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ウィザードコネクター  作者: マリー=夕月
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01話 夕食

「うん、悪くはない」

 俺はオリジナル豆腐料理の味見をしてそう呟やく。

 シエラは風呂に入りに行き、俺はシエラが風呂に入っている間に料理を作ることにした。それがこの豆腐料理だ。

 豆腐は実に良い、コスパも良いし、結構いろいろなものを作れるからな。

 ちなみに今作ってるのは豆腐ハンバーグだ。ご飯とよくマッチしてお気に入りの料理の1つだ。

 できた豆腐ハンバーグをさらに盛り付けていく。

 いつもは一人分しか作らないためそんなに綺麗に盛り付けないが今日はシエラもいるし、しっかりと盛り付けをしていく。

 よし、こんなもんか。とりあえず完成だな。

 俺は盛り付けたハンバーグとご飯を台所のテーブルの上に持っていく。あと、二人分のサラダも。

 ふと、箸が足りないことに気づく。仕方がない、今は割り箸で我慢してもらう。

 俺が準備をしていると浴室の扉が開け閉めされる音が聞こえた。どうやらシエラが風呂から上がったらしい。

 しばらく待っていると台所にシエラが現れる。服はさっきと同じロープで、髪は濡れている。タオルを首に巻きさっぱりとした表情だ。

 シエラは俺の作った料理を見ると少し興奮気味な表情をする。

「ねぇ!これって神谷がつくったの?」

「まぁ…そうだが」

「美味しそう!早く食べよ!」

 シエラはそう言うとテーブルにつく。やっぱり異世界人からしたらこの手の料理でも珍しいのか。

 俺も椅子について食事を取ることにする。早く食べないと冷めるしな。

 箸を使ってどんどんと料理を口に運んでいく。うん、美味い。

 サラダもドレッシングを変えたが結構好きな味だな。

 どんどんと食事を取ってる中、シエラが全く箸を動かしていないことに気づく。どうしたんだ?

 シエラは食事箸を凝視し、俺の食べている様子と箸を交互に見つめている。

 なるほど、箸の使い方がわからないか。

 シエラはどうしたら良いのか分からなくてキョロキョロしてる。助け舟を出すか。

「シエラ、これはこう使うんだ」

 俺はシエラの目の前で箸を見せつけるように動かしてみる。

 シエラは戸惑いながらも俺の真似をする。

「ふぇ?こ、こう?」

「ちょっと動きがぎこちないがそんなもんだ…それで、こうやって食べる」

 俺は実際に豆腐ハンバーグを箸を使って食べてみせた。彼女にも分かるようにゆっくりとだ。

 シエラも途中何回かハンバーグを落っことしたが、無事に運ぶことに成功する。

「どうか?美味いか?」

 いつも自分で作って自分で食ってるからな。他人の評価というものに興味がある。

 シエラは口を動かして「ふむふむ…」とか言ったあとに、俺の方を向き満点な笑みを浮かべる。

「美味しい!」

「そうか…良かった」

 気に入ってもらって良かった。不味いと言われたらショックだからな。

 その後、シエラはどんどんと豆腐ハンバーグを食べていった。茶碗に入ったご飯も同様だ。みるみるうちに無くなっていく。

 カチャカチャと飯を食っているシエラとその反対にゆっくりと食べている俺。会話も一切無い。

 このまま黙っているのは場が悪いので話題を振ってみる。

「なあ?お前ってそもそもなんで狙われてんの?」

「それは…」

 シエラの箸の手の動きが止まる、表情は少し困り気味だ。

 なんか、聞かれたら困ったことだったのか?

「おい?どうした?いきなり固まって…話しづらいのか?」

「いえ、そういう訳ではないけど…ちょっとどこから話したら良いか…」

「そんなに大きな話しなのか?」

「えぇ、まぁそうだけど…あえて言うなら国から追われてる…かな」

 国って…結構規模が思ったより大きいな。

 シエラのそのことを伝えると「えへへ…やっぱり理不尽だよね」と頭の後ろを撫でている。

「それで追われている理由だけど…私が見てはいけないものを見てしまったからね」

「見てはいけないもの?」

 「そう」とシエラはうなずく。

 見てはいけないものってなんだ?

 俺は話の続きが気になり思わず机に身を乗り出す感じになる。

 ちょっといきなり動いてびっくりしたのか彼女は驚いていた。ちょっと失礼だった。

 「すまん」と一声かけてからシエラは愛想笑いを浮かべて、順を踏んで話の続きを言い始めた。

「えっと…それでね、なんで追われてるかなんだけど。私が国王の正体が魔族だってところ見ちゃって…それで国王から命を狙われて、追われる身になったの」

「それは大変だな…ここに来るとかないよな?」

「うん…まぁ…滅多にないと思うけど…」

 なんか返事がぎこちない。大丈夫かよ…

 シエラは「うん、大丈夫…大丈夫」と何回も言って自分に言い聞かせている。

 なんか不安になってきたな…やっぱり相談したほうが良さそうか?

 なんか不安な空気が漂う。せっかく場を良くしようと思ったのだが。

 不意にシエラが暗くなった場を良くしようとしたのか口を開く。

「大丈夫だよ!いくらなんでも異次元に移動なんてアイツらも思ってはいないよ!」

「そうか?」

「うん!だって異次元移動魔法は私が作ったんだもん!他の魔法使いが使うのには私から教わらないといけないからね。その私が異世界にいるんだもん…誰も来ないって」

 少し焦りながら話すシエラ。まぁ、確か今の話が本当ならここには来れないな。

 でも、この手のことを今考えていても仕方がないしな。余計に不安を煽るだけだ。今は伏せておこう。

「分かった、それなら安心だな」

 少し間を開けてシエラは「そうだよね」と言ったあとに、いつもの明るい調子を取り戻したのか表情が明るくなる。

「うん、そうだよね…さてと、ご飯の続きをたべよ!」

「そうだな」

 シエラは再びご飯を食べ始めた。俺も、それに合わせて食事を進める。

 その後は何も会話をすることもなく食事を終えた。特に話すことはなかったからな。

 そのあと、俺は腹いっぱい食べて満足しているシエラに風呂に入ると伝え,浴室に向かっていった。





 神谷さんは「風呂に入ってくると」私に伝えると浴室に向かっていった。

 食事を終えた私は特にすることがないので、椅子に座ってぼーっとしている。だってやることないもん…

 そういえば、ここの世界は空気中の魔力が全然感じられないなら神谷はどうやって身体強化の魔法を?

 まだまだ調べることがあるわね、あとで神谷に聞いてみようっと。さっきの料理とかも気になるし。

 暇なので部屋を見渡してみる。小さな調理場に、大きな棚。見たこともないようなものがたくさんある。

 棚の上には少し幼い神谷とその家族と思われる絵があった。ん?絵にしては綺麗すぎる…すごい!これが異世界の技術ということね…

 そういえば、神谷の家族はここにどこにいるのかな?一人暮らしって聞いたけど…

 ふと、頭の中に嫌な思考が入り込むもしかしたら家族はもうこの世にはいないと。

 私は頭を左右に振ってその思考を振り払う。だめだめ、勝手にそんなこと決めつけちゃうなんて…神谷に失礼だよ!

 なんでこんな施行に陥ってしまったのか?と思って、自己嫌悪に陥る。なんで、そんなマイナーな思考になったんだろ私…。

 そんな、考えになった自分を責めながら、棚にあった一つの本を見てみる。

 そこには異世界文字でびっしりと書かれており、いかにも難しそうな本だと伝わってくる。

 試しに中を覗いて読んでみる、しかし…

「えっと…光の…えぇ、わかんない」

 全く読めなかった。聞く話すは行けたけど文字は無理。

 私はこの世界に来てからは常に自分に翻訳魔法をかけている。そのため神谷と会話することができた。

 この魔法はもともと魔法古文書の翻訳するために生み出されたものだけど、それが、異国語の翻訳できることに大魔法使いが発見されてから、通訳魔法とも呼ばれるようになった。

 それでこの魔法だが、話すことや聞くことは魔力消費量が少なく、私のような平均的な魔法使いでも簡単に翻訳することができるが。

 逆に、文字の翻訳となればいろいろ話が違ってくる。

 文字になると翻訳にかかる魔力量はけた違いにあがるし、並大抵の魔法使いには使いこなせない。異世界語になるとなおさら。

 私は読むのを諦めて本をもとの場所に戻す。あとで神谷にどんな話か来てみようっと。

 それからは、特にめぼしいものはなかったので座っていたところに戻る。

 そして、ポケットから手帳をとりだす。これは、私の使える魔法を簡単にリスト化してあって。暇があればその魔法の練習をすることにしているの。

 えっと…今日はっと…透明化の魔法とかはどうかな?

 試しに詠唱してみる、結構簡単な魔法なのでそれほど難しくはない。

 少し棒読みで魔法を唱えてみる。

 たまに失敗するがそんなことは滅多にないよ。絶対とは言えないけど。

 魔法を唱えているとどんどんと体の中に魔力が満ちていき、体がぽかぽかと温かくなる。

 体の内側から外側側へと放出する感覚で魔法を放つ。

「―――えいっ!」

 その瞬間目の前にあった椅子とテーブルが消えた。やった!成功だ!

 実は透明化の魔法は苦手だった。いつも唱えたら家ごと消しちゃうし、成功したと思ったらずっと透明のままだったり。嫌な思い出しかないね…

 私が魔法の成功を喜んでいると、神谷が風呂から戻ってきた。

 髪は濡れていて、服装はパジャマなのかな?結構ラフな格好してる。

 神谷は私を見たあとに部屋を見渡す、一通り見渡したあと、疑問を浮かべた顔をする。すると、疑問の顔はどんどんと驚きの顔に変わっていく。

「おい!お前!机と椅子はどうした?」

「それね!私が透明化の魔法の練習に使っただけだよ」

「透明って…魔法はそんなことまでできるのか」

 神谷の表情はどんどんと安定したものになっていく。たぶん、机と椅子の行方が分かって安心しているみたい。

 神谷は机があった場所をこんこんっとドアをノックするみたいな感じで叩く。

 叩いている途中、「ホントに消えてる…すげぇな」と呟く。うふふ…すごいでしょ?

 私は神谷に自慢気に「すごいでしょ!」というと、神谷は「まぁ、すごいな」と相槌を返してきた。

 「すごい」か…褒められたの久しぶりだなー。嬉しい!

 私が喜んでいると、神谷が急に何かを思い出した様子で話しかけてくる。なんだろう?

「なぁ?この透明化はいつ直るんだ?」

「1週間後かな?」

「1週間だと!」

 神谷は驚いた表情を浮かべたあと、俯いて私に無言で歩み寄ってくる。怖いよ…

「あの…どうしたの?…はぐっ?」

 チョップされた音と私の哀れな声が部屋に響いた。

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