100話 黒い空間に指す光 中編
エンジェラはそれからも、トンネルを落ちていきながらも何度も繰り返し、やがてはどんどんと涙を流しつつも笑いを浮かべるようになって行った。
「あははっあははははっ!!」
だがそのトンネルがやっと終わりをむかえ、エンジェラはある場所に落ちた。
この頃外ではクロシーが血鬼を封じ込め、イウとともに気絶させられたと、エンジェラは後に知るのである。
エンジェラはそんなことも知らずに、腕を左右に広げ、笑いながらその場所を歩き出した。
「あははははっ」
1歩1歩踏み出す事に、エンジェラの体は少しまた黒くなっていった。
その時のエンジェラは、黒いことになってることは知っていたが、気にもならずずっと歩いていた。
したらいきなり周りの景色が、外のあの戦場のような黒い空間へと一瞬で変わった。
流石のエンジェラもそれには足を止め、首を傾げた。
「んー????」
するとエンジェラの後方から、血のような液体が下へとポトポトと垂れていて、赤い色をしているドレスを着て顔はエンジェラの血鬼が、エンジェラへと迫り、だいぶ近づいた時に、エンジェラへと話しかけた。
「ダイブコワレテルヨウダナ」
「ん? んん? あなたは誰?」
エンジェラはその言葉に振り返り、首を傾げながら問いかけた。すると血鬼は笑いながら答えた。
「フハハッマァタブンイチジテキナキオクショウガイカナニカジャロ。ダカラハナシカタカエテハナストシヨウ。お主も堅苦しいのは苦手だと思うのでな。わしの名は血鬼だ。お主に宿る鬼の1種だ。」
「ふ〜ん。で、その血鬼ちゃんが私になんのよ〜う?」
普段なら警戒とかはしただろうが、エンジェラはその時メンタルも崩壊しており、笑みを浮かべながら問いかけた。
すると血鬼はまたもエンジェラへと問いかけた。
「フハハッ血鬼ちゃんか。まぁ良い。ワシがここへと来たのは2つの訳があってだな。ひとつはワシがある男に封じ込められ、この世界から出れなくなったこと。そしてもうひとつはお主に提案があったためだ。
お主はここでこのままワシと過ごすか? それともワシに取り込まれてもう一度封印を解き、外でのうのうと生きている奴らを殺すか? それとも外へと出るか? ワシはお主の敵ではあるが、お主の体の中で生きていかなきゃならぬひとつの存在でもある。そしてここの中はお主の心の中じゃ。まぁ時間があるかは分からぬ。だが選べ。」
「ん〜? 難しいことわかんな〜い。どれからか選ばないとだめ〜?」
「うむ。どれからか選べ。」
エンジェラは気楽な感じで、血鬼へと問いかけたが、血鬼はその言葉に冷たい感じで返した。
するとエンジェラは少し考え出した後、答えた。
「ん〜。その選択肢の中からだったら。私は血鬼ちゃんとここで暮らした〜い!」
「ワシはそれでも構わぬが。お主はほんとにそれで良いのか?」
「え〜? だって〜私は1人だも〜ん。外に誰がいるのかも分からないし〜血鬼ちゃんとここにいた方が私はいいかなぁ〜!!」
「そうか。では座るとしよう。」
エンジェラからの答えを聞いた血鬼は少し申し訳なさそうな顔をしながらも、エンジェラへと返答をし、その場に座り込んだ。
エンジェラは座り込んだ血鬼を見て、血鬼の近くにより、血鬼を笑顔のままずっと見る形で座り込んだ。
それからというもの、エンジェラはずっと血鬼のことを笑顔で見てるだけだったため、血鬼はエンジェラへと問いかけた。
「ワシを見て何か楽しいのか? 」
「楽しい〜? ん〜。わかんない! 」
「そうか」
エンジェラはずっと笑顔を壊さず、血鬼の言葉に返答をした。それを見た血鬼は少し寂しげな顔をした。
そしてそれから沈黙が続くと思いきや、エンジェラが突然血鬼へと問いかけた。
「ねぇねぇ血鬼ちゃん! 血鬼ちゃんには友達はいるの?」
「ワシには居らぬ。エンジェラはどうなのだ?」
「私には····あれ? いたような感じがしたんだけど···思い出せないや! あははっ」
血鬼はそのエンジェラの言葉に、エンジェラの状態を把握しながら答えた。
(少し状態が深刻なようだな。あいつ(クロシー)からエンジェラを治すよう罰を与えられたが、ここまでなってるとは思わんかったな。さすがにやりすぎたか。)「そうなのか」
「ねぇねぇお互いいないんだったら、私達今友達になろ? ね? ダメかな?」
血鬼はエンジェラのいきなりの提案に流石に驚き、少し固まってしまった。だがすぐに笑いながら問いかけた。
「フハハハハハハッワシは外ではお前の敵なのだぞ? まぁ同じ体ではあるが、それでも貴様はワシと友達になるというのか?」
「外では敵だとしても〜ここでは私の話聞いてくれてるし、私はなりたい〜! だめ〜?」
血鬼はエンジェラの言葉を聞いた瞬間、腹を抱えて笑いだした。
そして笑い終えてから、エンジェラへと答えた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ いやすまない。変わった主だと思ってついの。まぁ良かろう。これからは我らは友だ。(一時的かもしれぬがな····)」
「む〜。笑いすぎたよォ!!!!」
そしてその場はまるで、エンジェラとチノンが会話してるかのように、2人だけなのに、エンジェラはメンタル壊れて、血鬼との会話の筈なのに、賑わっていた。
その頃外ではエンジェラは白い空間で記憶喪失の状態でいて、シキやラビスやラミアやリビーなどが面会に訪れるが、全員涙や後悔を浮かべ出てゆき、クロシーとカノーはチノンが復活して、白い空間へと来るのを待ちつつもエンジェラの近くで見張っている時だった。




