カルフィス村
シリアス展開は一旦ぶった切りますよ!
そして、少し物語を動かすために説明が入ります。
「到着でし! ようこそカルフィス村へでし! そして皆暗すぎでし! ずっと一緒にいたこっちの身にもなって欲しいでし!!」
到着早々、捲し立てる様に話しだすジョイ。
そう言えば、この子もずっと一緒だったんだ。
俺はあの後恥ずかしくも泣き疲れてドクの背中で寝てしまい、彼女のことを完全に忘れていた。
「ほんと良いご身分でし! まぁその分これからしっかり働いてもらうから、今回は多めに見るてやるでし」
そっぽを向きつつ話すジョイ。
彼女なりの照れ隠しなのか、それとも本当にしっかりと働かすつもりなのか判断しづらい。
彼女の気遣いを汲んでか、アンナも空気を換えようと口を開く。
「まぁ確かに、いつまでも暗くしてても仕方が無いさ。それに今ここは、なんだか大変なことになっているみたいだしねぇ」
確かに、道中のモンスターといいジョイの発言といい、ここで素直にお別れとはいかなさそうだ。
「にゃははー。ケイトもドクの背中でぐっすり休んですっきりしたかにゃ?」
ナーシャが悪戯を思いついたかのようにニヤケながら話してくる。
「うん、大分すっきりしたよ。でもドクには悪いことしたよね」
一晩中、俺を担いで運んでくれたドク。
途中で起きそうなものだけれど、気づけば村に到着していた。
ドクの背中が心地よ過ぎたせいなのか、慣れない旅で疲れが溜まっていたせいなのか。
とりあえず、ドクには謝っておこう。
と思ったのだが、ナーシャに止められた。
「にゃはは。別に問題ないのにゃ。ドクは丈夫だから、肉壁でも歩くベッドでもなんでもござれにゃ」
懐かしい言葉を使いながら、ドクをいじるナーシャ。
ドクも苦笑しつつ、「うるせぇ」と言い返す。
少しだけ、いつもの空気に戻った気がする。
「さて、いつまでも突っ立ってる訳にもいかねぇでしから、村長の所に案内するでし」
ジョイの言葉に頷く一同。
俺たち一行は、ジョイに連れられて村の中へと入っていった。
▽
村に入り、改めてドクの故郷であるカルフィス村を眺める。
カルケア山脈中腹に位置するこの村は、夏でも少し肌寒く、冬には雪が降る積もっているらしい。
初春である今は雪がまだ所々残っているが、至る所で新緑が目に入り、空気も澄んでいてとても気持ちがいい。
人口は500人程と決して規模は小さくはないが、種族柄か皆アットホームな雰囲気を感じる。
建物も皆似た様な造りになっており、茶色いレンガの様な色の壁と、赤褐色の屋根が坂に沿って建てられている。
ジョイに案内されて辿り着いたのは、村の中でも少し大きめの石造りの建物だった。
ここが村長の村であり、ドクの実家でもある。
そう。なんとドクは村長の息子さんだったのだ。
俺がその事実に驚いていると、横からジョイが
「巫女である私の婚約者なんでしからそれくらい当然でし。というかそれぐらい察せないとは、お前は中々頭が悪いでし」
とけなしてきた。
すぐにドクに頭をはたかれていたが、特に反省した感じはない様子。
そんな彼女に呆れつつ、俺たちはいよいよドクのお父さんにご挨拶することとなった。
「この度は、遠い所からようこそおいで下さいました。私が村長のプロと申します。こっちが嫁のフェスです。愚息がいつもお世話になっています」
案内された応接間に入ると、そこにはすでにこの村の村長夫妻が待っていてくれた。
開口一番から腰の低い人物の様だ。
俺は思わずドクとプロ村長を見比べてしまった。
そんな俺を見て、ドクは苦笑しつつ答える。
「ありゃ余所行きの姿だよ。いつもは俺と大差ねぇさ」
なるほど。
たしかに村長も中々ガタイがよく、ドクと雰囲気も似ている気がする。
俺が然程緊張することなく過ごせているのも、そのおかげかもしれない。
村長婦人であるフェスさんも優しく微笑みながらこちらを見つめてくるが、悪意の欠片も感じない。
一体どんな環境で育ったら、こんな人物になるんだろうか。
そんな他愛もないことを考えつつ、俺たちは現在この村に起きている問題について話題を移した。
▽
一応話はちゃんと最後まで聞いたのだが、ちょっとプロ村長の話が長くて難しかったので簡単にまとめてみようと思う。
約500年前、この国には魔王が存在したらしい。
魔王について、その誕生や目的なんかについては詳しくは分かっていないようだが、彼は全ての人間を殺戮することを望んでいたようだ。
当時この国も複数の小国に分かれていたようだが、魔王に危機感を感じた各国のトップが互いに手を取り、魔王の討伐に打って出る。
しかし数で攻めようにも、魔王は殺した相手の魔力を吸収する力を持っているため逆効果。
そのため、それぞれの属性に特化した8人の魔法戦士を用意し、魔王の下に送り込むことになった。
当時魔王の存在を危ぶんでいた大精霊たちも彼らに加勢し、見事魔王は討伐される。
しかし魔王の魔力は余りにも膨大で、そのまま消滅させてしまうと魔力の暴走により大陸が無くなる危険があった。
そのためその力を8つに分け、それぞれの戦士が精霊と共にそれを封印し、その一族が現在まで守護し続けてきたらしい。
その戦士の一人であったのが、ドクたちのご先祖様である銀狼族だったそうだ。
戦士たちには精霊の強い加護が施されていて、ドクたちにもその名残が残っているそうだ。
「その名残の1つが、私の【巫女】というスキルでし」
巫女というのは、職でもありスキルでもあるらしい。
精霊からのお告げを聞き、皆に伝える。謂わばパイプ役だな。
先代の巫女が亡くなった後、新たに生まれた子供の中に必ずそのスキルを持つものが現れるそうだ。
しかし10年ほど前から、その封印の結解の効果が弱まってきているらしい。
というか、魔王の欠片の力が封印の力を上回り始めてしまっているようなのだ。
魔王の欠片は、周囲の魔力を次々と吸収しその力を強めていく性質を持っている。
封印によってそれもかなり抑えられてはいたが、500年という長い年月をかけてゆっくりと力を蓄えて来たのだろう。
「そんな時、巫女である私に大精霊からお告げがあったんでし」
そう言って、彼女は徐にドクの方へと視線を送る。
「それが、ドクがこの村を出ることのきっかけにもなったんでしよ」
最近めっきりなりを潜めているペットボトルですが、カルフィス編では頭角を現してくる予感がします。
お楽しみに。




