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グラビティ コントローラー  作者: ぴっぴ
第1章 王立学園編
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第2話 パワーレベリング


 俺の能力を見たクリスは一人で納得して森の中に入って行った。結構危険な森なのだが彼女はそんな事を考えたりしない様だ。鼻歌なんぞを歌いながら森の中をズンズン進んでいる、まるで森の主かなんかのようだった。いや、本当に森の主かも知れない、あいつより強い奴を見た事無いからな。


 「なあクリス、お前この森の主か?」


 「何言ってるのよ、こんな美女が主な訳無いじゃないの!」


 「そうだよな。」


 「主じゃなくて、女王って言いなさいよ!」


 「主だったんかお前。」


 「だから女王だって。この森は私のもんだからね!」


 入学して1か月で危険な森を制圧したのかこの女は、なんて恐ろしい奴だろう。国王もビックリだろうな、自分の造った学園に山賊みたいな勇者がいる事を知ったら。


 「じゃあ私が獲物捕まえて来るから待ってなさい。」


 「へいへい。」


 あいつは森の中に凄い勢いで入って行った。一人残された俺は凄く心細かった。なにせ俺は学園最弱なのだ多分一般人と変わらない強さだ。狼とか熊とか出た食われるかも知れないのだ。そこで俺は木に登る事にした、俺は弱いが馬鹿では無いのだ。木の上であいつが帰って来るのを待つことにする。凄く心細く待っているとやがて森の奥からガサガサいう音が聞こえて来た。何か動物がこちらに来る様だ。あの女なら良いが熊とかだったら嫌なので息をひそめて木の上でじっとしていた。隠れる時の極意は動かない事だ、じっとして動かなければ近くに居ても見つかる事が少なくなる事を俺は知っていた。


 「どこに居るのよ?出てきなさいよ!」


 「ここだ、木の上だ。」


 「はいこれ!」


 「うお~!!!!!オークじゃないか!」


 勇者はボコボコにしたオークを持って帰って来た。もう瀕死の状態だ。


 「経験値にしなさいよ。クビをスパッとやるといいわ。」


 「・・首をスパッと・・ですか?」


 「はい。」


 女勇者はオークの頭を掴んで俺にオークの首を突き出した。多分俺に首を切れって事だろうと思う。俺は腰のナイフを抜いてオークの首に突き立てた。


 ブキィ~!!!!


 瀕死のオークが大声を上げて動き出す、俺のナイフ攻撃が浅かった様だ。俺はオークの返り血で血だらけになった。


 「うひ~!!」


 「何やってるのよ!いたぶると可哀そうよ。さっさと殺しなさいよ。」


 流石勇者、オークが暴れても平然とした顔で捕まえている。俺とはまるで違う、こいつの心臓はオリハルコンで出来ているのだ。やはり俺は入る学校を間違えたのだ、俺は絶対にこいつの様にはなれないと思った。それでも何とか俺はナイフでオークに止めを刺す事が出来た。


 「うげ~!・・・・・」


 「何吐いてるのよ!オークを殺すのは初めてだったの?」


 「うん、・・初めてだった。」


 「あんた本当にヘタレね。」


 「ああ、どうやらそうらしい。俺に冒険者は無理だ、今初めて分かった。」


 「何言ってるのよ、こんなもん慣れよ!慣れ!」


 一応こいつなりに慰めているつもりなのだろうが俺は魔物を殺すのに抵抗が有るので無理だ。首をスパッとやる事さえ上手く出来ないのだ。俺はやっぱり魚の屋台をやろうと思った。


 「ありがとうクリス、俺やっぱり露店で魚焼いて暮らすよ。それが俺には似合ってる。」


 「あんたどうやってレベル上げたの?」


 「スライム狩って上げた、あれなら血が出ないからな。」


 「ふ~ん、血が苦手なんだ。そうか納得だわ。そういう人は良く居るわ。待ってなさいよ又捕まえて来るから。」


 クリスはまた森の奥に飛び込んで行った、また何か捕まえて来る様だ。俺は仕方なしに又木の上に登ってクリスを待つ事にした。10分ほどでまたクリスが帰って来た、また大物を引きずっている様だ。


 「捕まえて来たわよ。」


 「またオークじゃないか。」


 「こっち来て手を出して。」


 気絶したオークの顎と頭の上に手を置かされた、俺の手の上からクリスが手を掛けて力を込める。


 「おい!これって・・」


 ゴグッっと言う鈍い感触と音が手を伝って届いて来た。気絶したオークは首を180度ねじられて絶命したのだ。俺の腕力では無理だがクリスの力なら軽いもんだった。


 「ひい~!!!!」


 「何騒いでるのよ!今度は血が出て無いから平気でしょ?」


 ナイフで首を切るのも嫌だったが、これも物凄く嫌だった。手に伝わる感触が強烈なのだ。クリスは勿論平気だった、やはり俺は勇者どころか冒険者にも向いていない事が分かった。


 「レベル上がった?」


 「お陰様で一つ上がった様だ。今はレベル4になった。」


 「この分なら1か月でレベル15位にはなるわよ。」


 「いや俺は今のままで良いよ。俺は冒険者とか無理だ、商人か役人になるよ。」


 「何言ってるのよ!さあ次行くわよ。」


 俺の意向は完全に無視されてクリスによって俺のレベル上げ作業は夕方まで続いた。俺のやる気の無さにクリスが本気で怒った様だった。人型の魔獣を狩る度に悲鳴を上げる俺を冷ややかな目で見ながらドンドン俺に止めを刺させていた。そして、何度か目のレベルアップの後で俺は隙をついて逃げ出したのだ。


 「もう嫌だ~!!!!」


 クリスから逃げ出した俺は滅茶苦茶森の中を走り回っていた、魔獣なんかより嫌なクリスから逃げる事だけを考えていた。そして茂みを抜けた所で俺は崖から転げ落ちていた。


 「うわ~!!!」


 10メートル程転げ落ちた俺は少し気絶していた様だ、落ちる途中でぶつけた所が物凄く痛かった。首を折らなかったのは運が良かったのだろう、だが猛烈に痛い。痛みの元である右足を見てみると変な方向に捻じれていた、完全に折れている様だ。これは不味い、崖を登れずに魔獣に襲われて死ぬ運命しか見えない。痛む身体を引きずって適当な木の枝と服を切り刻んで紐状にして、折れた足をまっすぐにして補強した。ここら辺の事は学校で習っていたので直ぐに出来たが、あいにく俺は治療薬も持って無いし回復魔法なんて勿論使えない。


 「完全に終わったな、思えば詰まらない人生だったぜ。」


 毒親に捨てられ、一人で何とか頑張って生きて来た。寝る暇を惜しんで勉強して王立学園に補欠とは言え入学する事も出来た。そして勇者のレベルアップが嫌で逃げ出したらこれだ。崖から落ちて右足が折れて身体中が打撲だらけで崖を登る事も出来ないのだ。その内魔獣が出て来て俺は食われて死ぬだろうな、クリスが俺を見つけて、助けてくれるなんて事は無いだろう。そもそも逃げ出した俺の事なんか追いかけても来ないだろうな、しょせん補欠入学のEクラスの落ちこぼれだしな。


 「早く魔獣でも何でも、出て来て俺の人生を終わらせてくれないかな~。」


 折れた右足と打撲した全身が痛いので、本気で早く死ぬ事を望んでいたのだ。生きててもどうせ屋台で魚を焼く程度なのだ、俺が人より良い人生なんて遅れる事は無いのだ。

 その頃クリスは、悲鳴を上げて逃げ出したヘタレを見て、家に帰ったのだろうと思い、自分ものんびりと学園の寮に帰って行った。崖の下に転落したコウは誰からも探される事無く夜を迎える事になる、彼に家族でも居れば捜索隊でも編成されるかも知れないが、彼は一人ボッチの人間だったのだ。

 



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