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スライムの飼い方

今回も少し説明入ってます。

「来たみたいだねぇ」


 俺たちがドクの話を聞いていると、待望のスライムが現れた。

 しかしアンナ達3人はその場から動こうとしない。


「俺たちが動くとスライムが逃げちまうかもしれねぇからな。念のため、お前みたい戦闘の素人の方が向こうも警戒しねぇだろ」


 なるほど。

 でもならアンナなら大丈夫じゃないか?

 と思ってアンナを見たが、微笑みながら首を振って、行ってこいと後押ししてくれた。

 ではではお言葉に甘えて、いざ。


 俺が前みたいにペットボトルを創造しつつ、どんどんスライムに食べていいよと与えていく。

 以前大量に創造して安全ラインは分かっているから、その量までは遠慮は無しだ。


 次々渡すペットボトルを、ジュクジュクと消化してくスライム。

 俺が食べさせ終わると、スライムはおねだりするかの如くすり寄ってきた。

 よし、餌付け完了だ。


 スライムが懐いてくれたので振り向く。

 するとそこには口をあんぐり開けて固まるドクと、苦笑いのアンナと、腹抱えて爆笑しているナーシャの姿が。

 控えめに言ってカオスである。


「なんなんだよ……なんなんだよ! お前の魔力どうなってんだ!?」


 と叫び出すドク。


「私はもう見慣れたけど、やっぱりあんたは自重ってのを覚えるべきだねぇ」


 と諭すアンナ。


「にゃーっははは。意味わかんにゃいにゃー! 化け物にゃ。魔力の化け物がいるにゃー!」


 と転がるナーシャ。

 

 またやってしまった。

 前回のリプレイをしただけなんだが……。


 とりあえず俺はスライム2号用のペットボトルを出してやり、中へ誘導する。

 スルスルと素直に入ってくるスライム。

 するとそれを見ていたドクが、何かを納得したように話し出す。


「……なるほどな。なんで最初に見たペットボトルに魔力が無ぇのかと思ったてたが、スライムが吸収しちまってるわけか」


 なんと、そんな事実が。

 確かに中のスライムも心なしか嬉しそうである。


「まぁ納得いかねぇことだらけだが、とりあえず捕まって良かったな」


 ドクがそう言って俺の肩を叩く。

 うん、触られても平気だ。


「そうだねぇ。でもまぁケイト。あんたは帰ったらまたお説教だよ! あれほど行動には注意しろと言ってるのにあんたはまたそうやって――」


 うへ。またアンナが説教モードだ。

 いいじゃないか、ナーシャとドクには話すって決めているんだし。

 と思ったりもするが、俺の行動が考え無しなのは否定できないので甘んじて受けておこう。





 そんな感じでスライムの捕獲に一息ついていた俺たちだが、ナーシャがふと思い出すようにして話し出した。


「そう言えば、スライムって魔法に滅茶苦茶弱かったんじゃなかったかにゃ? にゃんであのペットボトル食らって平気にゃのにゃ?」


 その発言に、固まる一同。


 確かに。

 あれ、なんでだ?


「もしかしたら、攻撃魔法に弱いだけで、魔力自体は逆に好物なのかもしれねいねぇ」


 アンナの意見に唸るドク。


「マジかよ。もしそれが本当だとしたら一大発見じゃねぇか! いやでもまだケイトの魔力が特別だって線も――」


 とぶつぶつ考え出すドク。

 どうやら彼は魔法のことになると、ちょっと周りが見えなくなるらしい。


 しばらく何か考えていたドクだが、急に立ち上がり俺たちに言う。


「おし! うじうじ考えてても仕方が無ぇ。早速スライム捕まえて実験しようぜ!!」


 急にやる気に満ち溢れだしたドク。

 皆彼の様子に呆れているが、自分たちも気にはなるので付き合うことになった。

 




 スライムを待つまで時間があったため、俺は魔法を覚えたい旨をドクに伝えた。

 するとドクも快諾してくれて、再びドクの魔法講座が始まることとなった。


「じゃぁまずこの後の実験に関することから教えるぞ」


 楽しそうに話しだすドクに、俺はコクリと頷いて返す。


「まず魔力って言うのは、生き物なら誰しも持っているもんなんだ。でもその総量だったり相性だったりで、魔法が使えるどうかが決まる」


 なるほど、魔力が多くて相性のいい属性が無いと使えないのか。


「この総量や相性を調べる方法については、まぁ今は置いておこう。それでだ。この魔力を使う際には、魔力の属性とは別に、方向性を決めてやる必要があるんだ」


 方向性?


「つまり攻撃したいのか、防御に使いたいのか、それとも相手を回復させたいのかって感じの用途決めだな」


 なるほどー。

 ゲームみたいに呪文を唱えて勝手に発動って訳じゃないのか。


「それで俺は、スライムがこの方向性の種類によって魔力を好き嫌いしてんじゃねぇのかって考えているわけだ」


 攻撃魔法は死んじゃうけど、他の魔力ならいけるんじゃね? ってことか。

 でもどうやって試すんだろう。


「うっ。ま、まぁそれは頑張って殺気を抑えてだなぁ……」


 そこは完全に無計画だったようである。

 そんなドクを見ていたナーシャが、微笑みながらアドバイスをする。


「ドク、そういう時は愛にゃ! 愛をもってスライムに接すれば、スライムもきっと応えてくれるはずにゃ!」


 なんとも黒い笑みだ。

 しかしドクも気づいていないのか、「あ、あいか~」とか言っている始末。

 まぁ面白そうなので放っておこう。

 




 しばらくしてスライムが再び登場。

 ドク以外の俺たち3人は、スライムを刺激しないよう待機。


 ニコニコと目を細めて微笑みながらスライムに近づいていくドク。

 俺たちは吹き出しそうになるのを頑張って堪える。


 微笑むドク。

 逃げ出すスライム。


「ぶふっ!!」


 みんな我慢できずに爆笑し始めた。


「お、おめぇらぁ……くっそ、やってられるか! 何が愛だ! ふざけんな!」


 今更だなぁ。

 アンナも流石にあきれ顔だ。


 その後も何匹かスライムがやって来ては逃がしてを繰り返し、結局ドクの成果は何も上がらなかった。

 流石に俺たちも痺れを切らしたため、俺が何匹か追加で捕まえた奴で試してみることになった。


 落ち込むドクを励ましつつ、まずは防御魔法から。

 スライムから離れた位置で魔法を発生させ、食べていいよと言ってやるという流れだ。


「アイスシールド!」


 反応なし。

 ちなみに詠唱は特にいらないらしいが、口にした方がイメージしやすいとのこと。

 次は回復魔法。


「アイスヒール」


 反応なし。

 特に逃げ出したりもしないが、進んで取り込む気配は全くない。


 その後もエンチャントや阻害系といった色んな種類を試すが、全く効果なし。


「はぁ、はぁ、くっそ~。全然だめじゃねぇか!」


 全くと言っていいほど効果が無く、周りにあたりだすドク。

 気持ちはわかるが落ち着こう。


「というかそもそも、ケイトのペットボトルには何の魔力が込められているんだにゃ? その属性と方向性が分かれば解決しそうだにゃ」


 ナーシャの言葉にハッとするドク。

 最初に思いつきそうなものだが、彼はどうやら難しく考えすぎていたようだ。


 しかし、俺のペットボトルには何の魔力が込められているんだろう。

 ペットボトルを創るとき、なにを考えているか……。

 いや、ペットボトルを創る時って、ペットボトルを創ろうとしか考えないよね普通。


 そのことをドクに伝えると――


「なんてこった。それじゃケイトは、魔力のことを意識せずに魔力を発生させてるってことじゃねぇか。つまり何も考えずただたれ流せばいいってことか!!」


 と顔を輝かせながら立ち上がった。

 そしてスライムに近づき、梃子摺りながらもどうにか成功させた。

 スライムがドクの下に近寄り、嬉しそうにしている気がする。

 おそらく魔力を吸収しているのだろう。


 その後アンナとナーシャも試してみて、一応は成功させた。

 ただ、魔力の総量が少ないためか、スライムが懐くほどではなさそうだ。

 俺のペットボトルをアンナがスライムに与えるなど他の方法も試してが、結局俺に懐くだけでアンナ達には懐かなかった。

 結果、魔力の総量がある程度無ければ難しそうだが、逆に言えばそれさえクリアすれば誰でもスライムを飼えることが分かった。

 

 いやー、長かったけど無事に終わって良かった良かった。

 俺は一息ついて安心していたが、アンナが深刻な顔をして何か考え事をしている。


「アンナ、どうかした?」


 俺の言葉に気づき、答えるアンナ。


「いや、この事実をどうするべきかと思ってね。これって凄い事だとは思うんだけど、簡単に広めちゃまずい気がしてねぇ」


 そんなアンナの言葉にドクもたじろぐ。


「うっ、確かになぁ。街が綺麗になるのはいいけど、悪用する奴らも出てくんだろうなぁ。それを俺たちのせいにされちゃたまんねぇ」


 ……確かに。

 うーむ、折角俺が悪目立ちしなくなるいい機会だと思ったけど、それじゃぁ余計に悪化しそうだ。

 

 俺たちが悩んでいると、ナーシャがとんでも無いことを言い出した。


「じゃぁもういっその事、街の領主に直談判でもすればいいのにゃ。スライムの飼い方教えるから、それ用の法律作って私たちの事匿えってにゃ!」


 そんなナーシャの唐突な提案にドクが目を剥く。


「何言ってんだお前! そんなこと出来る訳ねぇだろ!」


「でもするしかにゃいにゃ! それにこのままじゃ、いつかケイトが異世界人だってバレるのも時間の問題にゃ! にゃら先手打って、でっかい貴族に守ってもらった方が良いに決まってるにゃ!!」


 確かにナーシャの意見も一理ある。

 というかすごく魅力的に思える。


 ……てあれ、今異世界人って。


「……なんで知ってるの?」


 俺の問いに、はっとするナーシャ。

 そしてこちらに向き直って可愛く一言。


「……にゃは?」


 そんなんじゃ誤魔化せません。

 どうやらナーシャ達に俺のことがバレていたようです。


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