俺の魔力
「では先ず初めに、お前の魔力適正から調べるでし」
俺たち4人を訓練場のような場所に連れてきたジョイは、開口一番にそう述べた。
「これが魔力の相性を調べる魔道具でし。それとこっちが魔力総量を調べるやつでしね」
そう言って持ってきた2つの魔道具を並べるジョイ。
片方にはこぶし大の8色の魔石が取り付けられて、もう片方には水銀温度計みたいなメーターが3つ並んでいる。
俺は先ず8色の魔石が付いた方に手を置くように言われた。
「では起動させるでし。もし気分が悪くなったりしたらすぐに手を放すでしよ?」
この魔道具は外部からその人の魔力を引っ張り出して、その魔力と属性の相性を調べるものらしい。
人は魔力の減少が一定の割合を超えると、眩暈などの症状を起こしてしまう。
ジョイが気にしているのはそのことだろう。
俺が魔道具に手を置くと、ジョイが魔道具を起動させる。
するとペットボトルを創るときの様な、体から何かが引っ張りだされる感覚を覚えた。
これが多分魔力なのだろう。
さて、俺の相性の良い属性はなんなんだろうか。
ちょっとドキドキしてきたぞ。
「こ、これは……」
検査が終わったのか、ジョイが装置を見て驚いている。
俺の周りにいたアンナ達3人も、装置をみて息を呑むのを感じた。
「えっと……?」
俺は装置を見てみるが、特に起動させる前と変化は無いように思える。
これは一体どういうことなんだろうか。
俺が疑問に思っていると、ドクが大変言いにくそうに口を開いた。
「えっとなケイト。この装置は起動させて魔力が流れると、流れた魔力と相性の良い属性の魔石が光ってくれるんだ。相性が良くない他の属性についても、少しは光ってくれるもんなんだが……その、なんだ。お前の場合は……」
ドクが話しかけてくれているが、まともにこちらを見ようとしない。
なんだろうすごく嫌な予感がする。
すると、ジョイがそんなドクの言葉を引き継いでぶった切ってくる。
「異世界人! お前の魔力の相性は、8つの属性すべてと最低最悪だったでし! これは前代未聞でし! 流石の私もお前を育てる自信を無くしたでしよ!!」
少し焦りながら話すジョイ。
普段周りの事なんてどこ吹く風な彼女がこんな反応を示すとは。
余程珍しいことなのかもしれない。
場の空気が非常に気まずいものになっていると、気を遣ったナーシャが次の話題を切り出した。
「ま、まぁ相性のことはとりあえず置いておくのにゃ。それよりも、魔力総量の方を調べたらどうにゃ? ケイトの総量の多さはきっと化け物級なのにゃ」
おぉそうだそうだ。
確かに属性の相性は最悪だったかもしれないけれど、俺には魔力総量チートがまだ残っているんだった。
よし、今度こそ!
そう意気込みながら俺はもう片方の装置に両手を乗せる。
この魔道具は、魔力総量の内訳である魔力の吸収速度・保持量・瞬間放出量がそれぞれ調べらる装置らしい。
魔道具に3つ並んでいるこのメーターが、それぞれの大まかな目安を現してくれるようだ。
俺が準備を終えると、気を取り直したジョイが装置を起動させた。
起動が始まると、先ほどとは違い俺の右手から魔力と思われるものが出ていき、再び左手に戻ってくるのを感じた。
なんだか魔力が俺と装置をぐるぐる回っているみたいだ。
5分ほどだろうか。
俺が自分の中を通る魔力を観察していると、検査が終わったのか魔力の流れが収まってきた。
そして、表示されている水銀柱の様なメモリが上昇していく。
おぉ良かった。
これでまたダメだったらどうしようかと思ったけど、今度は大丈夫そうだ。
なんて安心していると、一番右のメーターがすぐに止まってしまった。
あれ? っと思っていると、真ん中のメーターもほどなく止まる。
……これは大丈夫なんだろうか。
しかし俺の心配をよそに、一番左のメーターだけは止まることなくどんどんと上昇していき、ついには上限一杯にまで到達してしまった。
なんて極端な右片下がり。
嫌な予感しかしません。
俺の考えを肯定するかのように、ジョイが深いため息をつきながら口を開いた。
「なんてことでし。こんな極端に偏った魔力総量を見たのは初めてでし。普通はどれも似た様なものになるはずなんでしが……」
確かドクも以前同じようなことを言っていた気がする。
これはやっぱりマズいんだろうか。
「この一番左の振り切れているのは魔力の吸収速度を現しているでし。お前の総量を10段階で表わすと、瞬間放出量は1、保持量は2、吸収速度は……10以上でしね」
俺の吸収速度は10段階に収まらないらしい。
……でも待てよ?
つまりは俺の魔力は使った端から回復していくってことだよな。
だったら魔法も使いたい放題なんじゃ……。
なんて甘い考えも、ジョイによって断ち切られる。
「確かに、無属性なら使いたい放題でし。ただし小枝程の太さの魔法を、永遠と出し続けることくらいしか出来そうに無いでしけどね。他の属性なんて以ての外でし! 時間をかけて集中して、やっとこさ火種こさえるのが関の山でし!」
ボロカスに言われる俺。
むむむ。折角魔力チート出来ると思っていたのに、こんなことになるとは。
何か打開策は無いものなんだろうか。
俺が一人で苦悶していると、アンナが救いの手を差し伸べてくれる。
「でも、じゃぁケイトのあのスキルはどういうことなんだい? あのペットボトルには魔力がたんまりと溜まっているって言ってなかったかい?」
おぉそうだ。
あのスキルなら魔力のお化けなペットボトルを生み出せたんだ。
きっと魔法も同じように――
「あれはスキルだから出来る芸当でし。スキルは外からの強制力によって発動しているでし。だからあのスキルを発動すると、この異世界人から魔力がどんどん抜き取られて、ペットボトルという形で創造されるんでし。常人ならとっくに死んでるでしな」
俺の希望を打ち砕こうとするジョイ。
そしてそのままとどめを刺しに来る。
「一方魔法というのは内から、つまり自力でどうにかするしかないんでし。もし同じことを魔法でするなら、相当の労力とそれをコントロールするための長い年月が必要になってくるでし」
うっ。なんてこった。
つまり俺は魔力は尽きないけど、大した魔法も打てないってことなのか?
……いや、諦めるのはまだ早い!!
「で、でも、もしかしたら異世界人チートとかで凄い魔法打てちゃうかも!!」
俺が珍しく大きな声を出したことに驚く一同。
しかしその顔もすぐに憐みのものへと変わっていった。
「そんなに言うんなら、一度試してみればいいでしよ」
ジョイの声が妙に優しかったのが、心に刺さってきました。




