101話 黒い空間に指す光 後編
外ではチノンが復活した瞬間、すぐにエンジェラに会うべく、部屋をすぐに出てカノーを探すことにした。
だがカノーは割と近くにいて、チノンはそれに驚きつつもカノーの元へと羽を、羽ばたかせながら飛んでいった。
カノーもそんなチノンに気づいたようで、すぐにチノンへと声をかけた。
「復活出来たかチノン。さてお主にひとつ頼みたいことがあるんじゃ。」
チノンはカノー様の近くで浮遊しつつも、止まると聞き返した。
「出来ました! ほんとにありがとうございます! それで私に頼みとはなんでしょ?」
「今この白い空間でエンジェラは寝ている。だが近くにいるクロシーという我が仲間曰く、エンジェラは余程心に傷を受けすぎたのか、心の中で何個もの空間が勝手に出来ていて、その奥にエンジェラはいるらしい。だが多分君なら助けられるかもしれない。頼めるかな?」
「···」
チノンはあまりにものエンジェラの心の傷の深さを知り、困惑してしまい言葉が出せなかった。
ただカノーはずっとチノンの方を見ながら、何もそれからは話しかけてくることはなく、チノンは少し頭を整理しながら考えた。
(私にできるの····? そりゃあカノー様に色々能力つけて妖精へとかわれたけど、それでもできるの? 弱い私に··)
するとチノンにカノーや白い空間の中にいるクロシーの言葉でもない、謎の言葉が話しかけた。
「君ならできるさ。私が保証するよ。」
「え···? 誰?」
チノンは周囲を見渡しながら、問いかけた。
そんなチノンの様子にカノーは首を傾げながら、問いかけた。
「ん? どうしたのだ? チノン」
「え···? 聞こえなかったですか? 今の言葉!」
「言葉? 誰も話してはいないぞ!?」
「え···」
その謎の言葉はカノーにも聞こえてはいなく、チノンにのみ聞こえたのである。それを知り少し困惑してたチノンに、また謎の言葉が話しかけた。
「ごめんね。正体は見せられないんだ。でも私の声を信じれば、エンジェラをちゃんと助けられるよ。あのね。まずエンジェラの心臓の所へ手を当てて、そこでエンジェラを強く思いながら、エンジェラの名を強く呼んであげて。
そうすれば必ず助かるから! それじゃあね!」
「え!? それでほんとにエンジェラは助かるの!? 」
ただチノンが問いかけても、謎の声の返答はなかった。
カノーはそんなチノンの様子を見て、チノンにしか聞こえてない何かがあるとは感じたが、詮索はしないでいた。
チノンはその謎の声を聞いてから少しまた考えた。
(謎の声の言葉でほんとに助かるの? でも私はエンちゃんを助けたい。なら私にやることは·····1つしかないじゃん!!!!)
「カノー様! 私はエンジェラを助けます!」
「ふむ。そうか。ではお願いする。頼んだよチノン。」(何かあったのか知らないけれど、少し目付きが良くなったかしらね。)
「はい!!」
チノンは返事をすると、カノー様の横にあった白い空間の中へと入った。
そして入った直後、寝ているエンジェラとクロシーが目に入ったが、チノンは何もいわず、エンジェラの元へと近づくと、エンジェラの心臓の所へと手を当て、強く思いつつエンジェラの名を呼ぶのである。
「エンちゃああああぁぁん!!!!!」
クロシーはその声に少し驚いたが、ある事に気づいたため、近くの壁に腰を下ろし、座り込んだ。
チノンはそれからもエンジェラの名を呼んだ。するとある時にチノンの体が、白い光に包まれ、透明になって行ったのである。
「エンちゃああぁぁん!! え? えぇ!!!? 体が消え始めてるぅ!!!? 」
そしてチノンはやがてその場から消えたのである。
外でそんなことが起こってるとはいざ知らず、エンジェラは血鬼と未だに話してた。
「ねぇねぇ血鬼ちゃんのそのドレスはなんで赤いのおお? 」
「あぁこれか? これは色んな人の血や怨念が作り出したドレスだから、血のように赤いんだ。」
「へぇ〜なんか不思議〜!!!」
エンジェラがそう血鬼へと答えた直後だった。黒い空間の1部が割れたのである。
「血鬼ちゃんあそこ割れたよね?」
「あぁそうだな。さてエンジェラわれとはそろそろお別れかもしれぬ。」(迎えがきたか。)
「え〜? なんで〜? 」
「君の迎えがやって来たからだよ。」
「迎え?」
血鬼の言葉に首を傾げながら、エンジェラは問いかけた。
すると血鬼は立ち上がり、エンジェラから離れるように歩き始めながら、答えた。
「そこで待ってればいずれ分かるさ。ほなワレは行くぞ」
「ふ〜ん。うん! また話そうね血鬼ちゃん! バイバイ!」
エンジェラは立ち上がり笑顔で、血鬼へと手を振りながら答えた。
血鬼はそんなエンジェラを鼻で笑いながら呟きつつ、その場から姿を消した。
「フッ。やはり少し変わった主だな。」
その頃一方のチノンはというと、エンジェラが最初にいた黒い空間で目を覚ましたのである。
「ここはどこ?」
チノンはすぐに周囲を見渡しながら、呟いた。すると先程の謎の声が目の前から聞こえたのである。
「ここはエンジェラの心の中だ。先程はすまぬなチノンだったか?」
「え···!? あなたは確か白鬼!!!?」
チノンの目の前からいきなり、顔はエンジェラで、僅かだが小さな白い霧を纏う、こちらへと歩む白鬼が姿を現したのである。
白鬼は笑顔になると、チノンへと答えた。
「その通りだ。私は白鬼。そして私の主であるエンジェラはこの下の最下層にある空間におる。だからチノン。君にはその下にいるエンジェラを説得して外の世界へと戻して欲しいのだ。できるか?」
「私にできるのなら! やります!」
「うむ。では私がその最下層の空間へと送ろう。」
「はい! お願いします!」
すると白鬼はチノンへと手をだしたため、チノンはその手を掴んだ。チノンにとってはまるでエンジェラの手を握ってると、同じ感じだったという。
チノンが手を掴んだのを確認した白鬼は、チノンへと声掛けすると、黒い空間を下へと潜ったのである。
「よし行くぞ!」
チノンは黙ってただただ白鬼の手を握っていた。そして直ぐにエンジェラが苦しみ、メンタルさえも壊すはめとなったトンネルを下りだした。エンジェラの時は色んな人の死体とかだったが、チノンにはエンジェラの今までの思いや、苦しみ、痛みなどが言葉で流れ出し始めたのだ。
「なんで私だけこんな目に···。、」
「シキ···ラビス···チノン···誰でもいいから助けて··」
チノンがそんな言葉へと耳を貸してた時、白鬼がチノンへと話しかけてきた。
「チノン。ここは人の負を現すトンネルだ。君たち人間や妖精の中には絶対にある。ただ耳を貸しててもいいが、強い意志だけは保てよ?」
「白鬼さん。大丈夫ですよ。私はエンちゃんを助けるために、ここに居るんですから。」(待っててねエンちゃん。)
「そうか。すまない気遣いをしてしまったようだな。少し急ぐぞ!!」
白鬼はそういうと、速度をあげた。チノンはその白鬼の手を強く握った。その2人はまるで黒いトンネルに光る1本の光のように少しずつトンネルを下っていた。
そして2人はだいぶエンジェラのいる空間の近く、トンネルの底まで来ていた。その時白鬼はチノンへと話しかけた。
「いよいよ着くぞ。」
「はい!」
その頃エンジェラは、黒い空間のヒビが少しずつ大きくなってるのを、唖然としながら見てるだけだったのである。




