銀狼族
今回も少し説明入ります。
俺たちがスキルについて色々盛り上がっていると、2時間ほどでスライムたちがぞろぞろと帰ってきた。
なんか俺たちだけ楽をしているみたいで申し訳ない。
帰ったら一杯ペットボトル食わしてやるからなー、と撫でてやると、ブルブルと興奮しだすスライムたち。
10匹ともなると、中々壮大な絵面だ。
スライムたちが掃除を終えたお便所に目をやる。
掃除前は臭気と汚物で表現し辛い光景だった場所が、まるで別世界のように澄み切っていた。
再程まで死にかけていたドクも、今では完全に復帰している。
「おぉ! 息が出来るって素晴らしい!!」
ドクの価値観が変わりつつある。
まぁいいか。
掃除を(スライムが)終えた俺たちは、一度昼食を摂りに近くの食堂に入る。
そこでドクが、今までの遅れを取り戻すかのように魔法について話し出した。
「おっし。じゃぁ昼飯の間は魔法について教えてやるぞ」
「にゃはぁ。食事中ぐらいゆっくりすればいいのに」
「馬鹿野郎! 午後の掃除になったら俺はまた使いもんになんねぇんだ。今しかねぇじゃねぇか!」
すごく力強く話しているが、言ってて悲しくならないんだろうか。
とは言え魔法については是非教えてもらいたいので、ドクに先を促す。
「じゃぁまずは魔力の属性についてからだな。まず属性の種類には、火・水・土・風・光・闇・氷・雷・木・時空の8つと無属性を合わせた計9つがある。無属性って言うのは生き物全てが持っている属性だ。これを体外に放出、属性変換し、変換された魔力に方向付けをしてやることで魔法となって発現する」
おぉ、分かりやすい。
「あれ? でも俺のペットボトルの魔力は確か無属性なんじゃ……」
「そうだな。確かにこの属性変換ってのは必ずしも必要じゃねぇ。ただ属性にはそれぞれ相性の良い方向付けがあるんだ。火属性なら攻撃の方向付けと相性が良く、効果が高くなるっていう具合にな。だが無属性にはこれが無い。というか、全ての方向付けと相性が悪いとすら言える」
なるほど。だからわざわざ無属性で発動させる意味が無いわけか。
「でだ。個人の属性の相性ってのは、この属性変換時の効率の良さのことを言うんだ。相性の良い属性ほど、変換するときの魔力の損失が少なく、変換速度が速くなる」
「へ~。じゃぁドクは氷属性への属性変換の効率がいいってことなんだ」
「あぁ。俺は氷属性にならロスもほぼ無く、速度も速えぇ。他の属性も出来なくはないが、ロスが大き過ぎて使いもんになんねぇんだ」
なるほどなぁ。
他の2人はどうなんだろ。
「私は火属性なら何とか使えるねぇ。といっても、魔力総量が少ないから、火種とか生活魔法レベルさね」
とアンナ。
「ナーシャは?」
「私は闇だにゃ。まぁ私も総量不足で大したことは出来にゃいけどにゃー」
なるほどなるほど。
それぞれちゃんと相性の良い属性は存在するんだな。
「相性についてはこんなもんだな。あとは魔力総量についてだ。これは正確には、魔力の吸収速度・保持量・瞬間放出量の3つに分けられるんだが、この3つは大抵比例して大きくなるから3つ合わせて魔力総量と呼んでるんだ」
ふむふむ、つまりゲームで言うとこうか。
魔力の吸収速度が、外部から魔力を吸収して体内に取り込む速度。つまりMPの自然回復速度。
保持量はそのままMPの最大値。
瞬間放出量は……何だろう。水を出す時のホースの径の大きさとかかな。
「でだ。これらを調べるための道具があるんだが……これはかなり高価なもので人生に何度も使うもんじゃねぇから、大抵は冒険者ギルドみたいなでっかいギルドに置かれている。もし興味があるんなら後でいってみるか?」
うーん、どうしよう。
めちゃくちゃ行きたい! けど――
「それはやめておいた方がいいだろうねぇ。ケイトの魔力総量がバカみたい多いことは分かっているんだ。騒ぎになるのが落ちさ」
俺の思ってたことをアンナにも指摘される。
だよなぁ。
折角この街も少しずつ住みやすくなってきたのに、また悪目立ちして白い目で見られたくはない。
俺が落ち込んでいると、ナーシャがある提案をしてきた。
「にゃら、ドクの村で調べてもらったらいいのにゃ。あそこにゃら、ケイトの秘密がバレても問題なさそうにゃ」
えっと、どういうことだろう。
俺の疑問にアンナが答えてくれる。
「銀狼族っていうのは、元々一族の結束が強いことで有名なんだ。私は話で聞いただけだけれど、一度仲間と決めた相手のことは絶対に裏切らない、義に厚い一族らしいよ。だけど、確かあそこの村は他種族は入れないんじゃなかったかい?」
アンナの問いに、ドクが答える。
「いや、正確には違う。確かに排他的な部分もあるが、それは仲間以外に対してだ。だから、俺がおめぇらを招けば問題無ぇ。無ぇんだが……」
ドクの態度が今一つ煮え切らない。
どうしたんだろう。
ひょっとして……。
俺は恐る恐るドクに尋ねてみる。
「もしかして……俺たちのことを村に招きたくない、とか?」
するとドクは、気まずそうに答えた。
「……あぁ」
うわぁ。ちょっとショックだ。
そりゃまだ会ってそんなに時間が経ったわけでも無いから、仕方が無いのかもしれないけど……。
ショックを受けている俺をみて、ドクが慌ててフォローし始める。
「あっ! い、いや、おめぇらを信用出来ねぇとかそういうことじゃ決して無ぇ。そうじゃねぇんだが……」
ドクの言葉に安心するも、やはりドクの態度は気になってしまう。
何かほかに招きたくない理由があるんだろうか。
しかししばらく悩んだドクは、意を決したようにこちらに向き直った。
「そうだな。そろそろ良い機会なのかもしれねぇ。……よしわかった! じゃあこの仕事に片ぁ付いたら、俺の村に行ってみるとするか!」
明るく俺たちを誘ってくれたドク。
その顔はどこか寂しげにも感じられたが、ドクの態度が俺たちにそれ以上の追及をさせることをためらわせた。
結局俺たちはそのままこの話を終えたのだが――
その理由を無理にでも聞いておけば良かったと、俺は後に後悔することとなった。




