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スキルと魔法

ちょっと説明回です。


 ギルドマスターからの依頼を受けた翌日。

 アンナと俺の2人は再び冒険者ギルドへ足を運んでいる。


 昨日スライムを新たに仲間にすることに決めた俺たちだけど、その後俺はアンナにあるお願いをしたんだ。


「ドクとナーシャを仲間に誘いたい?」


 一昨日冒険者ギルドで掃除を終えた後、彼らに言われたんだ。

 一度一緒に外の依頼を受けてみないかって。

 社交辞令かもしれないし、気を遣ってくれただけかもしれない。だけど――


「別にすぐって訳じゃないんだ。ただいつか、俺のことをちゃんと話せる仲間が増えたら嬉しいなって思ってさ」


 彼らは俺のことをその身を晒して守ってくれた。

 そんな彼らと腹を割って語り合える日がきたらいいなと、漠然と考えてしまったんだ。


「はー。知らないうちにどんどん立派になっちまって。なんだか巣立っていく息子を見ている気分だよ」


 年下の女性に息子扱いされる俺って一体。

 いや、紐ボーイである今の状況的に仕方が無いのだが。


「よし、分かったよ。またあいつらに会うことがあればその時誘ってみるとしようかね。まぁそんな急ぐこたぁないさ。もう少し、母と子の団欒を楽しもうじゃないか」


 そう言って俺の頭をがしゃがしゃ撫でてくる。

 これでは本当に立場が逆である。


 まぁそんなこんなで、その話はまた機会があればと言うことに。

 そして俺たちは今、スライム捜索ついでに何か簡単な依頼を受けるため冒険者ギルドに向かっていると言う訳だ。





 だったのだが……。


「よう! 2日ぶりだな!」


「にゃははー、2人ともちょうどいい所に来たにゃ」


 ギルドに入ると、少し粗野で元気な銀狼の男性の声と、明るくちょっと何か悪いことでも考えていそうな含みのある笑顔を見せる黒猫の女性の声が聞こえてきた。

 ドクとナーシャだ。

 ……早速出会ってしまいました。


 俺とアンナは顔を見合わせつつ、二人の下へと向かう。

 そして席に着くなりアンナが尋ねた。


「どうしたんだ二人とも。あんたらは別に固定パーティー組んでるわけでもないんだろう?」


「にゃは。私たちは今はどっちもフリーで、固定は組んでにゃいにゃ」


「あぁ。昨日ちょっとここのギルマスに呼び出されてよ。今日はその作戦会議って訳だ」


 なんと。この二人にもギルマスイベントが。

 しかし話を聞いてみると、原因は俺たち、というかあのお便所掃除らしい。

 

「ギルマスに、おめぇらがこの街の便所全部掃除させられることになったって聞いてよ」


「私たちもにゃんか手伝えないかにゃーって話ししてたんだにゃ。でも仕事が仕事だけにどうしたもんかにゃーって悩んでいたところに2人の登場にゃ。これはもう運命としか言いようがにゃいにゃ」


 にゃははーと天真爛漫な笑顔を見せるナーシャ。

 こんな無垢な笑顔を見せる割に、内では割とダークなことを考えていそうである。


「ま、運命かは置いとくとしてだ。どうだ? なんか力になれそうなことはねぇか?」


 ドクの提案にアンナと目を合わせ頷く。


「あぁ。私たちもあんたたちにいつか声を掛けようとは思っていたんだ。まぁこんなすぐにとは思っていなかったが、これも良い機会なんだろうね。よろしく頼むよ」


「お! マジでか。よっし、ならなんでも言ってくれ。便所掃除以外ならなんでもするぜ!」


「にゃは。ドクは頑丈だから、肉壁でも人柱でもなんでもござれにゃ。任せるのにゃ!」


 と胸を張る二人。

 その後言い争いを始める二人。


 そんな二人に肩をすくめつつ、俺たち4人はスライム捜索へと向かうこととなった。







 街から出てしばらく歩く。

 ここは街の西の街道を真っすぐ1時間ほど歩いた場所。

 ちょうど俺たちがこの街に来た道とは反対に位置する。

 今日はこの辺りでスライムを探すこととなった。

 

 ……しかし、皆何故か昼食の準備をし始めてしまう。


「スライムってのは敵意に敏感でな。俺たちレベルの奴が殺気垂れ流してると寄ってこねぇんだわ。だけどな、よく休憩中なんかにはひょっこり顔を出したりするんだよ」


 なるほど。

 確かに前スライムに会った時も、大量のペットボトルを埋めている時だった気がする。

 

 俺も昼食の準備がてら、ペットボトルからスライムをだしてやる。

 もうペットボトルのことについても二人には解禁するつもりだ。

 すると、早速ミーニャが目ざとく気づいてくれた。


「にゃんにゃのにゃその入れ物。ガラスみたいだけど、ちょっと違うのにゃ」


 俺はアンナに視線を送り頷き、ナーシャ達へ俺のもう一つのスキルについて説明してもらう。

 2人と一緒にいるのはもう大分平気になったけれど、会話はなかなか。

 出来ても単語レベルだから、アンナに話してもらった方が早い。

 

 アンナの話を聞き興味津々のナーシャに、俺は先ほどのペットボトルを渡す。


「にゃにゃ! めちゃくちゃ軽いにゃ! それに落としても割れにゃいのにゃ。私もこれ欲しい!!」


 目をキラキラさせながらお願いしてくるナーシャ。


「えと……」


 俺が困ってアンナに視線で尋ねると、アンナも苦笑しながら答える。


「まぁ何か布でも巻いてバレない様にするならいいんじゃないかい? ただ絶対に見せびらかせたりするんじゃないよ」


 少しドスの利いた声で脅すアンナ。

 そんな声を聴きビビりつつも、好奇心の方が勝ったのたペットボトルを要求してくるナーシャ。

 様子を見ていたドクも、少し気まずそうにしつつ、俺もいいかと尋ねてくる。

 俺は笑顔で頷いてやり、二人のペットボトルをボフンッと出してやった。

 するとその様子を見ていたドクが、目を見開きながら聞いてくる。


「おいおいなんだよそれ。滅茶苦茶魔力が濃いぞ。それに全然魔力が散っていかねぇ……それもそのスキルのせいなのか?」


「えっと……?」


「あぁ、そうか。おめぇらはあんま魔法には詳しくねぇんだったな」


 確かに、アンナは生活魔法程度だって言っていたし、俺に至ってはずぶの素人だ。


「じゃぁ簡単に説明してやるよ。スキルってのにはな、アクティブとパッシブがあるだろう?」

 

 ドクの問いに頷く。

 俺の場合人見知りがパッシブで、ペット創造がアクティブだな。


「そんでそのパッシブってのは、極端に言ってみれば呪いみたいなもんだ。特別なルールに縛られるっつうか、そいつに一種の強制力が掛るわけだな」


 確かに。人見知りスキルがついてから、やけに人の視線に敏感になっている気がするし、悪意も鮮明にわかる気がする。


「それに比べてアクティブスキルってのは、言ってみれば一種の魔法だ」


「魔法!?」


 思わずドクの言葉に喰いついてしまった。

 だって魔法だぞ魔法。

 俺、知らないうちに魔法が使える様になっていたらしい。


「お、おう。だからって他の魔法がすぐに使える訳じゃねーけどな」


 なーんだ。残念。


「おい。なにあからさまに落ち込んでんだよ。そんな簡単に魔法を習得出来たら苦労しねぇっつぅの」


 まぁドクも幼いころから習ってやっとだもんな。

 仕方が無い。


「話しを戻すぞ。でだ、さっきケイトがやったスキルは、魔力を消費してそのペットボトルとかいうやつを生み出したと思うんだが……ケイトは魔法攻撃で生み出された水と普通の水の違いは分かるか?」


 俺はフルフルと首を横に振る。


「魔法攻撃で生み出し水は、魔力をパスにして術者と繋がっている状態なんだ。術者はそのパスを通じて水を動かし敵を攻撃する。その間魔力は流しっぱなしのことが多いな。術者から離れれば離れるほど、魔力を物質に留めるのが難しいから」


 なんか難しい話になってきたぞ。


「そして用途を終えたらパスを切り、魔法で生み出された水から魔力が散り、ただの水になるって訳だ」


「えっと……つまり?」


「つまりだな。お前の魔力で生み出されたペットボトルだが、まずパスが途切れているはずなのに魔力が留まっていることがまず意味が分からねぇ。それからその留まっている魔力量も多すぎるんだ、桁違いにな。……俺の言いたいことはわかるか?」


 えっと、つまりこのペットボトルが超すごい魔法物質Xってことだろうか。

 おぉ、なんかすごいぞ。

 これ攻撃に使えたりしないだろうか。

 

 俺が一人で納得していると、ドクが苦笑しながら答える。


「……まぁ深くは詮索しねぇよ。とりあえず俺が言えるのは、そのペットボトルは無暗に人前に出すべきじゃねぇってことだな。気づくやつは気づいちまうからよ」


 あー、なるほど。

 ドクは俺が何者なんだって聞きたかったわけか。

 うーむ、俺は話してもいいと思うんだけれど……。

 アンナは何も言わないし、ドクもとりあえず納得してくれたみたいだし、まぁ今はいいか。


 とそこへ、とうとうあいつが現れた。

 今回の目的のスライム君だ。


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