99話 黒い空間に指す光 前編
また時期は遡り、まだエンジェラが血鬼になって、覚醒する少し前のことである。
私は血鬼の体の中の黒い空間で座り込みただただ泣いていた。
「うぅ······うわぁああん·····」
泣き声だけがその空間に響いた。そして帰ってくるんだ声や他の人の気配さえもその空間にはなかった···。
それからもエンジェラはただただ永遠と泣き続けた。
ただだいぶ泣き続けたせいか涙が枯れ始め、やがて涙で揺れて見えてた視界が、しっかりと見えるようになってきた。ただそれでもエンジェラはチノンを失った悲しさとチノンを操ったセレンへの怒り、そして自分の弱さに対する怒りを込めて、今度は叫び出してしまった。
「ああああああああああああああぁぁ!!!!」
だが叫び始めたその時、外から知ってる2人の声が聞こえ始めた。
私はそれに直ぐに気づき、空間のとりあえず壁のような所へ耳をあてた。そして外の2人がシキとラビスだと気づいたエンジェラは、その壁を叩き続けながら、叫んだ。
「シキ! ラビス! お願い! 逃げて!!! お願い····。失いたくないから····」
ただエンジェラがいくら叫んでも、外へと届くはずもなく、エンジェラの叫びからわずか数分後、エンジェラの願いも虚しく、外からシキやラビスの2人の叫び声と、2人の鈍い音が聞こえた。
エンジェラはその声が聞こえた瞬間、少しの間固まると、目から血の涙が溢れ出し、エンジェラは謝りだした。
「ごめんシキ···。ごめんラビス···。ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん」
そういいながらエンジェラはやがて、自我をうしなっていき、黒い空間だたのが、赤い空間へと変化しだし、やがてエンジェラの体も、その赤い空間へと黒い体になって、消えていった。
そしてエンジェラは目を覚ますと、まるで水のような空間に浮かんでいた。
ただその空間では血鬼のことは忘れ、まるでラミアと戦い終えた後ぐらいのエンジェラが、そこに立っていた。
そんなエンジェラは周囲を見渡しながら、色んな人の名前を呼んだ。
「チノオオオン? シキイイイ? ラビスウウウウ?? 誰かいないのぉぉお?」
エンジェラが少し大きめな声で歩きながら、誰かには届くと思い、話しかけていると、いきなりエンジェラの背後に黒い霧が現れ、それは分裂しやがてチノンやラビスやシキやセラフィやエンジェラのような体型で黒い体へと変化すると、そのうちの偽エンジェラがエンジェラへと話しかけた。
「貴様はなぜ事実を認めない」
エンジェラは背後の数名に気づかなく、その偽エンジェラの声に驚き、振り返りさらに驚いた。だがすぐに問いかけた。
「あなた達は誰? てか事実とはなに?」
するとチノンが答えてきた。
「我々は貴様の記憶に残る存在だ。そして事実とは弱い貴様が我々の死んだ時や、死にかけた時に近くにいて、それで泣き叫び精神壊したという事実だ。」
するとエンジェラの脳裏に黒い空間や、外でセラフィの墓を見た記憶、そしてチノンを殺した記憶、血鬼となりシキやラビスを殺しかけた記憶が、入ってきたエンジェラは頭を抑え、その場に座り込んだ時、まるで水に溺れてくように、どんどんとそこになぜかある黒いトンネルを、下へと落ちていった。
上を見るとチノンのような人達が、落ちてゆくエンジェラを、上から笑みを浮かべながら見てるのであった。
そしてエンジェラはトンネルを落ちていきながら、脳裏にどんどんと今までの記憶が入ってこようとしたため、エンジェラは言葉を発しながら頭を叩きながら、忘れようとした。
「お願い! 入ってこないで!」
だがどんどんと下へと落ちていくと、今度は色んな人の叫び声や痛む声が聞こえだしたため、エンジェラは言葉を発しながら耳を塞いだ。
「うおおおおぉあああぁ....」
「いたい....いたいよおおぉぉ」
「お願い! 叫ばないで! 話しかけてこないで!」
そしてさらに落ちて行くと、今度は下に色んな人の死体姿の画像が、私の落ちていく目の前に何枚も現れて、エンジェラはまた言葉を発しながら、今度は耳を塞いだ手を目にあて目を塞いだ。
「お願い····。もうやめて····」
そしてエンジェラはそれを何回も繰り返し、どんどんと奥深くへと落ちていくのであった。




