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ドクの決意

「えっと……おれ?」


 思考が追い付いていない俺に、ジョイが追い打ちをかける。


「そうでし。お前が来なければかなり危いところだったでしけど、間に合ってくれたみたいで良かったでし。ドク、よくやったでし」


 ジョイの言葉に、全員がドクへと振り向く。

 すると当の本人も、驚いて固まっている。

 しかし俺たちに視線に気づいたのか、慌てて話し出す。


「ちょ、ちょっと待て皆。俺は別にケイトをここに連れてくるためにここへ一緒に来たわけじゃねぇ! いや、連れてくるために来たんだが、そうじゃなくてだな――」


 ドクが珍しくバタついている。

 そして上手いこと伝えられないと諦めたのか、ジョイに食いつきだした。


「おいジョイ、どういうことだ!? 俺はケイトを連れて来いなんて言われた覚えねぇぞ!」


 そんなドクに、ジョイはも当然の様に答える。


「そりゃそうでし。言ってないんでしから」


 その言葉に、皆ポカンと口を開け固まる。

 

 ……一体どういうことなんだろうか。


 しばらく皆の間に流れていた沈黙であったが、ドクが青筋を立てながらそれを破る。


「ジョーイーッ!! てめぇ! そういう訳の分かんねぇ話の伝え方するなって昔から――」


 とジョイに掴みかかりそうなドクをアンナが抑える。


「まぁまぁ抑えろドク。とりあえず話は村に着いてからでいいんじゃないかい? いつまでもこんなところに留まっているのはマズい」


 アンナの言葉に、どうにか気を鎮めるドク。

 周りでは先ほどからモンスターの唸り声が聞こえてきている。

 確かにここにいるのはマズそうだ。





 体的には少し休息をとれた俺たちは、そのままカルフィス村へと向かうことに。

 ジョイは身体は幼女だが、流石は銀狼族。

 しっかりとした足取りで俺たちを先導してくれる。

 それに比べて俺は……


「……ごめん、ドク」


 結局ドクにおぶられている。

 途中出来るだけ留まらないようにと強行軍を行っているため、俺がついて行けなくなってしまったのだ。

 そんな俺に、ドクは言う。


「気にすんな。こんなことになっているとは思ってなかったんだ。俺も悪かったな」


 ドクが悪いわけではないだろうに。

 カッコいい奴である。


「それにな、俺も少し話したいことがあったからよ。面と向かっては話にくいと思ってたから、丁度良かった」


 なんだろう。

 さっきジョイが言っていたことについてだろうか。



「俺な、多分今回の旅がお前たちと出来る最後の冒険になると思う」



「……え?」


 ドクのいきなりの告白に、思考が固まる。

 しかしドクは構わず話を続けた。


「ここに来る前、街で俺の村に行くってなった時の話覚えてるか?」


 ドクの言葉に、俺は返事を返せない。

 思考が上手く回ってくれない。


「その時、俺一度断っただろう。あれだよ」


「……」


「俺よ、実は故郷から飛び出してきた口でな。ガキん頃からジョイと結婚するよう言われ続けて、このままここで一生を終えなくちゃいけねぇって言われてるみたいで、なんか我慢できなくなっちまったんだ」


 ……ドクの幼少期。

 何となく想像がつく。


「最初は止めてた周りの大人も、途中から呆れたのか何にも言わなくなってな。それである日、思いきって山を下りたんだ。今まで村と周りの山のことしか知らなかったからよ、すげぇ感動したことを今でも覚えてる」


 俺も初めて異世界に来た時、初めて街に着いた時、初めて仲間が出来た時……。

 ドクも同じ気持ちだったんだろうか。


「そこからは色々あったぜ。ギルドに登録したり、仲間と冒険したり、そんでそいつらと騒いだりケンカしたり。ほんと色んなことがあったよ」


 ドクが今まで歩んできた人生を振り返っている。

 なんだか、彼の走馬灯のように感じてしまった。


「そんな時に知ったんだよ。街の便所を掃除して回っている変な奴がいるってな」


 ……俺、だよな。


「俺も酔狂な奴もいるもんだと思って、面白半分で見に行ったんだ。まぁでもすぐに続かなくなるだろうと思ってたよ。だってそうだろ? 誰も便所掃除なんて皆が嫌がることを続けてぇとは思わねぇもんな」


「……俺はただ、自分に出来ることがそれしかなかったから」


「それでもだ。おめぇは毎日毎日嫌な顔せず便所掃除を続けていた。スライムに全部任しちまって自分は離れてりゃいいのに、律儀に最後まで付き合ったりしてよ。……でもそんなおめぇ見てたらな、なんか俺の胸ん中がむずむずしちまってさ。そん時気づいちまったんだよ。あぁ、俺は今、自分の嫌なことから逃げてるだけなんだってな」


 それが、街から飛び出してきたことなんだろうか。


「それからはまぁ、おめぇも知っての通りだ。ずっと気になっていた奴、って言ったらなんか気持ちわりぃが、そいつが絡まれてたから我慢できなくなって飛び出して。こいつと一緒に居たら俺も変われるんじゃねぇかって思って、嫌な便所掃除に付き合ったりしてな。まぁ最後は意地だったが」


 はは、とドクは笑う。

 ドクが考えていたことを、俺はこれっぽっちも知らなかったんだと気づかされる。


「まぁそれでここに来るって話になった時、まだ迷っていた心に区切りをつけたんだ。俺は、この村でジョイと結婚して村を守ろう、ってな。だからケイト、おめぇには悪いが俺の冒険は今回が最後になりそうだ」


 もう一度、ドクの口から聞かされる彼の決意おもい

 俺は一体、彼にどう返事をしたらいいんだろうか。


「まぁ勝手なのは俺だ。怒ってくれても、罵ってくれてもいいさ。ただまぁなんだ。最後ぐれぇは笑って別れてぇなとは思ってるよ」



 本当に勝手な奴だ。

 怒れるわけがない。

 罵れるわけがないじゃないか。


 ……でも、笑ってやることも今の俺には出来そうもない。


 俺はいつの間にか歪む視界を、ドクの背中で隠す。

 俺の背中に、横に並んでいたアンナの腕の感触が伝わってくる。

 その向こうでは、ゆっくりとした足音に紛れて、ナーシャの少し鼻をすする音も聞こえてきた。


 俺たちはそのまま言葉を交わすことなく、カルフィスの村へと進んでいった。


いつもご愛読いただきありがとうございます。

本日初レビューをいただきました。

本当に感謝の念に堪えません。

皆さまからのブクマ・ご評価にいつも励まされながら執筆させていただいております。

拙作では御座いますが、これからも応援のほどをよろしくお願い致します。

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