62話 無心の刃 後編
今回はラビス視点です。
チノンは私から一切目を離さず、血が垂れたままの片手剣を、ずっと構えた状態のまま、その場でずっと止まっていた。
私はそんなチノンに警戒しつつも、切られた腕を抑えてる手を、切られた部分に近づけ魔法をかけた。 すると血は止まり、傷口も治ったが、多少の痛みは残り、腕は傷口のみ治っただけで、修復はできなかった。
そして私が治している間も、チノンはずっと止まっていた。傷口を治してから、私はチノンの方を向いた。
「スー ハァー ねぇチノン、あなたは本当にチノンなのか?」
そして私はチノンの様子が、さっきまでのチノンや、訓練の時に見たチノンとは、気配やオーラが全くの別人だったため、少し警戒しつつも聞いた。
だが、チノンは答えることなかったが、私の言葉を聞いた瞬間、少し体を一瞬だけだが、震わせたのを私は見逃さなかった。
(ふーん。聞こえてることには、きこえてるのね。まぁいいわ。いずれは殺すんだし、殺るまでよ!!)
私はそのチノンの反応に、頭の中で少し考えた後、浮く魔法である 【ゾルパ】 で空へと浮くと、魔法をチノンへと放った。
「チノン! 貴方がどんなに、変わったり本気出しても貴方を私は殺すわ! これでもくらって死ね!! メテオ!! 」
私が魔法の名をいうと、魔法の背後から、多数の炎に包まれた岩石がチノンへと振りかかった。
だが、チノンは岩石を、まるで紙を斬るかのように、斬りまくってゆき、メテオを完全に打ち消すと、地面に凹凸を作るぐらいの、強さで地面を蹴り、空に浮いてる私の所まで飛んでくると、斬りかかってきたのである。
私はそれを、瞬時に作った魔武器で何とか受け止めた。 そしてかなり近くまでチノンの顔が迫った時、私はある事をチノンの、無表情の顔から感じ取ったのである。
(まさか、私との戦いの中で、無心の状態になったというの? 嘘よ! そんなことあのエンジェラでさえ、不可能なことなのに、なんでチノンが出来てるのよ! おかしい! 絶対におかしい!!)「そんなの私は認めないわ!」
私は頭の中で考えながら、焦りがピークへと達し、その場の勢いのまま、その魔武器で、チノンの剣をおそうとしたが、完全におしまけてしまい、チノンが私を地面へと叩きつけるようにおされて、私はそのまま地面へと落下してしまったのである。
そして私は落下の瞬間、口から血を吐き、意識を失ってしまったのである。
そして私は黒い空間に飛ばされ、周りを見渡してもただ1人しかおらず、自分自身をみても、黒い姿だった。
そんな黒い空間で、私は呟いたのである。
「ふっ ここは地獄なのかしらね。 私は魔人なのだものね! 私はここで1人で生きるのかしら! 辛いわね〜 まぁいいわ! もう痛む必要もないんだし、あの方やチノンや、エンジェラの事なんかも、気にすることは無い! ここは私だけの空間なんだから! フフフフアハハハハハ」
私がそう、少し涙を流しつつ笑っていた時だった。
「あなたは本当に、何も変わらないのね」
私の背後から、誰かの声が聞こえてきた。
私はすぐに後ろを向いたが、誰もおらずに、気のせいかと思ったので、無視することにした。すると、また背後から声が聞こえてきたのである。
「貴方は本当に弱いまんま、自分のために行動し、自分の気持ちが最優先。 だから闇にさえ操られるんじゃないの?」
「うるさい! うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!
自分のために行動してなにが悪いって言うのよ? てかあなたは誰なのよ? コソコソ隠れてないで、出てきなさいよ!」
私はその誰かの声に、耳をいったん塞ぎ、周囲をみながら、叫び散らかしたのである。
そしてその謎の声を発していた人物は、突然私の前に、1人はエンジェラの格好、1人はチノンの格好、1人はシキの格好、1人はハクラの格好、そして中央には私の格好をした、5人の人?が現れたのである。
「え······え?」
私はいきなりのことに、動揺を隠せなかった。
すると、5人全員がいきなり私に話しかけてきたのである。
「さっきもだが、やはり君は逃げてる。それで良いのか? あのチノンは君から逃げず、君を救うために気持ちや、心を捨てたのだ。 君にそれができるのか? それとも本当に完全な魔人へと変貌したいのか? 君やラミアや、レナはまだ助かる、だが時間を経過すれば君らは完全に助けられない。 君はどうしたいんだ?」
「うるさい! 黙れ!」
私はそう言いながら、魔法を手に込めると、その5人へと放った。
5人とも一旦は消えたが、すぐ元に戻りまた話しかけてきたのである。
「我らは君が作り出した、本心がそのものだ。この黒い空間もな。君は既に決めてるはずじゃ、だから決めるが良い。」
その5人はそう言い残し、黒い空間と共に、消えさったのである。
(何が本心よ。何が決めてるよ····)
私がそう心の中で、思っていると、私は意識を取り戻し、現実へと戻ったのである。
そして私は、立ち上がり、チノンの方をみると、背後に手をかざし、止める仕草をしていたのである。
私はその背後をみると、イアとラックがチノンの方を少しイライラしながら、見ているのが分かった。
そして私が立ち上がったのを確認した直後、チノンは私に話しかけてきたのである。
「決まった? あなたの本心」
もし誤字等あれば、お願いします。




