96話 苦難苦悩 前編
今回はシキ視点です。
俺はいつからか寝ていたのか、ギルドのある部屋のベットの上で、目を覚ましたのである。
俺は起き上がりあたりを見渡すと、俺のベットの横で椅子に座りながら、ベットに寄りかかり寝ているラビスがそこにはいた。
俺はそのラビスの頭を撫でながら、自分にかかっていた布団をラビスにかけつつ、お礼を告げた。
「俺が寝てる間見ててくれたんだな。ありがとう」
俺が告げた時、部屋のドアの方向から女性の声が突然聞こえた。
「フフッ彼女にバレたらまずいんじゃないかな? シキ君」
「え···? あ、あなたは確かリオシーさん!!!?」
俺はその方向を見ると、そこには俺とラビスを回復してくれたリオシーさんが、腕組みしながら茶色のドアの横にもたれかかっていたのである。
俺の声が少し大きかったのか、ベットにもたれ掛かって寝ていたラビスが、起きたのである。
「ん〜···? あ、シキ〜。おきたのね〜。ふあぁ〜」
ラビスはあくびをしながら、ベットから頭を離し椅子に座った状態になってから、自らの背中にシキが来てた毛布がかけられていたことと、シキが寝ていたベットにもたれ掛かって寝ていたことに、恥ずかしくなったのか、顔を赤くして椅子から立ち上がると、俺に慌てながら弁解してきた。
「あ、シキ。これは違うからね!!? 寝てたわけじゃないからね!!!? そう寝てたフリよ! あはっあははははっ」
「ラビス落ち着け。大丈夫だ。あとありがとうな。」
俺の言葉に我に返ったラビスは、少し落ち込むようになりつつも、椅子に座りそのまま顔を覆ってしまった。
そんな俺達を見ていたリオシーは少し笑い、俺達に言葉を告げてドアのノブに手をかけた。
「フフッ大変ね。モテ男は! まぁ私はリッフィと私とスッズが回復させた人達を見て回ってるだけだから、それじゃあいくわね! ばいば〜い」
「リオシーさん待ってください!」
そんなリオシーさんを俺は止めたのである。リオシーさんはドアのノブから手を離し、先程まで寄りかかっていた壁へとまた戻ると、笑みの顔から真剣な顔に戻ると、問いかけてきた。
「それで? 私に聞きたいことはなにかな? シキ君」
「あ、はい! 実は俺リッフィさんにこの腹の傷を治して貰ってから、記憶が無いので、その後どうなったのか、簡単でいいので教えてくれませんか?」
「あら? そんなことでいいの?」
「はい!」
するとリオシーさんは少し間をおき、話し始めた。
「まずリッフィがあなたの傷を治した後のことよ。まずあなたとそこにいるラビスちゃんには、リッフィから私のことやスッズのことは教えて貰ったと思うけれど、私やリッフィやスッズがここのギルドの傷ついた全員を治した後、アピスがあなた達や他の幹部そして、ヒロの死体をここへと運んで、私のギルドの長であるカノー様と、ここのギルドの長であるアピスの命令によって、動ける人達が、エンジェラやヒロ以外は各部屋のベットへと運んだわ。そしてヒロはアピスの命令によって、エンジェラの母であるセラフィだっけ? その人の墓の近くで、今地中で永遠の眠りへとたび立ってるわ。多分葬式っぽいことも近いうちするとは思うわ。何せ大体の人が今簡単には動けないからね。色んな傷を受けてるからね。
そしてエンジェラだけど、彼女だけは一時的にカノー様と私の夫クロシーによって、管理されてるわ。
それだけ彼女は重傷ってことよ。色んな意味でね。
そして敵のボスセレンは仲間のイウを連れて、どこかにいったわ。
まぁこんなとこかしら? あとは質問あるかな?」
「うそだろ···。」
俺はリオシーさんの話に思わず絶句してしまった。俺が絶句してると、横で先程まで赤面しながら落ち込んでいたラビスが、リオシーさんへと問い掛けた。
「リオシーさん。ひとつ質問なんですが、なんでエンジェラは管理されてるんですか? 確かにあの血鬼を使い、チノンやわたしやシキさえも傷つけて内心は多分相当辛いと思いますが····」
「ごめんねラビスちゃん。そこだけは夫もカノー様も教えてくれないのよ。私にさえもね。でもエンジェラがいる所までならいけるわ。ただ相当な覚悟が必要よ。それにあなた達も相当辛くなるけどそれでも良ければつれてくわよ?」
リオシーさんの言葉に、絶句していた俺もラビスも即答はできなかった。ただ俺はラビスへと目をやると、ラビスも俺の方向を見ると、問いかけてきた。
「シキ。どうする? 私はあなたとエンジェラの仲はしってる。お互い好きなことも。だからあなたが決めて。私はそれで決めるから。」
ラビスの方向を見ていたリオシーさんもラビスの言葉で、俺の方を見た。俺は正直かなり困惑していた。
(俺が見に行ったとして、そこで俺はエンジェラに何ができるんだ? 俺がエンジェラを助けられるのか? 助けられないのなら見に行く必要はないのか? どうすればいいんだ····)
するとリオシーが俺へとヒントをくれた。
「シキ君。今から私が独り言を話すから、聞いてもいいし聞かなくてもいいわよ。私もねまぁ妻として夫であるクロシーのことは好きよ。だから助けれる時は助けれない時もなるべくそばにいたいと思うのよ。そして好きだからこそ彼の全てを受け入れたいと思うのよ。だから私は彼の全てを愛してるわ。」
俺はその言葉から、ある答えを得た。
(なんだ。そうか。簡単じゃないか。俺は今何も出来なくてもいい。ただエンジェラのことが好きだからこそ俺は、今のエンジェラがどんな状況でもそれを受け止めたい。だからこそ···)
「リオシーさん。そしてラビス。俺は行くよ。」
「遅いわよ。シキ。リオシーさん。私も行きます。」
リオシーさんは俺とラビスの答えを聞くと、ドアのノブを再度握りながら、俺達へと告げると外へとでた。
「ではついて来なさい。案内するわ。」
そして部屋の外へと出ると、アピスさん達とセレン達の戦いの時、ギルドのところで待っていたキュウさんやリヴィさんが、遠くの方で慌ただしく動いているのが、見えてさらにその遠くの方では、イーフィさんの部屋の前で座り込み何かを話してるイセスさんらしき、影が見えた。
俺やラビスが周囲を見渡しながら、リオシーさんの後ろをついて行くと、スペースには元々ない白い部屋の目の前へと着いた。
そこでリオシーさんは足を止め、白い部屋の白いドアに話しかけた。
「クロシーいる!? エンジェラの様子を拝見したい人が2人も現れたわ。」
リオシーが話しかけた直後、いきなり目の前のドアが、上へと自動で開きそこから、涙を流してるラミアさんと、同じく涙を流しつつもラミアさんの背中を抑えつつも、歩いてるリビーさんが、現れ俺達の存在に気づきながらも、俯いたまま俺達を避け、俺の後方へと歩いて去っていた。
そしてその2人が去った直後、そこには白と黒色で体全体が分かれている男の人が、出てきてその人がリオシーへと話しかけた。
「リオシーか。で、その2人とは?」
「えぇ。エンジェラの友人と、エンジェラの彼氏さんである。ラビスちゃんと。シキ君よ。」
「ほう深い関わりがある2人か。俺はクロシー。リオシーの夫で。一応黒い空間の中では、力では俺を超える者はおらん。」
クロシーさんが自慢げに話してるのを、リオシーはため息をつき、俺達は呆気に取られつつも、返事をした。
「あ、は、はい···。よろしくお願いします。」
「あ〜はい···。よろしくお願いします。」
その2人の反応に、リオシーさんは軽く笑い、クロシーは一時的にムスッと頬を膨らましたが、それを直ぐに辞め、俺達へと話しかけた。
「まぁ談話はここまでとしよう。さて入るがいい。ただし絶望することになるがな。」
するとクロシーは左奥へと消えていった。
俺達はリオシーさんを見ると、リオシーさんはドアの方を指さししながら、話しかけてきた。
「覚悟決めてここに来たんでしょ? なら入ってもいいのよ。」
「はい! 案内ありがとうございました!」
「あ、私も案内ありがとうございました!!」
そして俺達はリオシーさんに別れを告げると、そのドアの中へと入っていった。
背後のリオシーは悲しい顔をしながら、2人へと手を振りながらもある言葉を呟いた。
「子供には少し早いかもしれないけれど。これもあなた達のためよシキ君。そしてラビスちゃん。」
そしてリオシーさんはそのまま、部屋から離れていったのであった。




