師につくらせていたことを思い出したような顔になる。
ジャックは何かに気づいた顔で侍女達へと怒鳴った。
「モールスープを作った調理師を連れてこいッ!」
暫くすると、白い割烹着姿の少年が食卓の間へと連れてこられた。
急に連れ出されたのだろう……少年の茶色の髪は右へ左へとあちらこちらにぐちゃぐちゃになっていた。
王族の前に謁見するには少々見苦しい姿だが、今はそんな場合ではないのだろう。
白い割烹着姿の少年ーーマーティンは怯えたように声をだした。
「な、何でございましょう……」
ジャックは「何だと……?」と呟きながら鬼の様な形相でマーティンを睨む。
そして尋問するような口調でマーティンを問いただした。
「先程クレアが死んだ。君が作ったというモールスープを口にした瞬間ね。お前がやったんだろッ!!」
大テーブルを強く叩きながら激昂するジャック。
そんなジャックを見て怯えながらもマーティンははっきりとした口調でそれを言った。
「昨晩、クレア様のスープの仕込みをしているとロト様が調理場へ現れました。そして出ていくよう指示されました」
「何を言っているんだマーティン!!」
僕は動揺しながら必死に叫んだ。
食卓の間にいる兄弟、侍女、そしてマーティンは僕を悪者を見るような目で見つめる。
何でそんな目で僕を見るんだ……犯人は僕じゃない
僕はそう思いながら周囲の視線に怯えていると、ジャックは口を開いた。
「この大罪人を捕らえろッ!!」
侍女達に組み伏せられる僕を見るマーティンの口はうっすらと嗤っていた。
ロトのかっこいい台詞候補②
「生まれたての赤ん坊に全力で膝カックンすると……死ぬ」