88話 悲しみの連鎖
今回はシキ視点です。
俺はエンジェラの名を叫びながら、ついにエンジェラ達が戦っていた場所に着いた。
走っていたせいか、息切れを起こしていたため、息を整えてから周りを見渡すと、驚愕したのである。
「ハァハァ····。 え···? 」
俺の目に映ってきたのは、あの頭痛で見えた光景とだいぶ同じで、たくさんの幹部の人達が倒れていて、セレンはこちらを見ながら、笑みを浮かべていて、イウと赤黒い鬼のような者のが、こちらを片目で見ている光景だった。
そしてその場でいくら探しても、エンジェラやチノンがいなかったため、俺はセレンの近くで倒れていたラビスの所へと走り、ラビスを叩き起こそうとした。
「おい! ラビス! 起きろよ! おい!」
「うっさいわよシキ···。てかなんでここにきたのよ···。早く逃げた方がいいわよ···。多分エンジェラやチノンは逃げたから···!」
するとラビスは少し弱々しい声で返答してきながら、体を起こすと驚愕した顔をした。
その場にはエンジェラは確認出来なかったものの、赤黒い鬼のような者の近くに、チノンが使っていた剣と盾が落ちていたからである。
それを見たラビスは即セレンへと暴言を吐きながら、問いかけた。
「おい! セレン! エンジェラとチノンをどこにやった!!!」
「ラビスどうしたんだ!?」
「シキあの鬼のような生き物の近くに、チノンの武器が落ちてるのよ! だから多分セレンがなにかやったに違いないわ!」
「え···?」
ラビスに指さしされた方向を見た俺は、鬼の近くにチノンの武器を確認したため、俺は即セレンに詰め寄り胸ぐらを掴むと問いかけた。
「おいセレン! 貴様チノンをどこにやった! エンジェラをどこにやった!」
「フフフフッエンジェラとチノンのことになると、焦るわね〜二人とも!
まぁいいわよ教えてあげるわ! よく聞きなさいね! エンジェラは貴方の背後にいる鬼の中よ。そしてチノンはエンジェラが殺したわよ! フフッ」
「う、嘘だ! そんなはずがねぇ! 」
「シキの言う通りよ! エンジェラがチノンを殺すはずがないわ!! ホントのことだけを教えて!!」
ラビスは怒りで体が動くようになったのか、いつの間にか立ち上がっていて、セレンが笑いながら答えた言葉に俺とともに、批判をしてくれた。
そしたらセレンは鬼へと向けて笑いながら話しかけた。
「ハハハハハハッ 2人がこういってるけど〜? あなたから話してくれないかしら? け·つ·き?」
「ウルサイゾセレン。 ソシテソコノラビストシキダッタナ? セレンガサッキイッタコトハホントウダ。ワシノナカニエンジェラハオル。ソシテワシハエンジェラヲトリコムベクシュウチュウシテイル。ダカラハナシカケルナセレン!」
「ハハハハッ相変わらずこわ〜い! まぁ血鬼から聞いた通りよおお? それでも貴方達は否定するのかしら〜?」
血鬼の言葉を初めて聞いた時、俺とラビスに一瞬殺気が飛んできた。だが俺とラビスはその殺気をだいぶ前に経験したことがあった。
〜回想〜
これはまだ学校でエンジェラやチノンと仲良くなってから、数カ月経ったことである。
学校の外でその時は、殺気の授業をしていた。
ラビスはその時、学校中からこちらを見ていたらしく、俺達のクラスの殺気が届いたり、届かなかったりすることがあった。
そしてエンジェラに殺気を出す番が回ってきた時、他の子とは違う何かの殺気を俺と遠くにいたラビスは感じたのである。
その時はエンジェラに聞いても、普通に殺気を出したといっていた。
〜回想終了〜
だが今俺とラビスは殺気の中にいた者の正体をこの目でハッキリと見ていた。
だからこそ俺とラビスは血鬼という者に問いかけた。
「あなたが···ホントにエンジェラなの?」
「ホントなのか? チノンを殺したのも、エンジェラがその中にいるのも!」
そしたら血鬼は正座をやめ、うちらへと顔を向けると、答えてきた。
「クドイゾニンゲン。サッキモイッタダロ? ワシノナカニイルノハエンジェラデ、ソシテエンジェラガチノントヤラヲコロシタト。」
「なんでよ····なんでチノンが···なんで殺されなくちゃならないのよ···なんでなんでよおお···。」
「ラビス!」
血鬼の言葉を聞いたラビスは、その場に泣き崩れてしまった。俺はそのラビスを庇うために、しゃがむだが、ラビスはずっと同じ言葉を繰り返した。
「なんでチノンが···。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。私は何をしているのよぉぉおおお!!! ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「ラビスダメだ! 無理に突っ込んじゃダメだ!」
ラビスは急に立ち上がり、血鬼へと向かっていった。俺はそれを止めようとしたが、ラビスには届かなかった。
そして血鬼は近づいてくるラビスを、片手だけで跳ね除け、ラビスはそのまま道のだいぶ横にある森林まで飛ばされてしまった。ラビスはそのまま木へとぶつかり、完全に意識を失った。
それを見た俺はラビスの名を叫びつつも、血鬼への殺気が湧いてきたため、俺は怯えながらも、武器を持ち血鬼へと向かった。
「ラビスゥゥゥ!!! よくもラビスを! そしてよくもチノンを! そしてよくも···エンジェラぉぉおおお!!!! はぁぁぁあああああああ!!!」
「キキワケノナイコゾウメガ。」
そして血鬼はそんなシキに対して剣を持ち構えた。シキは空中へと飛び上がると、剣を上から振ろうとした瞬間だった。
血鬼の顔が一瞬エンジェラに見えてしまい、俺は血鬼の剣に腹をさされ、意識を失った。
俺が意識を失う間、セレンが俺へと笑いながら話す声が聞こえた。
「惨めね〜 私がチノンとエンジェラを戦うよう仕向けたと知らずに···! フフフフハハハハ!!!」
(やっぱりセレンの仕業かよ···。ちくしょおおおお···。すまねぇラビスとエンジェラ···。俺の力が弱いばかりに····)
俺は最後の意識の中でそう考えながら、その場で腹から血を流し倒れた。
血鬼はそんな俺を見てから、剣を俺の体を引き抜いた瞬間だった。
血鬼の体が足から徐々にてかりだしたのである。血鬼はその足を見ながら、笑みを浮かべて笑いだした。
「ガハハハハハハッアハハハハハハハハハ!!! ツイニキタ。コノカラダヲノットタゾ! ガハハハハ!!」
(ごめんねシキ。ごめんねラビス。止められなくてごめんね···)
エンジェラは血鬼の中で、薄れてゆく自分の体を知りながらも、泣きながら俺とラビスへと謝ったのである。
そして黙っていたイウは血鬼の状態を見るなり、すぐ本気の状態になると、嬉しそうに答えた。
「やっと!! これで本気で戦えるわね〜キャハハハッ!!」
(フフッさぁ私に見せてごらんなさい。イウと血鬼。あなた達のような弱い者達の惨めな戦いをね! フフフフッ)
セレンは笑みを浮かべながら、心の中で笑いながら呟いていた。
そして一方その頃、ラゼフはというと黒と白か半々と鳥居の前まで来ていた。
「やっと着いたか。ホラック町!」




