プロローグのエピローグ
魔王発言で場を騒然とさせた俺は、あれから今回起こった出来事をアンナたちに頑張って伝えた。
銀狼族の皆も気になって仕方が無い様子だったので、皆に囲まれながら腰を据えて話をしたんだけれど、かなり緊張してしまって手汗がびっしょりだ。
話の途中、皆には呆れらてしまったけれど、頑張って最後まで伝えきりました。
「つまりだ。あんたの中には魔王の魂が入っていて、魔王の欠片も吸収しちまったと。それで他の欠片もこれから吸収して回ることになったってことかい?」
今回の件について分かりやすく簡潔にまとめてくれたアンナ。
「うん。まぁ簡単に言うとそういうことかな。それで、この巨狼は前の魔王の眷属みたい。魔王の魂の波動を感じて山を下りてきたんだってさ」
あれから巨狼とも少し話しをしてみた。
俺の魂と魔王の魂が少し混じり始めたからか、巨狼の言いたいことも何となく伝わってきて何とかコミュニケーションをとることが出来たんだ。
彼もこの山で、500年の間ずっと魔王の欠片を見守って来ていたらしい。
凄い忠誠心だよなぁ。
そんな俺の話を聞き色々納得したのか、水分補給をしながら休んでいたドクが口を開く。
「なるほどなぁ。だからおめぇの魔力が強くなったのを感じたわけか。俺が村を出されたのもその辺に関係してんのか?」
あ、そうだったそうだった。
ドクにそのことを伝えなくては。
「うん。ドクの魂って、当時の戦士のものが転生したものらしいんだよね。だから俺とドクはお互いの魂が惹かれ合っているんだってさ」
「ぶふっ」
飲んでい水を吹き出すドク。
横にいたナーシャもニヤニヤしながら肩を震わせている。
「なるほどにゃー。ドクとケイトはそんな深い所で繋がっていたんだにゃぁ。じゃぁ2人は結婚するしかない「しねぇよ!!」……にゃ?」
ナーシャのいじりを速攻で否定するドク。
ドクの頬が少し赤いのは、怒っているからだと思いたい。
しかしそんな二人のおかげで、銀狼族の間に広がっていた緊張も少し緩んだように感じた。
ジョイだけは何故か不満そうだが。
「自分の恋敵が現れて面白い訳ねぇでし! とんでもねぇ伏兵もいたもんでし!」
「だから違うっつってんだろ!」
二人からいじられてドクの顔が真っ赤である。
ジョイは少し本気な様な気もするが。
そんなドク達の様子に苦笑しつつ、アンナが俺に尋ねてくる。
「それで、これからどうするんだい? 魔王の欠片を集めるにしても、色々と準備が必要だろう」
「うーん。どうすると言われても、俺も丸投げされたばかりだからなぁ。……どうすればいいと思う?」
アンナの問いに逆に聞き返す俺。
そんな俺にため息をつくアンナ。
「はぁ。まぁそりゃそうかもしれないけどねぇ……。とりあえず、全ての魔王の欠片の封印場所を回るにしても、後ろ盾が必要になってくるだろうね」
えっと、どういうことだ?
「魔王の欠片の封印場所って言うのは、この国の至る所に散っているって言われているんだ。だからこことは別の領主の領地に足を踏み入れることになる。ここまではいいかい?」
アンナの説明に頷く俺。
「このメディカリアン王国って言うのは、元々別々の国が集まってできた国だ。そしてその元々の国土を、それぞれの元王族達が領主として今も支配しているんだよ。言ってしまえば、一つの国にいくつもの国が内包されている様なもんだね」
うわー、なんだかややこしそうな話だ。
「つまり、他の領地に入るならそこの領主の許しが必要ってこと?」
「簡単に言えばそう言うことだね。まぁ商人なんかの一般人にはあまり関係のない話だけれど、魔王が通るってなると話は別だろうからねぇ。今のあんたの状態じゃ、いつまでもこそこそしている訳にもいかないだろうし」
確かに。
これから俺は魔王の欠片を集めて力もどんどん強くなっていく。
こっそり隠れていてもそのうちバレてしまうだろうなぁ。
と言うか、これって言ってしまえば魔王復活の旅だよな。
そんな簡単に後ろ盾になってくれる人なんているんだろうか。
そんな俺の不安を察してアンナが答える。
「まぁその辺は任せておきな。あんたが魔王として生きると決めたんだ。私も覚悟を決めようじゃないか」
そう言って何か吹っ切れたような清々しい顔をするアンナ。
えっとどういうことだろう。
魔王になった俺と一緒に旅をしてくれることへの決意ってことかな?
「まぁ、色々さ」
そう言って彼女は笑う。
なんだか誤魔化された気分だ。
そう言えば、初めて会った時もこんなことがあった気がするなぁ。
まぁ、彼女にもいろいろと事情はあるのだろう。
また彼女の口から話してくれるのを待つとしようか。
「にゃははー。なんだか楽しそうな事になってきたのにゃ。私もその魔王軍に参加させてもらってもいいかにゃ?」
そう言って、目をキラキラさせながら俺に胸を押し付ける様にして迫ってくるナーシャ。
だからこの角度は勘弁してください。
「もちろん。俺からもよろしく頼むよ」
「にゃははー。任せるのにゃ。どんな敵も後ろから瞬殺してやるのにゃ」
そう不穏な発言をするナーシャ。
いや、そういう意味で言ったんじゃないんだけどね。
「ドクは……そうか、ここでお別れなんだよね」
寂しいけれど、彼が決めたことだ。
ここでうだうだ言っても仕方が無い。
そう思っていたのだが、ジョイが思いもよらぬことを言い出した
「何を言ってるんでしか? ドクも行くに決まってるでしよね?」
そう言って、ドクの方を振り返るジョイ。
そんな彼女の言葉にきょとんとするドク。
「え……いいのか? でも俺はこの村を――」
「何言っているんでしか。この村は元々魔王の欠片の封印を守る事を使命に作られた村。その魔王の欠片が今まさに村から持ち去られようとしているんでし。村の未来の長として、その行方をしっかりと見定めてくるのは当然の事でし!」
胸を張りながらそう言い切るジョイ。
しかしその顔は、少し寂しそうにも見える。
そんな彼女に、ドクも申し訳なさそうに言う。
「ジョイ……すまねぇ。お前にはまたしばらく寂しい思いをさせちまうな……」
そうか。ジョイはドクに気を遣わせないように無理に気を張って……
「その代わり、ケイトと浮気なんてしたらぶっ殺すで「だからしねぇよ!?」し!」
そう言って顔を見合わせた後、吹き出す様に笑う二人。
互いにしんみりした別れが嫌なのだろう。
なんだかそんな関係がとても羨ましく思えた。
しばらく笑った後、ドクは俺を振り向き言う。
「そういう訳でだ。あんな別れの言葉言っておいて今更カッコつかねぇけどよ。これからもまぁよろしく頼むわ」
頬を掻きながら、そう素っ気なく話すドク。
そんな彼の様子がとても彼らしくて、俺たちは顔を見合わせて笑ってしまった。
色々大変なこともあったけれど、再びこの4人で旅をすることが出来そうだ。
この3人と一緒なら、これからどんな困難も乗れ超えていける。
そんな物語の主人公の様な事を考えている自分に気付き、ちょっとくすぐったく、そして心がほっこりするのを感じた。
▽
それから俺たちは村長宅で一時の休息をとった後、再びホスピティの街を目指して出発することになった。
「異世界人! ちゃんと魔王の欠片を全部集めて立派な魔王になったら、ドクを耳揃えて返しに来るでしよ!」
最後まで可愛げのない言い方をするジョイ。
しかしこれが彼女なりの激励なのだと、やっと最近分かってきた。
俺はそんな彼女に頷いて応え、カルフィス村を後にする。
「それでアンナ。これからホスピティの街に行くわけだけれど、まずは何からするのかな」
山を下りしばらく歩いたところで、アンナからまだ何も聞かされていなかった俺はこれからのことを彼女に尋ねた。
俺の問いに考えながら答えるアンナ。
「そうさねぇ。まずは……ん?」
とその時、彼女が進行方向の先に何かに気付く。
俺もその視線を追ってみると、遠くから馬に乗って猛スピードでかけてくる人影が見えてきた。
「……ジョルト?」
右目に大きな傷跡をもつ隻眼の大男。
見た目はヤクザな心優しい宿屋の看板男こと、ジョルトがそこにはいた。
しかし彼の眼は虚ろで深い隈が出来ており、憔悴具合がかなりひどい。
何があったんだろうか。
そんな彼を見て、アンナも焦ったように彼に話かける。
「どうしたって言うんだいジョルト! 街の監視はどうしたんだい!?」
監視?
一体何のことだろう。
しかしそんな質問をしている暇も無さそうだ。
「逃げろ……領主が……ケイトを……」
掠れる声でそう呟くジョルト。
しかし彼はそのまま崩れる様にして動かなくなってしまい、俺たちはその言葉の続きを聞くことは出来なかった。
これにて第1章完結です。
色々と物語の構成の甘さ等問題も残ってはいますが、とりあえず無事書き終えることが出来ました。
ここまで応援して下さった皆さま、本当にありがとうございます。
大変 申し訳ありませんが、一度ここで完結とさせていただきます。
ペット(眷属)についても2章から色々登場させていきたいなとは思っていますが、これから先を書くとなると相当構想を練っていかないといけなくなりそうなので、少し時間がかかるかもしれません。
その辺りは、皆さんの要望を聞いてから次章に入るか新作に取り掛かるか決めていこうかと思っています^ ^
ご愛読ありがとうございました。
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感想・レビュー等もお気軽によろしくお願いいたします。




