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赤髪のアンナ


 異世界に来ていきなり命の危機。

 そしてそれを救ってくれた赤髪の美女。


「ojogjfdkf jfldj ogogp? Ltjowflak pgfkogj o;jf?」


 先ほどから、俺に何かを身振り手振りを加えて伝えようとしている。

 しかしさっぱり意味が分からない。

 俺のコミュニケーションノーりょく舐めないでもらいたい。

 こちとら妹にまで敬語使ってしまうようなヘタレである。。


 全く話が通じていないことに気付いたのか、彼女は何かを思い出したかの様に手を打ち、俺の腕を強引に引っ張り上げた。


 なになに、なにごと!?

 

 きょどる俺を見て少し彼女が訝しむが、すぐに興味を失うように視線を外す。

 そして彼女の腰にあるポーチみたいなものから、一つの緑色の宝石を取り出した。

 それからその宝石を俺の手のひらにねじ込んできた。


「イタイイタイ!!」


 別に肉を抉り取ってとかそういうことじゃないけれど、彼女の握力が強すぎてめっちゃ痛いのだ。


「お! やっと通じたか。やっぱり言葉が通じていなかったんだな」


 急にはっきりと聞き取れるようになった彼女の声。

 

「えっと……なんで?」


 なんで急に意味が通じるのか。


「そりゃあんた、その宝石のおかげさ」


 おぉ、早速異世界の凄さに触れてしまった。

 俺が宝石を見ながらニヤついていると、彼女が訝しみつつ話しかけてくる。


「なーに一人で気持ち悪い顔してんのさ。私はアンナ。あんたは?」


 う、うるさいわい!

 くそ。他人と話さなくなって久しいから、変な態度を取ってしまった。

 こちとら引きこもり歴5年のコミュニケーションノー力の……てあれ?


「緊張……してない?」


 なんでだ?

 最近はかーちゃんとでさえまともに目を合わせて喋れなかったというのに……。


 俺が不思議に思っていると、アンナが気づいたのか声をかけてきた。


「ん? もしかしてあんた人と話すのが苦手なのかい? そりゃ私のスキルのせいだね」


 俺が一人で自問自答していると、アンナがとんでもないことを言い出してきた。


「ス、スキル!?」


 まじか!? 剣術とか気配察知とか、はたまた成長補正極大とかチート主人公たちが必ず一つは持っているというあの……。


「まぁ大抵の人間は、大したものは持ってないけどね」


 なーんだ。残念。

 でも俺が話せるようになるスキルって何だろう。

 ちょっと気になる。


「ア、アンナのスキルってなんなんだ?」


 俺の言葉に、怪訝な顔をするアンナ。


「なんだいあんた。自分の名前を名乗ろうともしないで、人のスキルを聞きたいってのかい?」


 身を乗り出すように俺に問い詰めてくるアンナ。

 めちゃくちゃ恐いです。


「ご、ごめんなさい。俺は、多田恵人けいとっていいます。ほ、ほんとうに、ごめん、なさい」


 俺がガチでビビってると、アンナが吹き出す様に笑い始めた。


「ふふっ。いや、ごめんごめん。脅して悪かった。本気じゃないんだ、冗談さ」


 そう言って快活に笑うアンナ。

 なんというか、顔は美人だが中々豪快な喋り方をする女性だ。

 映画に出てくる女海賊の様な力強さを感じる。


 俺が呆けてアンナを見ていると、それに気付いた彼女が口を開く。


「あぁそうだった。私のスキルの話だったね。ほれ、これをごらんよ」


 彼女がそう言うと、いきなり彼女の前に現れるホログラムの様なウインドウ。

 俺はそれにギョッとしてしまう。


「ふふ、驚いたかい? これはステータスウインドウっていうのさ。ここに名前やスキルなんかが書かれているんだ」

 

 そう言って、俺にウインドウを見るよう促すアンナ。

 そしてそこに書かれていたのがこれだ。




アンナ 女 28歳

スキル 【安心感】




「ぶふっ!!」


 あ、いかん。思わず笑ってしまった。

 恐る恐るアンナの方をみてみると、案の定こめかみに青筋たててピクピクしてらっしゃいます。

 いやでも考えても見てくれ。

 鋭い目つきに燃えるような赤髪。話し方も豪快でいかにも冒険者です! って感じの女が【安心感】て。

 俺は悪くないはず。


「あ、あんた。結構いい度胸してるじゃないか。……と言いたいが、私もこんな成りだからね。そういう態度には慣れてるさ。まぁこのスキルのおかげで結構助かってることも多いからいいんだけどね。あんたも私といると落ち着くだろう?」


 そう言って口の端を上げて微笑みながら近づいてくるアンナ。

 でもその声は、どこか自嘲染みている様にも感じられた。


「え~と……普通?」


 アンナと普通に話は出来ているが、特別安心しているとかではないと思う。

 いや、普通に話せていること自体がすごいことではあるんだけどね。


 俺の答えに、一瞬戸惑いを見せるアンナ。

 しかし彼女はすぐにまた笑い出す。


「はっはっは! 普通? 普通か! いやー、そんなこと言われたのは生まれてこの方初めてだねぇ」


 そう言って笑いながら涙を拭うアンナ。

 いや、泣くほど笑うってどんだけだよ。


 でもそんな彼女の笑顔は、何かが吹っ切れた様なスッキリとしたものだった。


「いや~、ほんとあんた変な奴だねぇ。……そんじゃ私も見せたんだ。あんたのスキルも見せてもらおうかね」


 アンナのプッシュに気おされる俺。

 ん~、でもステータスウインドウってどうやって出すんだろう?


 いでよ! ステータスウインドウ!!

 あ出た。

 なになに~。




ケイト・タダ 男 29歳

スキル 【人見知り】【ペット創造】





「ぶふっ!!」


 今度はアンナに笑われた。

 いやまぁこれは仕方が無いかなぁ。

 まさか俺もスキルになるほどに人見知りを昇華させていたとは思いもよらなんだ。


「ご、ごめん……くくっ、いや、ほんと人のスキル見て笑う、なんて、ひー、いやもうだめ」


 と言っておもっくそ笑い出すアンナ。

 こいつも大概いい性格してるよな。


 しばらくして、やっとアンナも落ち着いた。


「いやー、久しぶりにこんなに笑ったわ。ごめんごめん」


 頭を掻きながら謝るアンナ。


「いや、俺も笑っちゃったしもういいよ。俺もびっくりしたし。自分のスキルに」


 俺の言葉に首を傾げるアンナ。


「ん? そりゃどういう意味だい?」


 そんな彼女に俺は答える。


「俺、スキルなんて見たの初めてだったからさ。さっきここの世界に来たばかりだったし。ゴブリンに殺されそうになった時はもうだめかと思ったけど、アンナのおかげで助かったよ。ありがとう」


 俺は素直に思ったことを彼女に伝える。

 久しぶりに、自分の気持ちを人に伝えた気がするな。


 しかし彼女は訝しむ様にこちらを睨み、そして諭すように話す。


「あんた、それを他で言うんじゃないよ」


 少し低めのトーンで話す彼女。

 その顔には先ほどまでも明るさは全くなく、思わず一歩後ずさってしまう。


 えっと……どういうこと?


 

 


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