少女、賭け勝負、そしてトラウマ
「うわー、すっかり夜になっちゃった。コータ君まだいるかな?」
バイトが長引いてしまったハヤトがランク戦会場にやってきた。
「ランク場の最終時間は午後10時までって言ってたからまだいると思うけど。」
ハヤトはランク場の入り口の一階から二階に上がり、受付の女性軍兵に質問した。
「あの、機野コータという人、今試合会場にいるかわかりませんか?」
「機野選手でしたら現在21時半からの試合に参戦中です!」
受付の女性軍兵は抑揚のある声でハヤトに言った。
ハヤトは観客席の扉を開けて試合会場に入った。
「さあ、今日の試合もいよいよ最終試合となりました!左のコーナーの機野選手は今日初めてこのランク戦に参戦して1日でD級に上がりましたがS級2位のセオドア選手に敗北をしてE級に逆戻りしてしまいました。しかしこの試合で勝利を納めればまたD級に復帰できるという可能性を秘めたルーキーです!!対する右コーナーのルイス・グレイシー選手はC級10位の実力者です。彼の得意武器であるハンマーの餌食になった選手は数を知れません!!」
ハヤトは左側に立つ顔中傷だらけのコータと右側に立つコータの体の1.5倍くらいの大きさのハンマーを背中に抱える筋肉質な体に二メートル近くの身長のある黒人の大男が向かい合って立っているのを見た。
天井のモニターがカウントを始めた。
「5,4,3,2,1,ファイト!!」
モニターから試合のゴングが鳴る音が聞こえた。
「コータ君なんであんな顔中傷だらけなんだろう?」
「そりゃあ彼、1日中休みなく試合していたからね。」
ハヤトが独り言を呟くとハヤトが立つ会場入り口のすぐ右の座席に座るハクがその疑問に答えた。
「あ、平塚さん、こんばんわ・・・。」
ハヤトは一ヶ月、ハクの前隣りの席に座っていたにも関わらずろくに会話を交わしたことが無かったので気まずかった。