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仲間

 ナーシャに俺が異世界人であることがバレていた。

 何故バレたんだろう。

 俺が不思議に思っていると、ナーシャがそれに答えてくれた。


「そんなの、さっきまでのケイトの行動見てたら誰でも分かるにゃ! その年で常識は全然知らにゃいし、変なスキル持ってるし、何より化け物みたいにゃ魔力持ってるし。気づかにゃい訳にゃいにゃ!」


 ……俺のせいらしい。

 ナーシャの横で、確かにと頷くドクと苦笑いのアンナ。

 あ、ドクも気づいてたんですね。


「まぁ仕方が無いねぇ。ケイトが二人に話したいって言っていたから黙っていたけど、まさか本人に自覚がないとは思わなかったよ」


 俺を見て呆れるアンナ。

 取り敢えず何か答えておこう。


「えっと……ごめんなさい?」


 俺の答えに青筋を立てるアンナ。 

 要らん事言うのはやめておこう。

 

 そんな俺たちを見て、ドクが笑いながら話す。


「まぁ俺たちは誰にも喋ったりしねぇから安心しな。それよりもさっきのナーシャの提案だが、どうするつもりだ?」


 そうだった。異世界人バレのことで忘れていた。

 さて、どうしたものか……。


 皆が悩んでいると、アンナが徐に口を開く。


「まぁスライムについてはそんなに焦る必要は無いんじゃないかい? この街にはケイトがいるんだから、すぐに広める必要も無いだろうさ。だけど、この子が迂闊な行動をして異世界人だとバレないかの方は確かに心配だねぇ」


 もうこの子・・・扱いである。

 まぁその辺りは自分でも自信は無いなぁ。


「それにゃら、私たちがケイトにこの世界の常識を叩きこんでやればいいのにゃ。ケイトの行動については……どうしようもにゃいから、みんなで監視するしかにゃいにゃ」


 どうしましょう。

 俺の子守役が3人に増えそうです。

 ドクとアンナの特に異存は無いらしく、うんうんと頷いている。

 ……ご迷惑をおかけします。


 そういう訳で、俺たち4人はこれからしばらくの間行動を共にすることとなった。

 期限は俺が常識を覚えて、迂闊な行動をとらなくなるまで。

 最後にアンナが、そんな日がくるのかねぇ、と呟いていたことがとても印象的でした。


 みんなに迷惑を掛けることになってしまったが、期せずしてドクとナーシャを仲間にすることが出来た。

 二人とも口では仕方が無いなーなどと言ってはいるが、全然嫌な視線は感じなくて安心したよ。

 もちろん俺もしっかり出来るよう頑張るつもりだけど、とにかく今はこの3人との間の空気が心地良いんだ。

 

 気付けば俺は、二人の前でも普通に話せるようになっていた。


 こうして俺は新たな目標と仲間を手に入れ、ホスピティの街まで戻ることとなった。







 翌日の朝。

 今日から俺たちは街のお便所の大掃除を始める。

 最初は俺たち2人でやるつもりだったんだけど、ナーシャが自分たちも参加すると申し出てくれたんだ。

 横のドクはもの凄く嫌そうな顔をしていたけど。


 そして俺たちは今、最初の掃除場所へと集まっている。

 俺とアンナとナーシャはいつも通りだが、ドクの顔色がすこぶる悪い。

 そこまで無理をしなくてもと思ったんだが――


「いや、お前たちと一緒にいるって決めたんだ。男に二言はぇ」


 と変な意地を見せつけられた。

 そんなドクを見てミーシャが


「にゃははー。まったくドクは情けにゃいにゃー」


 とドクをいじるものの、ドクはジロリと睨むだけでいつもの威勢が見られない。

 本当に大丈夫なんだろうか。

 というか、ナーシャも獣人なのに、なんでそんなに平気そうなんだ?


「私は【知覚遮断】のスキルを持ってるからにゃー。今は嗅覚を遮断してるのにゃ」


 なるほど。ナーシャは知覚を自由に遮断出来るらしい。

 えらくピーキーなスキルもあったものだ。

 恨めしそうにナーシャを睨むドクをなだめつつ、俺たちは早速掃除に取り掛かる。


 アンナ達に隠してもらいながら、スライムをどんどん放っていく俺。

 

「みんな。ここの汚れを全て消化してくれ。ケンカしないで協力するんだぞー」


 俺の指示を受けて、お便所に散っていくスライムたち。

 昨日結局集まったスライムは計9匹。

 最初の1匹を含めて全部で10匹だ。

 外套の裏にポケットを作ってもらってそこに入れているのだが、中々嵩張って大変だ。

 まぁ心強い仲間なんだから、それくらいの苦労は甘んじよう。


 スライムたちを待っている間は、俺の常識学習の時間だ。

 この国のことから生きる知恵的なものまで、色々と学んでいく。

 ドクが元気なら魔法についても教えてもらいたかったんだが、まぁ無理はさせられないな。

 

 教えてもらった中で印象的だったのが、スキルについてだ。

 

「スキルっていうのは生まれにゃがらにその人が持つ力だけど、その効果は成長と共にその効果が変わっていくのにゃ」


 ナーシャの説明をアンナが引き継ぐ。


「効果が変わるというか、使い方をちゃんと理解出来るようになるって言った方が良いかもしれないねぇ」


 例えばアンナの【安心感】のスキル。

 アンナは幼少期、このスキルを漠然と周りに安心感を感じさせるスキルだと思っていたらしい。

 しかし成長と共にその効果の強弱がつけられるようになり、今では影響を与える対象を選べるようになったそうだ。

 

「俺のスキルもそうなのかな?」


 俺の【人見知り】と【ペット創造】スキル。

 後者の方は今以外の使い方はちょっと考えつかないけど、前者の方は何となく思い当たることがある。


「そういえばこのスキルを手に入れてから、人の視線に敏感になった気がするんだけど、これも操作出来る様になるのかな?」


 俺の疑問にアンナが答える。


「そうだねぇ……例えば、その力を索敵なんかに使えるとかなり便利かもしれないねぇ」


 おぉなるほど。

 敵の視線を感じ取って、「そこにいるのは分かっているんだ」とか言ってみたい。

 あとは……あそうだ。


「あと冒険者ギルドで騒動があった時、人の悪意? みたいに視線に込められた感情も感じ取れた気がする」


 あの体験は中々きつかったが、あれも何かの役に立つだろうか。


「それはすごいにゃ! もしそれを正確に読み取れるようににゃれば、相手の感情が解るようににゃるのにゃ。そういうスキルも聞いたことがあるから、不可能では無いはずにゃ!」


 おぉ、そんなスキルもあるのか。

 ナーシャの答えに少しワクワクしてしまう。

 完全に外れスキルだと思っていたこの【人見知り】だが、使い方次第では化けてくれるかもしれないぞ。

 

 しかし、自分の可能性に舞い上がっている俺であったが、アンナに釘をさされてしまう。


「確かにそれが出来ればすごいことだけど、だからって絶対に無茶なことするんじゃないよ! この調子であんたを放っておけば、この前みたいな場所に自分から首を突っ込んで行きそうでハラハラしちまうよ」


 失礼な。 

 いくら俺でもそこまではしないよ! ……多分。


 俺の曖昧な態度に、はぁとため息をつくアンナ。

 ナーシャも横で楽しそうに笑っている。

 

 俺がみんなから巣立てる日は、まだまだ先になりそうだ。


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