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スライム

 地面に積み上げられたペットボトルを、何とかアンナのカバンに詰め込む。

 入らなかった分は仕方が無いので地面に埋めることに。


「まったく。あんたはもうちょっと計画性をもってだね――」


 ぶつぶつと小言を言われながらもせっせと埋める。

 とそこに一匹のゲル状のモンスター。


 ……。


 いや、アレはモンスターなんだろうか。


「なぁあれって」


「ん? あぁ、あれはスライムだね」


 やっぱりスライムなのか。

 でもなんか思ってたのとちょっと違う。


 スライムってこうまるんとつるんとしたイメージだったんだが……。

 あれは本当にスライムだ。

 ゲル状のものがジュルジュルと近寄ってくる。


「危険じゃないのか?」


「あぁ、アレは特に問題ないよ。むしろゴミとか掃除してくれる良い奴だよ。お、そうだ。折角だからこの山を掃除してもらおうか」


 そう言いペットボトルを1つ拾いあげ、スライムに食べていいぞと押し付けるアンナ。

 するとペットボトルがジュクジュクと溶けてなくなってしまった。

 なかなかのスピードだ。


「……本当に危険じゃないのか?」


 あのスピードで溶かされたら、俺ひとたまりもないと思うんだが。


「あぁ。こいつらはゴミと識別されたものしか食べないんだ。生きているものは基本的に食わないしね」


 なんという高性能生物。

 少しご都合主義的な気もする。


「なんか人に都合よすぎないか?」


「まぁ確かにそうかもしれないが、そういうもんなんだよ。だから良く益獣とか、場所によっては神の遣いなんて言われてる所もあるくらいだからね」


 なんと。

 スライムが神の遣いか。

 出世したもんだ。


 そうと分かれば俺も早速試してみる。

 ペットボトルを拾いスライムに押し当てる。


 ……。


 反応しない。


「ちゃんと食べていいぞって言わないとたべないぞ?」


 なるほど。そういうことか。


「食べていいぞー」


 ジュクジュクジュク


 おぉ、面白い。


 俺は調子に乗り残りもどんどん食わせてやる。

 あっと言う間にペットボトルがなくなってしまった。


「ふー、これで全部かな」


「ふふ、なかなか楽しそうだったね」


 アンナが笑いながら俺を見る。

 

 いかん。また夢中になって周りが見えなくなってしまった。

 まいっか。今回は特に困るようなことしてないし。


 とか思っていると、俺の足にまとわりついてくるスライム。


「うわっ!」


 俺は驚いてしりもちをついてしまった。


「へぇ……珍しいね。懐かれたようだ」


 アンナが少し驚いたようにこちらを見てくる。


 なるほど。こいつは俺に懐いてくれたのか。

 ふふ、ういやつめ。

 

 俺はスライムをつんつんとつついてやる。

 思ったよりも肌触りがいい。

 なんかサラサラしててひんやりと冷たい。


 うむ、こいつは飼いだな。

 ついでに首チョンパのゴブリンも処理してもらっておこう。


 そんな感じで俺はスライムを飼う気満々でいたのだが、アンナから残念なお知らせ。


「あー、残念だけれどスライムを飼うのは大変だぞ? 普段は移動が遅いから持ち運ぶ必要があるんだけれど、鉄器の様なものかガラスに入れて運ばないと零れるんだ」


 零れる?


「布とかに入れるとね、その細かい隙間から漏れてしまうんだよ」


 と、アンナが持っていた布で実際に実践してくれた。

 そもそも手に持とうとした時点で指の隙間から零れ落ちているし、布に収まっても布の網目から細かく零れ落ちてしまっている。


「ね? だからこいつらは確かに旅のお供にはもってこいなんだが、一緒に鉄を運ばんといけないから大変なんだ。ガラスは高いし割れたときが悲惨だしねぇ。だから実際こいつらを連れ歩いている奴は殆ど見ないね」


 なるほどなぁ。

 折角こんな高性能モンスターなのに、勿体ないことだ。

 ……ん? 待てよ……。


「なぁアンナ。それってこのペットボトルで代用できないかな?」


 俺の言葉に固まるアンナ。

 おぉ、やっぱりいけそうだな。


 俺は早速やってみることに。

 先ずペットボトルを創造して、次にスライムに中に入るように指示。

 するとペットボトルの口の所からスルスルと中に入っていくスライム。

 無事全部入り切ったら口を閉めて完成!


 水色の透明な液体の中に気泡がみえて、なんかサイダーみたいである。


 アンナの方を見ると、まだ固まってらっしゃる様子。

 そしてしばらくしてようやく動き出した。


「あんた……いや、何も言うまいよ。まぁとにかくお前が規格外なのはよくわかったけれど、あまりそれを人前でするんじゃないよ? すぐにそれは何だと問い詰められるだろうからね」


 おぉ、そうだった。

 ペットボトルのことは秘密だったね。

 まぁ人前で気を付ければいいか。


 俺はペットボトルの中の7割ほどに収まっているスライムにコンコンと挨拶してやる。

 するとスライムも中で揺れて挨拶を返してくれる。


 う~ん、なかなかどうして。かわいい奴だ。


 俺がまた一人で楽しんでいると、アンナが再び俺の手を取り引き上げる。


「いつまでやってるんだい。スライムの相手はまた後にしときな。それよりも暗くなる前にさっさと街に戻るよ!」


 そう言って俺を引っ張っていくアンナ。

 むぅ。早速もう尻に敷かれる予感。

 まぁ楽だからいいんだけどね。


 そうして俺たちはスライムとアンナの二人と一匹で街へと向かっていった。


 あ、翻訳機能がついている緑の宝石は、ネックレスとして俺の首にかけてもらった。

 どうやらこれ魔道具の一種らしく、ちょっと高価なものらしい。

 アンナは冒険中他種族とも会うことがあるからいつも持ち歩いているんだって。

 ふむ。じゃぁこの宝石の代金はきちんと働いて返すことにしようか。


 ……。


 俺、ちゃんと働いたり出来るんだろうか。


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