74話 油断と別れ
今回もヒロ視点です。
俺は警戒を解き、マメの元へと歩きながら、服のポケットに手を入れると、そこから片手しかない黒い手袋をだして、それを右手にはめるてから、手袋の親指のところに着いている、紫色の液体を両頬に塗った途端だった。
エンジェラとチノンとリビーとラビスとラミアが俺を見ながら、口を開けたまま突っ立っていて、イアとラックといつの間にか戦いを終えたイーフィは笑みを浮かべていた。
俺はそんなイア達が目には入り、少し照れ隠しをした。
そしてエンジェラ達が驚くのも仕方ないことだと思った。そう俺は紫色の液体を塗った後、目は紫色に変化し、髪は逆立ち紫色のオーラを纏っていたのである。
この紫色の液体は自分の中に秘められている能力を、全部だして自分の力に変換させて、自分の体力の尽きる限り自分の力として使えるように、ある人が開発したものだ。
俺は周りの驚きや、笑みの顔を見つつ、ずっと俯いたままのマメの近くまでゆくと、すでに泣いてることはなく、ただ俯いたままだった。
(すでに泣いてないか····。諦めたのか? それともまさかな··· )
俺はマメを見ながら考えていた。そして俺は考えながらも、行動を開始した。
俺はまず手袋を付けてる右手で、マメの右肩に触れると、手袋の上に魔法陣が発動した。
そしてその時感情を見る目のちの"感眼"を発動し、片目は紫色、片目は白色というオッドアイになると、感眼でマメの感情の黒い部分だけを、マメの体から引っ張りだし始めたのである。
だがマメの体は俺に抵抗し始めたため、俺は少しずつ引っ張り出すことにした。
俺がそんなことをし始めた時、エンジェラ達の方では、エンジェラがイアに問いかけていた。
「イアさん! あのヒロさんの姿はなんですか? それに今はマメになにをしてるんですか?」
「あぁ···あの姿はな····」
エンジェラの問いかけに、イアが答えようとした時、いつの間にか戦闘を終え、服のホコリを払いのけながら、エンジェラ達の所に、いつの間にかいたイーフィが笑いながら、イアへと答えた。
「イアさん。私が話しますよ。多分私のが知ってますしふふふっ」
「あら? 魔物達は?」
エンジェラ達はいきなりのイアにおどろいていたが、すぐに冷静に戻り、イアとイーフィの話しに集中していた。
イーフィはイアの問いかけに、魔物達の方向とイセスの方向を指さしながら答えた。
「あとはもうほぼ少数だったので、イセスに任せてきましたよ! あとはイセスでも余裕ですしね」
「なるほどね。まぁあちらはイセスで大丈夫でしょう。さてイーフィ、エンジェラ達へと話してあげたら? 待ってるみたいだしね?」
イアはそう言いながら、エンジェラ達の指さした。イーフィもイアの言葉を受けてから、エンジェラ達の方を見ると、エンジェラ達はずっといーフィの方を向いていて、さすがのそれにイーフィも驚いていた。
だがすぐイーフィは冷静さを取り戻し、エンジェラ達の問いかけに答えた。
「エンジェラ達よく聞いてね。あのヒロの姿は彼のいわば、エンジェラあなたの白鬼と同じように本気になった姿よ。そして彼がマメにしてるのは、彼はあの状態になると、感情の縫い目みたいのが見えるらしくてね、その縫い目から黒い感情だけを取り出してるのよ。まぁ簡単にいうと、例えば布を縫ってるとかに、ミスってダメになった糸を抜くのと同じことよ。わかったかなあ?」
「おぉ〜ヒロさんすごい!」
イーフィの言葉を聞いた瞬間、ラミアやリビーさえもヒロのことをすごいと思ったのか、すぐヒロの方を向いた。そしてエンジェラやチノンやラビスはヒロの凄さに尊敬を覚えたみたいだったらしい。
そんなエンジェラ達を見たイアとイーフィとラックは笑みを浮かべた。そしてイーフィは俺のことをこう思ったようだ。
(油断するんじゃないわよ。ヒロ。あなたには必ず生きてて欲しいのだから!)
そして一方そんなことを思うとは、いざ知らず俺はただずっとマメの体から黒い感情のみを、引っ張り出すことに集中していた。
さっきよりはかなりもう黒い感情はマメから、出ていた。そして俺は引っ張り出しながらも、マメの表情を見ようと思ったが、マメはただ無言で俯いたままだった。
俺はそんなマメを見ながら、考えていた。
(魔法陣で拘束はしているが、なにも言わないのはおかしいな···。まさか本当に諦めたのか? たださっきから見ているが、黒い感情は今だ現在だしなあ。あーもう考えてもキリがないか。仕方ないか。魔法陣を解くしかないか)
そして俺は考えた末に、結論を出した。
黒い感情もかなり出ていて、あと少しだったため、俺は魔法陣を解くことにしたのである。
そして俺はある一言を呟くと、魔法陣を解いたのである。
「解除!」
魔法陣は木っ端微塵に割れ、そのまま空気へと消えていった。そして俺はまた引っ張り出すこと集中したのである。
それから何分たった頃だろうか、俺はすっかりマメからの警戒を解き、黒い感情も出て切ろうとしていたその時だった。
「えっ?」
俺の近くでぐさりという鈍い音がしたのである。そうマメに残る黒い感情の、最後の足掻きなのか、マメは左手に持っていた剣で、無言のまま俺の腹を突き刺したのである。その瞬間、俺の横で空中に浮かんでいた黒い感情に、口のようなのが現れ、俺に向かってニヤけたのである。
俺はそのニヤけた表情を見てから、口から血を吐き出した。
「ふっ···やる···じゃねえかよ。でもな··おめえもこれで終わりだあああぁぁ!!!」
そう言いながら俺は最後の力を振り絞り、マメからなんとか黒い感情を取り出したのである。
そして取り出したマメの黒い感情はそのまま、空へと風のごとく消えてゆき、マメはそのまま俺へと意識を失って倒れこんできた。そして俺はマメをそのまま地面へと寝かせたのである。
俺が刺されたことは偶然にもエンジェラ達へと見えてなかったのか、誰も助けにはこなかった。
そして俺は手袋をしてない、左手を空へと上げるとエンジェラ達に、親指をたてて大丈夫だということを示した。
エンジェラ達はそんなヒロの表示を見ていて、安心したが、唯一ラックだけは俺の異常に気づいたのである。
「おい! ヒロ大丈夫か?」
(うっせえな。大丈夫なわけないだろ···)「がはっ」
ラックがそう俺へと大声で問いかけた時だった。俺はついに抑えきれず、血を地面へと吐くと、そのまま地面へと倒れ込んでしまった。
「ヒロ!!!」
「ヒロさん!!!?」
俺は俺の名を呼ぶ、エンジェラ達の声が聞こえたが、すでに返事を返す体力もなかった。
そして俺うつ伏せで倒れてると、誰かが俺を回転させ、寝かす状態にしてくれた。
俺が寝かす状態になった途端、俺のすぐ近くで声がした。
「う···そ···で··しょ?」
俺はその声の主を知るべく、声がした方向を向くと、そこには手を口で抑えているイーフィがいた。
そしてイーフィの左右には、エンジェラ達が驚きながら言葉を失っている感じだった。
俺はイーフィ達を見てから、顔を戻し空を見ながら、ニヤケながらみんなへと話した。
「あは····は。だ····めなとこ···ろみせ··ちまっ···たみたいだな。ゲホゴホ。
みっと···もねえなあ···おれは」
「そんなことないわよ!馬鹿。こんなに無理して、私との約束忘れたのヒロ!?」
俺の言葉に、イーフィが強めの口調で返してきた。そんなイーフィをイアは悲しげな表情で見ながら、呟いた。
「イーフィ···」
「私はあなたが生きてさえいててくれれば、それで良かった! でも···でも···」
イーフィがそこまでいうと、俺の腕がに涙をポタリポタリと落ちてきていた。
俺はそんなの頭を、左手で力を振り絞り撫でながら、イーフィへと話しかけた。
「イーフィ ごめ···んな。約束···守れなく···なっちまっ···たわ。」
「何がごめんよ!!!この大馬鹿ヒロ!」
俺はイーフィの怒りを、イーフィの頭を撫でながら、聞いていた。
俺の受けた傷は胸の急所の所だったため、誰もが回復しても治らないことは、分かっていた。
そして俺を怒ってるイーフィに、見かねたエンジェラがとめようとしたが、イアはそれをすぐに止めた。
「イーフィさん流石にそれは···」
「よせ!エンジェラ。言わせて置いてやれ。」
「あ、は、はい···」
「イア···さん。エン···ジェラ。ありが··とう··な。」
俺の声は少しずつだが、小さくなっていた。無理もない。先ほどの状態は、なってるだけでも体力を消耗するのだから··。
そして俺はそれからというもの、何回もイーフィからの怒りをきいた。
そしてイーフィがほぼ何も言わなくなった時、俺ももうもたないと思ったため、俺はイーフィに話しかけた。
「···イー····フィ」
「·····なによ。ヒロ」
「さい····ご···だけ····わが···ま··ま··いって···も···いい···か?」
「なによ。持ったないぶらないでよ。」
そして俺はもう最後の力を振り絞り、体を起こそうとしたが、起きれなかったが、チノンとラビスが助けてくれたので、俺は礼をつげた。
「あり····がと···な。 ラビス···チノン」
「どういたしまして···」
そして俺は2人の力をかり、起き上がるとイーフィに、話しかけた。
「いー···フィ···みみ··をち···か···づけて···くれない···か?」
「仕方ないわね。一体なによ。」
そしてイーフィは耳を近づけて来たので。俺は最後の言葉を告げた。
「だい···すきだった···よイーフィ。またな。」
そして俺はラビスとチノンの腕に持たれかかり、そっと目を閉じたのであった。
そんな俺の言葉を聞いたイーフィは、おれに俺に聞こえてないのはわかって言っても、涙を流しながら、答えてきた。
「私も好きだったわよ。ヒロさよなら」
こうしてマメは救われ。ヒロは二度と帰らぬ人になったのであった。




