97話 苦難苦悩 後編
今回もシキ視点です。
俺とラビスがクロシーさんの後を追い、白い部屋へと入った。
その白い部屋へと中も完全に真っ白だったが、エンジェラの為なのか、色々な人形やご飯が出される為なのか少し大きく丸い白い台や、着替えの服などを出し入れするためなのか白いタンスが置かれてるという、まるで殺風景な空間だった。
そしてクロシーさんはその台の近くに棒立ちしていて、周囲を見渡してもエンジェラが見当たらなかった俺は、ラビスを連れてクロシーさんの所へとゆくと、クロシーさんへと訪ねた。
「すみません。あのクロシーさん。エンジェラはどこでしょうか?」
するとクロシーは無言のまま、部屋の左隅の方向に指をさしていた。
俺とラビスはそちらの方向を見るために、クロシーさんの1歩前の位置へとでてから、左隅の方向を見た途端、ラビスはその場に崩れながら、涙を流してしまった。俺もその光景にはさすがに心が痛くなってしまった。
そこにいるエンジェラは、やせ細り服もビロビロで、近くの2体の人形とまるで会話していたのである。
それもその2体の人形の名前が、チノンとセラフィだったのである。
「ねぇねぇお母さん。お母さんの料理早く食べたいよぉ〜。それにチノン! 早く学校へと戻るから、立ち上がって?」
エンジェラの記憶が色々な事が積み重なった影響で、そこにはいないはずの、チノンとセラフィがまるで生きてるかのように、呼びかけ “2体の人形“ で遊んでいるのである。
ラビスはそのエンジェラの姿に、自分の手でエンジェラやチノンを守れなかった未熟さと、弱さを噛みしめながら、その場で俯き立っている俺にさえ泣き声が聞こえるほどに、大泣きしたのである。
俺はそんなラビスをここに居させるのは、まずいと思い、俺も辛かったがラビスの元へとしゃがみこんで、声をかけた。
「ラビス。部屋に戻るか? 」
「····うぅん。ここにいるはでも話しかけないで。」
ラビスは泣きながらも、俺へと答えてきたため、俺は何も返さず立ち上がると、エンジェラの方向を見ながらクロシーさんへと声をかけた。
「クロシーさん。俺にはできることがありませんか?」
「そうだな。エンジェラは今こちらの飯さえも食わない。多分このままだと餓死してしまうかもな。」
俺はその言葉に少しイラつき、いやラビスと同じで自らへの未熟さと弱さにイラつき、ついクロシーさんの胸ぐらを掴んでしまった。それに対しクロシーさんは俺へと問いかけた。
「シキ。今貴様やラビスが何をかんがえてるのかは、想像が着く。だがな? 今その考えをして果たして、誰を救えるんだ? 」
「分かってる! 分かってますよ! でも··でも···」
俺がそうクロシーへと少し大きな声で伝えると、クロシーは俺が胸ぐらを掴んでる手の手首を掴むと、冷たい言葉で話しかけてきた。
「お前は未熟者あり、覚悟のない者だ。」
「くっ」
俺がその言葉に、心を打たられたその時だった。横へといつの間にか来ていたエンジェラが、俺とクロシーへと話しかけてきたのである。
「クロシーお兄ちゃん! 今チノンとお母さんと話してるんだから、大声出さないでよ! あとあなたもって·····。お兄ちゃん誰?」
「え·······?」
俺はその言葉が1番辛かった。
クロシーさんはそんな俺を無視しつつも、エンジェラへと話しかけた。
「エンジェラちゃん。ごめんごめん! こちらのお兄ちゃんはね。さっきの2人のお姉ちゃんのように。元あなたと仲良かった人だよ。あとそこのお姉ちゃんもね。」
「そうなんだ〜。ごめんなさい。私今ね。なぜかね。前のことが思い出せないの···。だからごめんね? 」
俺は辛くて涙したい気持ちを抑えこみながらも、エンジェラへと無理に笑顔を見せながらも返した。
「そうなんだね! お兄ちゃん少し驚いちゃったよ。僕の名前はね。シキだよ。そしてこちらの女性の名前はね。ラビスだよ。」
「シキ······? ラビス········? あ·····あぁ·····ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
俺がエンジェラへと答えた時、エンジェラは俺達の名前を呟いた途端、突然頭を抑えながら叫び、その場に倒れ、やがて気絶してしまった。
それを見たクロシーさんは直ぐに気絶したエンジェラを、白い台へと乗せると、俺へと話しかけた。
「やっといったか。全く少しかかったのぉ」
「え···?」
「わかりやすく言うとだな。今のエンジェラを治すには、最初はお前達から自分の名を言ってもらうことなんだ。だから少しキツめにいった。すまない。」
俺はその時初めて、クロシーさんのエンジェラに対する思いやりや、俺がほんとに未熟者だと知り、俺はクロシーさんへと話しかけた。
「いえ。逆にありがとうございます! 俺達は少し出てきます。少しエンジェラをお願いします。」
「あぁ。」
クロシーさんの返事を聞き、俺はまだ少し泣いてるラビスに声をかけた。
「ラビス。一旦部屋へと戻るぞ。肩貸すからいくぞ? 」
「うん。」
そう呟き、俺はラビスの体を背中でおんぶし、部屋を後にした。
そして俺達は前までいた部屋へと戻ると、ラビスは何も言わずおり、俺達は離れ離れに座れるとこに座り、お互いに色々考え出した。
(エンジェラは現在記憶がない。ならどうしたらいい。あそこに通う? いやそれなら先程までとは一緒じゃんか...。)「あーくそっ!!」
「うるさい! 黙ってて。」
「ご、ごめん···。」
俺がつい口に出した一言でさえも、ラビスに怒られてしまった。俺は謝りながらも、ラビスも思い詰めてるとは思った。
俺達が考えている時、先程の白い部屋では、エンジェラを寝かせているクロシーさんの近くへと、誰かが近づいていた。
クロシーさんは近づいてくる人が誰だか分かったため、その人へと話しかけた。
「カノー様。あれはもう終わったんですか? 」
「えぇ。クロシー。もうあと少しで生まれ変わるわよ。彼女が。」
「そうですか。その彼女で治ってくれると助かるんですがね···。」
「きっと大丈夫よ。彼女なら何とかしてくれるわ。」
カノー様とクロシーさんはある人とエンジェラついて話し合っていたのであった。




