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ペット創造の可能性

 やらかしてしまっていたことに関して、またアンナからお小言をもらってしまった。

 アンナだって知らなかったんだから仕方が無いじゃないかとも思ったが、そういう話じゃないと怒られてしまった。

 解せぬ。


 さて。魔法のことはもうすっきり忘れるとして、お次はスキルだな。

 結局スライムのえさ住処すみかにしか利用できていない【ペット創造】だ。

 ジョイが言うには、このスキルにはとてつもない可能性が秘められているという。


「まず、そのペットボトルの魔力を保持出来る機能についてでし。創造系スキルで創られた物質に魔力を留めておくことの大変さは、さっきお前も体感したはずでしね」


 うん、アレはかなり集中力がいる作業だった。

 なんでこのペットボトルは、勝手に魔力を保持してくれているんだろう。


「お前のペットボトルは意味不明でしから、なんでそんな性能を持っているのかなんて分からんでし。でも、そういう性能を持つ物質が他にないわけでは無いでし」


 へ~、なんだろう。


「魔石でし」


「魔石? さっきの魔道具とかに付いていたアレ?」


「そうでし。魔石には、主に属性を変換する性能と魔力を保持する機能が備わっているでし。この変換先が魔石の種類と一致しているわけでしね。魔道具に魔石が備わっているのも、魔石自体が魔力を保持している性能を利用して、魔力をちょっとしか持たない人間でも魔道具を利用できるようにしているんでし」


 つまり火属性魔石なら、無属性の魔力を火属性に変換できると。

 そんでもって火属性魔力の電池代わりにもなるのか。


「お前のペットボトルはその保持機能をもっているでし。つまり、お前のペットボトルは膨大な魔力タンクとして利用できるんでしよ」


 おぉなんかすごい。

 要はこれを一杯ストックすれば、なんかでっかい魔法とか打てるようになっちゃうってことだろうか。

 俺も自分では打てなくても、なんかすごい魔道具とか作ったりしてもらえればあるいは――


 と一人で興奮していた俺だが、ジョイに水を差される。


「でもこれはあまり広めるべきでは無いでしね。そんなものが沢山流通してしまえば、世の中大魔法打ちまくりの大戦争時代に突入してしまうでし」


 その言葉に一気にしぼむ俺の妄想。

 そうだよなー。

 こんな便利なものがあるなら使ってしまうのが人のさが

 戦争なんかでもすぐに利用されてしまうだろう。

 それはなんか嫌だ。


「ま、私が考えているお前のスキルの可能性は、また別の方法でしから安心するでし」


 その言葉に俺の沈んでいた気持ちが再浮上。


「えっと、他の方法?」


「そうでし。お前はペットボトルを創るとき、特に方向性を付けずに創造していると聞いたでしが、間違いないでしか?」


 ジョイの言葉に頷く、が。


「……あ、でも今はスライム達においしく食べて欲しい考えながら創るときも多いかな。そうやって創ると、スライムがちょっと嬉しそうに食べてくれるようになった気がするんだ」


 俺の言葉に脱力するジョイ。


「なんでしか、餌にする方向付けって。聞いたことないでしよ。……まぁいいでし。餌の方向付けが出来るんなら、他の方向付けだってきっと出来るはずでしね」


・・・・・・お?


「つまり、そのペットボトルを攻撃に利用出来ねぇかってことでし!」


 お? おお!?

 それは……なんか滅茶苦茶凄そうだ。

 そういえば前にも同じこと考えたこともあった気がするけれど……なんだかんだで忘れていた。

 この一か月、ペットボトル=スライムの餌としてしか創ってなかったからなぁ。


 俺が感慨にふけっていると、ジョイが呆れたように話。


「まだ出来ると決まったわけじゃねぇでしから、喜ぶのは早いでし。というかドク、こんな簡単なことなんで今まで試さなかったでしか?」


 確かに。

 ドクならすぐに思いついてアドバイスしてくれそうなものなのに。

 なんでだろう。

 

「ん? あぁ、そりゃアンナに口止めされてたからな」


 そう言ってアンナの方へ視線を送るドク。

 俺も驚いてアンナを見てしまう。

 するとアンナも少し気まずそうに口を開いた。


「まぁねぇ。だって仕方が無いじゃないか。ケイトのペットボトルに魔力が詰まっているって聞いた時から、それが攻撃に使われたらと思うとぞっとしてね。ただでさえ衝動的に動いて色々としでかしちまうって言うのに、ペットボトルで攻撃なんて覚えさしちまったらどうなることか」


 そう言って、ブルっと鳥肌を立たせるアンナ。

 何というか、俺ってそこまで問題児なんだろうか。

 流石に傷つく。


「そういうことでしか。まぁその辺りも私がしっかり指導するから安心するでし。と言う訳で異世界人! ここからは絶対に衝動的な行動は取らないと約束するでしよ。私も故郷を破壊されたくはないでしからね。良いでしね??」


 ひどい言いようである。

 まぁここは素直に頷くしかあるまい。


「……うん」


「なんでちょっと不満げなんでしか!? またなんかやらかす気満々だったんでしか??」


 おっと、勘違いをさせてしまった。

 周りにいたナーシャやドクも、ちょっと引いている。

 確かに、この魔力タンクであるペットボトルで爆弾とか作ったらひどいことになってしまうだろう。


 ふむ、ペットボトル爆弾か……。


 俺が一人で考え込んでいると、アンナがぼそっと呟く。


「あれはまた、何かしでかす時の顔だよ。みんな、すぐに対応できるように準備しておきな」


 おっと、危ない危ない。

 

「や、やだなぁ。ちょっと爆発物について考え事をしていただけだよ。どんな威力になるんだろうなんて試してみたりなんかしないってば。ハハハハハ」


 俺の言葉に顔を引きつらせるアンナ達。

 そしてジョイも、肩を落としながら口を開く。


「すでに私、ペットボトル攻撃をお前に伝えたことを後悔してきたでしよ……」


 だ、だいじょうぶだから。

 今回は俺も咄嗟にやらかさない様気を付けよう。

 自重自重。


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