86話 力の暴走
エンジェラはあまりの悲しみに、その場で座り込み、空を見上げながら、大泣きしながらまだ叫び続けていた。叫んでいながらエンジェラの体の中に存在する1体の魔物を沈めている赤い南京錠が、少し壊れかけてるとも知らずに··。
「ああああああああぁぁぁ!!!!!!!!」
それを少し遠くから見ていたイウとセレンは笑いながら、企んでいた。
「フフフッ壊れかけてるわね。あぁ言う子を見ると、完全に壊したくなるのよね〜 フフフッ」
「キャハッセレンちゃん怖い〜! まぁ壊したくなるのは分かるわ〜それでどうするの?」
「フフフッ見てれば分かるわよ!」
そうしてセレンは少し前へ出ると、顔の前で手を振ってから、エンジェラへと声をかけたのである。
「エンちゃん。私はここだよ!」
(なるほどね〜これは壊れるわね! キャハッ)
「え···? その声はチノン···?」
セレンの行動にイウは無言で笑みを浮かべていた。そしてセレン?に呼ばれたエンジェラは、声の聞こえた方を振り向くと、そこには腹にエンジェラの剣が刺さり苦しんでいるチノンの姿がエンジェラには見えていた。ただイウにはセレンが見えていた。
そしてエンジェラは架空のチノンを見て、怯えていた。
「いや····いや···私はやってない····私は殺してない·····コロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイ」
「エンちゃん···イタイヨオオ····なんで···私を殺したのお···?」
(フフフッ効果ありね。)
セレンはエンジェラに錯覚を見せていたのである。チノンを自らが殺してしまったという錯覚を···。
エンジェラはその錯覚で見えてるチノンが、言葉を発しながら近づいてきたため、エンジェラはそれに応じて言葉を発しながら、後退していた。
「ねぇエンちゃん。なんで私を殺したの? なんで私に剣を刺したの? ねぇなんで逃げるの?」
「やめてやめてヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテ、ワタシハコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイコロシテナイ!!」
エンジェラはセレンの狙い通り、少しずつ完全に壊れかけ始めていた。だがそれに応じ、エンジェラの体内の赤い南京錠も壊れかけ寸前だった。
そしてセレンはエンジェラの状態を見て、最後の企みを仕込んだのだ。
そしてエンジェラは完全に精神が保てていなくても、剣が刺さったまま近づいてくるチノンに、本能も勝てない敵だと錯覚したのか、後退していた。だがその後退した先には、セレンの罠があったのだ。エンジェラが後退していくと、誰かの足にぶつかったのである。エンジェラは咄嗟に顔を上げ、その足の主を見ると、そこに居たのは死んだはずのセラフィが無表情のまま立っていたのである。
エンジェラはその時、通常の思考ができなかったためか、咄嗟にセラフィへと助けを求めたのである。
「お母さん? お願いお母さん助けて! お願い助けて」
だがエンジェラが助けを求めたセラフィの顔が、咄嗟に血だらけになると、セラフィが話しかけた。
「ねぇエンジェラ。なんで助けてくれなかったの? お母さんね痛かったんだよおお? ねぇなんで? ナンデ?」
「ヒッ ごめんなさいごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ······」
そしてセレンの思惑通り、エンジェラはセラフィから遠のき、その場で蹲って謝りだしてしまったのである。
セレンはエンジェラの精神が壊れたと思い、エンジェラの錯覚を解くと、イウの方を向き、イウへと話しかけた。
「イウ。もう行くわよ。ここには用はないからね。フフフッ」
「あらぁ〜あのエンジェラちゃんもあの程度で壊れたかぁ〜残念だなぁ〜まぁばいば〜い」
そしてイウとセレンはエンジェラに背を向け歩いたその時だった。後方からとてつもなく強い殺気を感じたのである。
セレンとイウはすぐに後方を向き、イウは警戒をした。だがセレンとイウの目線の先には、赤い霧に囲まれているエンジェラがいたのである。それを見たセレンは鼻で笑うと、エンジェラ?へと話しかけた。
「フッ久しいな! 血鬼」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアハハハハハ!! オマエガオレノジュバクヲトイタノカ? セレンヨ」
元エンジェラだった人?は、ドス黒い角と血で出来た剣、そして赤黒いドレスへと変身した鬼のような魔物 ”血鬼” が現れたのである。
血鬼はすぐさまセレンへと甲高い笑い声と低い声で言葉を返した。
するとセレンは血鬼へと問いかけた。
「まさか鬼の中では最凶といわれたお前が、そやつの中にいたとはなどうだ? こちらへと来ないか?」
「ハハハッソレハオモシロイジョウダンカ? セレン オマエモワカッテイルノダロウ? ゲンザイノワシノカラダトイッテモヨイコヤツカラハナレタクハナインダ。ソレニナコンカイノヌシハキサマヲコロスコトヲゴショウモウダ。ダカラコソココデキサマヲコロス!!!」
血鬼は自らの体を指さしながら男のような低い声で答えた。そしてセレンへとその血が巡回してような剣を構えた途端、その場から消えたのである。ここまで少しセレンと血鬼の会話を聞いていたイウには、完全に血鬼が消えてから捉えられなかった。だがセレンは少し力を上げたのか、普通に血鬼の場所を捉えることが出来ていたため、セレンの背後に突如現れた血鬼の剣を、両手で止めたのである。
ドレスが靡く程度にまで、勢いを殺され止められた血鬼は驚くことなく、笑みを浮かべながら答えた。
「サスガダナアセレン。アイカワラズホンキハミセンノダナ」
「あなた程度に私が本気出すとでも思って?」
「ハハハハッイウジャネエカ! ナァセレン!」
そう言いながら血鬼とセレンはぶつかり合ったが、セレンは能力を少し出してるに過ぎないため、血鬼はすぐにセレンから引いた。
イウは見た事もない強い鬼を見たのか、笑みを浮かべながら見ていた。そしたら血鬼が引いた直後に、セレンがイウへと問いかけた。
「イウ戦ってみるか? あの雑魚と」
「え? いいのぉ〜? いいなら戦いたいなぁ! 血鬼もどうかなぁ〜? キャハハハッ」
セレンの問いかけにイウはさらに笑顔になると、セレンに答えつつも、血鬼に問いた。すると血鬼は甲高く笑いながら答えた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! ワシヲザコトハアイカワラズナメタクチヲキクノオ! セレン! ソシテソコノコムスメヨ! キタイナラコイ!!」
「小娘ねぇ〜キャハッ 少し調子に乗ると痛い目見るよぉ〜!」
そう言いつつもイウは血鬼にへと向けて、転移をした。そしてそれを血鬼は笑いながら受かえうったのである。
そしてセレンはそれを笑みを浮かべたまま見るのであった。
一方、だいぶ近くまで来ていたシキとラゼフは、突如見えた赤い霧が見えたため足を止めた。
シキにはその霧がなんなのかが、想像も理解も出来なかったが、ラゼフは驚愕の顔をしながら、呟いた。
「な、なぜあの霧が·····。こうなったらあの人の所へと行くしかない。」
シキにはその呟きが聞こえていたため、シキはラゼフへと問いた。
「ラゼフさん! あの霧はなんですか? そしてどこへと行くのですか!?」
「·····エンジェラの所へと行けば分かるさ。そしてあの人の名前はいえないが、味方を連れて戻ってくる! すまぬがシキのみで、こっからは進んでくれ!」
そう言い残し、ラゼフは空へと飛ぶと勢いをつけ、今まで来た道の逆方向へと体を向けると、そこに転移魔法の魔法陣を展開させると、そこ魔法陣の中へと消えて、その場から消えていった。
シキはそんなラゼフに対して、少し呟いてからまた走り出すのである。
「どうしたんだ? ラゼフさんはこんな 非常事態に···。まぁ俺は行くしかないし、向かうかな! 無事でいてくれよ···エンジェラ!!」




