93話 逃亡
今回はクロシー視点です。
これは少し前のことである。俺はエンジェラの所へと着いたのを確認して、すぐにその場に誰がいるのかを把握したため、その場にいるリッフィさんやスッズや妻のリオシーやカノー様に、一言呟くと、イウと血鬼の所へとすぐに飛んでいった。
「ではいって参る。」
そして俺は血鬼とイウが、俺が到着する頃には剣がぶつけ合うと読み、黒と白色の1本の剣を半分にわけ、血鬼とイウの間に下りると同時に、2人を剣をいとも簡単に抑えた。
すると2人は離れてから、俺へと話しかけてきた。
「まさかあんたがここに来るなんて珍しいじゃない! 元神で唯一全ての鬼を従えた者。クロシーさん。」
「ヒサシイデハナイカクロシー。ダガワシノタタカイノジャマヲスルトハユルセレンノオ」
それを聞いた俺はすぐ2人に殺気を出しながら返した。
「血鬼俺はまたお前を抑えに来た。そしてイウ今回は俺だけじゃないぞ?」
そしたら俺には暖かく感じたが、敵達には重い重圧がかかり、イウや血鬼やセレンといった、まだ力のある者は平然としていたが、遠くから戦いに誘われ、集まってきていた魔物達は一瞬にして、地面に押し潰され消えていった。
そして重圧後にリオシーが放ってくれた黒い霧が空に薄くかかり、その場は一瞬にして暗くなった。
俺はその時ある人に念話でお礼を言った。
(ありがとうリオシー! やっぱりリオシーの黒い霧は心地よい!)
(馬鹿いってんじゃなくて、早く戦いなさいよね馬鹿!)
(へいへーい)
俺が念話で話し終えたタイミングで、イウが話しかけてきた。
「それでクロシーさん! 私はあなたを強いと判断してるから、一応さん付けしてるけど〜。まさか今の私と血鬼を相手にして勝てるとでも思ってるのかしら? 」
「フハハッ イウヨ。ワシガイツオマエトキョウトウスルトイッタ? ワシハオヌシトクロシートモドモホオムリサッテクレルワ!」
イウの言葉に血鬼が反応し、血鬼はそのまま武器を持ち俺へと向かってきた。
俺は体の黒い割合が高くなれば、なるほど強くなる体質であり、魔法能力は特殊なのしか使えない分全てを身体能力に注いでるため、俺はリオシーが放ってくれた黒い霧を、体に吸収しつつも、イウや血鬼に見えない速度でその場から消えると、こちらへと向かってきていた血鬼の、腹に刃をぶつけそのまま後方へと飛ばしたのである。
それには流石のイウも驚いていた。
「····う···そでしょ?」
「イウそして血鬼。よく聞いとけ。今の俺ならお前らは1分あればケリがつく。」
俺はそうイウの方へと笑みを浮かべながら、答えた。
すると飛ばされた血鬼と話しかけられたイウが同時に、俺へと剣を片手に突っ込んできたが、だいぶ黒い霧を吸収したため、俺はその剣を両手の指先で、止めたのである。
だが二人とも俺へと笑いながら、剣を押し込もうとしてきた。
「キャハッキャハハハハッあなたやはり怪物ね! でもそんなに強いと倒したくなるのよね! キャハハハハッ」
「ハハハハッアイカワラズノチカラトイッタトコカノー。クロシーヨ!!!」
だが俺はそんな2人に真顔で声をかけた。
「血鬼。俺がほんとにこの程度だとでも思ってるのかい? そして二人とも自分の足元よく見てみ? 」
俺の言葉に二人とも足元を見た。するとそこには黒い渦が起きていた。それをみた2人はあることに抵抗するため叫んだ。
「ク、クソガアアアァァァ。ワシノチカラハフウインナゾサセヌワアア!!」
「いやだああぁぁ!!! まだ戦いたいのにいいぃ!!!」
そう黒い渦には封印する能力と、敵の能力を一旦閉じ込める能力を兼ね備えた、唯一俺だけが使える魔法の一種である。
だが抵抗虚しくイウの力はそこに吸い込まれてゆき、イウはその場に意識を失い倒れてしまった。そして血鬼は表面を覆う赤黒い血で出来た鎧と血鬼の力を、その渦へと吸い込ませ、元のエンジェラへと元に戻したのである。そしてエンジェラは意識がなく、そこに倒れてしまった。
「フッやはり本気でなかったけれど、俺の敵ではないよ。二人とも。 さて····」
俺はその意識を失った2人に告げながら、カノー様の方向を見ると、そこにはあのセレンがいた。
俺はそんなセレンの指示である男に神の力を奪われていたため、俺はそんなセレンを倒すべく全ての力を解放した。すると俺は今までにないほどの、黒い大きな角が頭から映えてる姿になった。
そして俺は即セレンの所へと行くため、空中を飛びセレンの間近まで迫った。
だがその時俺はセレンに気づかれてしまった。だが俺はそんなことお構いなしに、セレンの横原を蹴り、アピス達の近くの地面へと飛ばしたのである。
そして飛ばした俺はすぐにセレンの所へと行こうとしたが、俺を見たカノー様に呼び止められため俺はその場に止まり、カノー様と少し会話をした。
「クロシー!? 血鬼とイウはどうしたの!?」
「カノー様。血鬼は封印し終え、イウは気絶させてあります。」
「そうリオシーの上に出てる、黒い霧のおかげね!」
「はい。では俺はセレンのとこに行くんで!」
「うむ。」
俺は話を終えると、すぐにセレンの所へと向かったが、セレンは無傷のまま立っており、俺に笑みを浮かべていた。
そんなセレンに俺は話しかけることもせず、俺は空中で止まると、エンジェラやラミアやイーフィやイセスも使える、白い霧や黒い霧や氷山やマグマで作られた槍を、目の前へと精製するとセレンへとぶつけた。
セレンはすぐに目の前に手を広げたが、槍は消えなかったことに、セレンは驚きそのまま4本の槍を受けたのである。
俺はそのセレンへと話しかけた。
「セレン。俺は貴様の能力をよく知っている。なんせ貴様の指示で神の能力を奪い取られた時も、貴様は発動していたのだからな。
そうお前は自分より弱い者が放つ魔法精製物や打撃物の威力や勢いなどや、弱者や土地そのものの生命力などといったものを全て零にする能力。それが貴様の能力だろ? だが俺のは貴様を僅かに超えている。だからこそ貴様は消すこともできなかったのだ。」
「フフッフハハハハッアハハハハハハッ!!!!」
俺が話した途端、セレンの高い笑い声が俺の下の煙の中から響き渡った。俺はそのセレンへと問いかけた。
「お前は勝てないのになぜ笑うんだ?」
「フフッいや〜やっぱクロシーは強いなぁ〜って思ったのよ。そしておしゃべりさんだなぁ〜ってだから笑ったのよ! アハハッ」
俺はその煙の中にいるはずのセレンの言葉に怒ると、そこにもう一度槍を精製し投げた。
だが俺は当たった感触がないことに感じた。
(感触がない? どういうことだ? 無効化されてる訳では無いはず···)
俺がそう考えていると、俺のかなり前にイウを抱えて少し傷を負っているセレンが現れた。
そしてセレンは笑みを浮かべながら俺へと話しかけてきた。
「やはりあなたは強いわねクロシー! まぁいずれ殺して上げるけど、今戦ったら負けそうだし、私はこれで引くわ! フフッ それじゃあね! クロシー」
「待て!!!」
「追わんくて良い。」
俺が追いかけようとした瞬間、先程俺が戦闘した所から、カノー様が俺を止める声がしたのである。俺はそんなカノー様に問いかけた。
「何故ですかカノー様!! 今追いかけたら倒せるかもしれないのですよ!!? 」
「そうかもしれないが、クロシーよく上空を見ろ。」
そう言われながら、俺は空を見るとセレンが逃げた方向の黒い霧は完全に消えており、俺が苦手でかなりの弱体化をしてしまう白く強い光を放つ太陽の光が、注がれていたのである。俺はそれを見てから、小さな槍を作り、やけくそに下へと投げつけた。
「くそっ!!!」
(クロシーが苛立つのもわかる。そしてあのクロシーに投げかけた笑み。あれは何かを企んでいる証拠。何を考えているの? セレン)
そして俺達とアピス率いるスペースとセレンやイウのみの逃亡により、死亡者や犠牲者をだしつつも、戦いの終末を迎えるのであった。
ただその中に1人の別の男が、ある1人の体の中で隠れていることも知らずにな。




