63話 本心
今回はチノン視点です。
これはラビスを私が、地面に叩きつけて気を失わせた直後の話である。
私はラビスをただ何も思わず叩きつけ、それから私はラビスから少し離れた位置へと飛び、ずっとラビスを直視していた。
その時の内心は、かなり複雑だった。
(え...本当に私なんだよね? 体動かしてるの... でもなんでなんだろう、体と脳が私の考えてる考察通り··いや それ以上の働きをする.. 私はどうしちゃったんだろ··· でも前にもこんな感覚あったなあ...確か訓練の時だったかなあ)
〜回想〜
私は訓練で、ゴブリンの攻撃が迫った時、ある事を思っていた。
(あ〜ぁ、バレた上に私死んじゃうんだ....こんな人生だったなら、皆と会わなければ良かったなあ...)
私がそう思いながら、完全に諦め落ち込んでいた時だった。
「諦めちゃダメ!!」
私の背後で、誰かが話しかけてきた。
私はすぐ背後を見たが、誰もいなかった。そして前に顔を戻したその時だった。
「え·····」
私は目の前の光景に、言葉を失ってしまったのである。それは何故かというと、私の目の前で、完全にゴブリンの斧が止まったからである。
いや正確には、”時”が止まっていたのである。
私はその時が止まった世界にただ何も考えられなくなったまま、その場に棒立ちしてしまったのである。
だが、そんな私に、また背後から言葉がかけられたのである。
「あなたは本当に、ここで死んでいいの? エンジェラを守りたいんじゃないの? だったのなら諦めちゃダメだよ!」
「え··· なんで私や、この周りの3人しか知らないことを知ってるの? あとあなたは誰なの? あとこの世界は貴方が作ったの!?」
私はその謎の言葉に対し、少し焦りながらもたくさんの質問をぶつけた。
するとその謎の声の人は、私へと答えてきたのである。
「最初の2つの質問は、いずれわかる。3つ目はその通りだが、これもいずれ分かるだろう。」
「一体どゆことなの? 訳が分からないよ! ちゃんと応えてよ!」
私はその謎の声が、全てのことに答えなかったため、少しイラつきながら答えた。
それに対し、その謎の声はある言葉を残し、消え去ったのである。
「私を知りたくば、生きろ。 お前ならその前の状況をやれるはずだ。 私もすこし力を貸そう」
そしてその謎の声が聞こえなくなった次の瞬間だった。 私の体に何かが流れ込み、体が軽くなったのである。
私はそのいきなりのことに、内心びっくりしていた。
(え····えぇぇぇええ!! まさかあの謎の声の人、私の中に入ったのおお!? でもなんだろうこの馴染む感じ··· って謎の声ってどんな声だったっけ?)
そして私はその謎の声の人の操作により、そこまでの記憶を忘れさせられて、今日まで至るのである。
〜回想終了〜
その事を思い出し考えていた私は、あることに気づいたのである。
(もしかしてあの謎の声の正体って···私?)
私がそんなことを内心で考えていた時だった。
「あ、あの魔人倒されてる。 魔法放たなきゃ!」
私がその声に、背後をみると、そこにはイアとイアを見ているラックがいた。
そして私はその今にも、魔法を放とうとしているイアを止めたのである。
「イアさん! すみませんが、その魔法はもう少し待ってください。 お願いします。」
「何故だ? チノン。 そのラビスだっけ? その子は魔人でもう倒れたのだろう? 今なら戻せるチャンスだと思うのだが?」
私の言葉に、イアではなく戦闘をしながらラックが、問いかけてきた。
その問いかけにイアも、乗ってきたのである。
「ラックの言う通りだよ! それにここは戦場! 甘い考えでは通用しないんだよ? 分かってる?」
「はい。それは分かってます。ただ理由とラビスの本心が知りたいのです!」
私はイアとラックに対し、後ろを振り向くことなく答えた。
そしてそんな私とイア達と話してる間に、ラビスは意識を取り戻したのである。
その時私は、横に手をかざしイア達へと再度言葉をかけた。
「だから、次で瀕死にさせますので、その時お願いします。それまでは私はラビスに、放たせません。」
「今回限りよ。次はないからね?」
「イアの言う通りだ。次はない。」
そしてイア達は、私に対しそう言葉をかけながら、少しイラつく感じで、また魔物との戦いを再開した。
そして私は、意識を取り戻したラビスへと話しかけたのである。
(多分私だとは思うのだけど、なぜあの謎の声になってまで、あの時私に声をかけたのか。その理由を知るためにも、本心をぶつけででもここは勝つ。だからこそ、ラビスちゃんにも本心を決めてほしい。) 「決まった? あなたの本心」




