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試合、敗北、勝利、そして敗北

翌日は軍も学校も休みの休日だった。だが、もらったランク場の資料によるとランク場は年中無休で行われているらしい。

 コータはハヤトの作ってくれた朝食を素早く口に書きこみ、ランク場開館の9時に到着できるよう準備した。

  「ハヤトも暇なら見に来いよ。」

資料を見るとどうやら観戦は一般人にも許されているようだった。

  「ごめん、今日僕3時までバイト。バイトが終わったら見に行くよ。」

  「じゃあもう出るわ。また後でな!」

  「うん!」

 コータはハヤトのマンションを出て、ランク場に向かった。

 コータは既に昨日帰宅してすぐにランク戦の日程を全て対戦希望で埋めた。

 ただしE級ばかり来ても困ると思い、対戦希望者ランクという欄にD級とS級と記載した。


  会場に到着すると既に会場は人でいっぱいになっていた。

 どうやら今日完全休日なのはコータだけではないらしい。

  (来週にはアンドロイド対策チームへの抜擢が決まってしまうから、S級上位5人に入るために皆早く試合がしたくてたまらないんだろうな。)

  携帯を見るとすでに対戦希望者が3名もいたがいずれもE級だったのでコータは少し残念な気持ちになった。

  (まあ、初戦の相手はE級でも良いか。)

 コータはそう思って名前も知らない数人の対戦希望者から適当に選んで承認ボタンを押した。

 5分後すぐにコータの試合のアナウンスが聞こえた。

  「E級ランク1467番、機野コータ選手、E級ランク1387番、リアル・マード選手、試合会場1に来て下さい。」

  試合会場は全部で1から10の会場があった。このランク場は1番会場から4番会場。

  後2つの試合会場が基地内にあるらしい。

 コータは会場地下一階の選手準備室に行き、まず武器を選んだ。

  (確か戦闘用機械義足義手は勝ってもマイナスされちゃうから一般用を使うしかないな。)

  時間もなかったのでコータはたまたま視界に映った白い使いふるされた機械義手義足を選んで体に装着した。

  (うわあ、アンドロイド戦の時に軍の技術室に貸してもらった右腕の機械義手の2倍くらい重いし、2倍くらい壊れやすそう・・・。)

 そう思ったが選ぶ時間もなかったのでそれで我慢した。

  自分のいつも使っている機械義体をバイオリンケースより分厚いケースに詰めて、それをロッカーに入た。

 そして昨日の灰色の通常軍服とは違う、半袖半ズボンの白のランク戦用軍服に着替えて、支給された堅くて防御力のありそうな額当てを頭に巻いて準備室を出た。

  準備室を出てまっすぐに歩いて行くとすぐに1番会場の土俵に着いた。

  「機野コータ選手ですね?」

  審判が言った。

  「はい。」

  「それでは今日の第一試合を始めます!」

  会場上のモニターがカウントダウンを始めた。

  「5、4、3、2、1、・・ファイト!」

 モニターからゴングの音が鳴った。

  対戦相手は身長が180センチくらいある筋肉のついた30代くらいの白人だった。

  白人の武器は銃だった。

  (こっちは機械義手と義足が既に武器だから銃とかなんてつかわせてもらえないのに!)

 コータは昨日の夜ルールブックの武器は一試合4つまでという記載を見ていた。

 そしてこの土俵に入る前の持ち物検査機にも4つ以上の武器は反則という記載が検査機に書いてあった。

 コータは右腕、左腕、右脚、左脚が武器にカウントされてしまっているのでこれから先、刀も銃も使うことができないのである。

  白人は銃を構えて、弾を放った。コータはそれをぎりぎりのところで避けた。

 コータはひたすら敵の周囲を走り回った。

 いつものルイコウ博士特注の機械義手、義足が無い今、コータに残された他の人間とは違う特別な能力があるとしたら、それは左脳だけだった。

 この機械の左脳をフルに活用してS級に上り詰めるしかないとコータは考えた。

  敵の白人は自分に上手く照準を合わせられずにいた。

 しかしコータも慣れない機械義体のため、攻めるタイミングが見つからなかった。

  試合時間は10分。この時間内に何かしらのアクションを起こさなければ引き分けになってしまう。

  今の自分はまだE級でポイントもまだ0ポイント。失うものはない。

 コータはそう思って、次の相手の銃弾を避けて一気に懐に入って拳を叩き込もうと考えた。

 コータは相手をよく観察した。

 そして相手の所作で後2秒後に弾が放たれることを察知した。

  2,1、ドンッ!

  銃弾がコータに飛んできた。それをコータは右にかわし、敵に直進した。

 しかしコータの左脳が考えていた以上に借り物の機械義足は遅かった。

  3度目の敵の弾が銃に装填され、放たれた。

  左腕でガードしようとしたが反応する事が出来ず、左胸に命中してしまった。

 いつもの機械義手のような自分の頭を使わず、自動で機械が反応してくれる防御に頼りすぎたためか?、脳が判断するより何秒も遅れて借り物の機械義手が反応するためいつもとタイムラグがありすぎたせいか?、敵の白人の弾をいつものリズムで防ごうとした結果、腕で防げず、心臓に命中してしまった。

  「試合終了!!機野コータ選手のライフポイントがゼロになったため、リアル・マード選手の勝利です!」

  審判が相手選手の勝利宣言をマイクで会場全体に伝えた。

 コータは放心状態だった。

  「ウソだろ・・・こんなあっけなく・・・。」

 コータは更衣室に戻り、自分が今までどれだけルイコウ博士特注の機械義体に頼っていたかを思い知った。

 レベル3アンドロイドに勝てた実力も、結局借り物の力で、自分の力じゃなかったのか??

 ハヤトにこの間自分のできる範囲でやりたいことをやればいいなんて言って、そんなこと自分に言う資格なかったんじゃないか??

 コータは更衣室で色々な思考を巡らせていた。

  「しけた面だな。」

  更衣室で頭を抱えて座っている所に誰かの声がした。

  振り向くと煙草を吸いながら着替えをしているマイケル大佐がいた。

  「お前とちゃんと話すのはこれで二回目か?」

 コータはマイケル大佐をハヤトと一緒にヘリコプター内で見ていたが実際に話すのは一回目だと思った。

  「ほら、3体のレベル3アンドロイドとの戦闘の時援護してやっただろ??」

 そう言われてコータはあの時援護してくれたAIRのパイロットがマイケル大佐だったことに気づいた。

「さっきの試合、見ていたがあの時と同じ人物とは到底思えないな。お前腕のパーツ換えただけでこんなもろい奴だったのか?」

 コータはマイケル大佐の言葉があまりにも正論すぎて言い返すこともできなかった。

  「まあ、どうでも良いけど、あの時ミサイルで西門の壁登らせてやった借りはいつか返せよな。」

 そうマイケル大佐は言い残して準備室を出た。

 コータはとても落ち込んでいたがとりあえずこの準備室にあるレンタル武器の一般用機械義足、機械義手から一番自分の普段使っている機械義足、義手に近いものを探そうと武器倉庫を漁った。

 その時携帯のバイブが鳴った。

  見ると次の対戦相手の知らせだった。

  「10時よりE級選手との試合・・・。」

 コータは了承ボタンを押した。

  自分はまだS級どころかD級と戦うのも早い・・・。

 コータはそう感じた。


  20分近く武器倉庫を漁り、緑色の機械義足、義手を見つけた。

 これが一番この武器倉庫では自分にフィットする義足、義手だと感じた。

  「機野コータ選手、ハサウェイ・ブラウン選手、一番会場に来てください。」

 アナウンスが再び聞こえた。

 コータの序盤にする作戦は決まっていた。

  再び土俵に足を踏み入れると今度は自分と同じ165センチくらいの小柄な黒人選手だった。

  武器は先ほどと同じ銃、それに小刀が見えた。

  再び会場の天井のモニターがカウントダウンを始めた。

  「3、2、1、ファイト!!」

  ゴングが鳴った。

 コータは先ほどの試合で銃で心臓を撃たれてライフポイントを一瞬で奪われたので今度は左腕で常に心臓を覆って戦うことにした。

  頭の部分は機械の左脳があるから瞬間的に避けれるだろうと判断して防ぐ対策をしなかった。

  早速一発目の弾丸を敵が撃ってきた。

 しかし先ほどよりは機械義手、義足が軽かったので簡単に右に避けられた。

  遠距離武器も中距離武器も義手と義足のために使えないコータにとっては既に接近戦を仕掛ける以外の選択肢はなかった。

 そしてコータは今度は斜めに、そして少しだけ縦に相手に向かう仕草をいれながら敵との間合いを詰めていった。

  二度目の銃声が鳴った。

  弾は左脚の太もも当たりをカスった。

  「おおっと!機野選手の左脚に弾が命中した!だがこのダメージは5ポイント。まだまだ健在だ!」

  審判の実況のおかげで上のモニターを見上げずとも自分の現在のライフポイントがいくつなのかわかった。

 そして次の敵の弾が装填されたカチャッという音を聞き、先ほどと同じように弾が来るのがわかった。

 コータは避ける自信はあったが念のために左腕での心臓のガードに加えて右腕で頭をガードした。

 この二か所を防げば万が一命中しても瞬殺にはならない。

  弾が放たれた。

  弾は心臓をちょうどガードしている左肘あたりに命中した。

  (保険をかけて良かった!)とコータは思った。

 そして相手の間合いに入り相手の心臓位置に向けて拳を放った。

 その拳は見事に敵に命中して相手を10メートル近く後ろに吹っ飛ばした。

  「おお!ダメージ判定80!ブラウン選手これは後がない!」

  実況のおかげで頭上画面を見上げずとも相手のライフが残り20程度なのが分かった。

 そこで、コータのパンチを食らって、地面に倒れている相手の銃を持つ左腕を狙う事をコータは考えた。

  銃を奪いつつ、ライフを微量に削れる最善の手だと感じた。

 しかしこの試合のルールを忘れていた。

  武器は最大4つ。

  相手は後2つ体のどこかに武器を隠しているのだ。

 なんとそれは相手の腰にあった。

  敵のブラウンは左手に握る銃を放り捨て、腰に隠していたサブマシンガンを取り出そうとしていた。

 だがコータは目でその所作をスローで目に映していた。

  左脳の処理速度のおかげもあってか、相手の動きを目を凝らして見ると何秒か時間が遅い世界にやってきたかと思うようなスローな動きに見えたのだった。

  銃を捨て、新たに腰のサブマシンガンを取り出そうとして左手を腰にあてた瞬間をコータは見逃さなかった。

 そのまま地面に大の字で倒れこんでいる敵の額に自分の拳を叩き込んだ。

 ガツン!という拳が相手の額に命中した音が響いた。

  「試合終了!機野選手の左拳がブラウン選手の額に命中したため、ブラウン選手のライフポイントがゼロになりました!よって、機野コータ選手の勝利です!!」

 まだ一日の試合の序盤だというのに会場に結構な歓声が響いた。

 コータもまだ一日の試合の始まったばかりだというのに精神的な疲れを感じていた。

 それでも、このランク戦で初めてもぎとったこの一勝がとても価値のある一勝に思えた。




  試合が終わり、コータは更衣室に戻った。

 そして携帯の画面を見て、予定表を確認した。

  携帯画面の獲得ポイントと表示された所が先ほどまで0ポイントだったのが1ポイントと表示されていた。

  試合は一試合10分、一時間に6回行われる。

 そのうち連続で試合ができるのは二回まででその後一回分の試合、つまり10分のインターバルを取らなければならない。

 コータがD級に上がるのにE級を9人倒さなければならない。コータはそのうちの一回か二回、D級へのチャレンジ制度を利用してポイントを獲得しようと考えた。

  幸いなことに後一時間後の試合、10時半から10時40分枠の試合はD級選手が試合を承認してくれていた。

  (後三時間以内にD級に上がってやろう。そうしなければS級に戦う価値のある相手と判断してもらうこともできない。)

 このランク場のポイントルールでは自分のランクが相手に戦う価値のある相手かどうか判断させる基準になる。

 コータはまだS級兵士にとって勝利しても1ポイントしか手に入らない、戦う価値のない相手と思われている。

 (S級からしたら勝利してもメリットの少ないE級と戦うより勝利すればそこそこポイントが入るA級かB級あたりと戦いたいと考えるのが普通だ。

  今は自分の戦う相手としての価値を高めないと。)

 コータはそう考えた。

  既に後十分後にE級との試合が決まっている。 

  (連戦で疲れるが、アンドロイド達と戦って日本を取り戻ためにも頑張ろう!)

 コータはそう決意した。

 ーーーーーーーーーーー試合会場3

  「おおっと!平塚ハク選手!流石A級の実力者だ!チャレンジ制度を利用して戦いを申し込んできたB級のイワン選手の攻撃を全てかわしている!」

 その試合場では右手に弓矢を持つハクと右手に銃を持ち、左手にシールドを持つアフリカ系の黒人の男が戦闘を繰り広げていた。

 だが既に両者のライフポイントには歴然とした差があった。

 ハクのライフポイントはまだ無傷の100ポイント、黒人の方のライフポイントは既に残り20ポイントという状態だった。

  「降参したら??」

 ハクはコータと会話した時と同じような抑揚のない声で黒人にそう言った。

  「生意気な女だな。」

  黒人は左手のシールドを突如投げ捨て、自分の左ポケットに手を突っ込んだ。

  (あの感じ・・・爆弾かな?)

 ハクは相手が取り出そうとしている武器を予測した。

  (残り試合時間は後1分。確かにこの点差をひっくり返すにはシールドで守りに入ってる場合じゃないわね。つまり彼に残されているのは捨て身の特攻。)

 ハクの予想通り男は左ポケットに手を突っ込みながら右手に銃を握りつつ直進的に走ってハクに突っ込んでいった。

 ハクは相手の向かってくる男の手を突っ込んでいる左ポケットに狙いを定めて矢を放った。

  男はその矢をギリギリでかわして、かわしたと同時に左手をポケットから出した。

  手にはやはり爆弾が握られていた。

 しかし男がポケットから手を出し、爆弾をハクに投げつけようとする前にハクは再び矢を敵の左手に握る爆弾に向かって放った。

  矢は爆弾を貫き、男の手のひらの中で爆発した。

  「痛ってぇ!(矢の装填が速すぎる!)

  「ハク選手、イワン選手が隠し持っていた爆弾を矢で貫き、そのまま爆弾はイワン選手の手の中で爆発した~!イワン選手、ライフポイントゼロによりケーオーです!」

 ハクは試合最中と同じく淡々とした表情でリングを降りて更衣室に戻った。

  (そういえばあの機野コータとかいう人が隣の会場で試合しているらしいわね。ちょっと見ていこうかな。)

 ハクは更衣室で着替えを済ませ、試合会場1に向かった。

  地下一階のフロアから階段を上がり、二階フロアの試合会場1と書いてある矢印に従って歩いて進み、会場の入り口にたどり着いた。

 ハクは入り口の扉を開け、応援席の中に入った。

  (いた、機野コータ。なんだまだE級のポイント7か。)

  試合会場の天井にあるモニターに表示されているコータの階級と獲得ポイントを見て、ハクは思った。

  (対戦相手はD級の獲得ポイント29。またレベル差のある相手を選んだわね。ポイント29なら実力はほとんどC級と同じ。どちらもこの試合に勝てばどちらかが階級を一つ上げられるわけだけど、機野君に勝ち目はなさそうね。)

 そしてハクは天井のモニターからリングの中にいる2人に目を移し変えた。

  「すでに試合開始2分が過ぎているのにも関わらず両者ともライフポイントにダメージはありません。機野選手の主力武器は拳と足蹴り、ロナルド選手の主力武器は銃と剣のようです!」

 実況が叫んだ。

 コータの相手はヨーロッパ系のスキンヘッドの白人男性だった。右手にサーベルを持ち、左手に銃を持っていた。

 コータは今回機械義手と義足を軽めでスピードが出る青い機械義手、義足に換えていた。

 そのためスピードだけはルイコウ博士特注のいつもの機械義手、義足に近い性能があった。

  (これなら拳銃のスピードにも対応できるな。)

 コータは敵の周囲を回りながら徐々に距離を詰めつつ、後ろをとれる機会をうかがっていた。

  敵のヨーロッパ系のスキンヘッドの男はコータを捉えることができないでいた。

 そしてコータは走っているうちにスキンヘッドの男の背中に回り込むことに成功した。

  「いまだ!」

 コータは相手の後ろ背中に完全に回り込んだ所で一気に直線的に突っ込んでいった。

 しかしスキンヘッドの男は後ろから突っ込んでくるコータの気配を察知してか、すぐに後ろを振り返り、銃弾を発射した。

 だがコータは相手が振り返る動作をスローモーションで見ていたため、すぐに相手の銃撃に反応してかわすことができた。

 コータは自分でも今まで気づいていなかったが、目を集中して凝らすと、物体を何秒間か現実よりスローで見る力があったようだ。

 コータの目と脳には銃弾の速度が現実の速度の十分の一くらいのスピードで見えていた。

 そのスローで放たれてこちらに向かってくる弾をスローな動きになっている自分の体を右に動かして避けた。

 どうやら動体視力が何倍にも上がっている。

 そしてそのまま相手との体の距離を縮めて、右拳を心臓部に叩き込もうとした。

 するとスキンヘッドの男は右手に持つサーベルを盾のようにして剣脊でコータの右拳を防ごうとした。

 その敵の防御する動作もコータにはスローな動きで見えていた。

 コータは右拳で殴る事を途中でやめて、しゃがみこみ、相手の防御が手薄な脚元のすねのあたりを右脚で蹴飛ばして、相手の体のバランスを崩そうと考えた。

  右脚の蹴りは見事敵のすねに命中して、スキンヘッドの男はそのまま地面に倒れこんだ。

  倒れこんで男がひるんだ瞬間を狙って、がら空きになっていた頭部に右拳を叩き込んだ。

 ガンッというコータの右拳がスキンヘッドの男の額に命中した音が会場に響いた。

  「機野選手、驚愕の動きです!ロナルド選手の脚元を崩してバランスを崩した所に拳を叩き込みました。先ほどのロナルド選手へのすねへの攻撃で20ポイントダメージ、額への攻撃で80ポイントダメージで機野選手の勝利です!!これで機野選手はD級に昇格です!」

  「よし!」

  審判の勝利宣言とともにコータはガッツポーズを取った。

  (へえ、少しはやれるんだ・・・。)

 コータの試合の一部始終を一番上の観客席から見ていたハクはコータの動きを見て思った。 


 コータは準備室に戻った。

 まだ始まったばかりだがD級への昇格が純粋に嬉しかった。

 しかし初日三時間で既にE級と5試合、D級と2試合続けたコータは少し疲れがたまっていた。

  (だけどこれくらい飛ばさないとサミットまでにS級上位5位入りなんて無理だな。)

 コータは疲れをふっ切って携帯画面の試合受付画面の試合時間希望欄に30分後試合希望と入力して、対戦相手の希望ランクをC級にチェックを入れた。

  (もう昼か。この中に食事処って書かれた所あったな。言ってみよう。)

 コータは着替えを済ませ、ロッカーから普段使っている機械義手、義足が詰まったケースを取り出して準備室を出て食事処に向かった。

  食事処は既に大勢の人で混雑していた。時間はちょうど昼の12時を回っていた。

  食事のチケットを買い、店員に渡した。

  食事を待っている間、コータはいつものヒューマンコーティングで肌色の人肌にカモフラージュされた機械義手、義足ではなく青色の機械義手、義足をつけているせいか、周りの人に見られているような感じがしていた。

  「あいつ、5日前アンドロイド倒したアンドロイド疑惑の奴だ。」「あいつなんでこんな所いるんだ?ここはアンドロイド対策のための施設だってのに。」「さっきの試合もあいつの体が機械だから勝てたんじゃねえの?」

  (なんだ、いつものあれか。)

 コータは食事が出される所で注文したソバが出てくるのを待ちながら、周りの客の声にそう思った。

  「皆、君の先程の君の戦闘を見てそう思いたがっているんじゃよ。気にせんでええ。」

  誰かが後ろからコータの肩を叩いてそう言った。

  振り向くとセオドア中将がいた。コータと同じように食事が渡されるのを待っているようだ。

  「ああ、こんにちは。」

 コータはあのヘリコプターの中で依頼このセオドア中将と会話していなかったので少しギクシャクした。

  「一緒に食事でもどうかな?」

 セオドアが少し笑いながら言った。

  「あー、よろしくお願いします。」

 コータはまだギクシャクした感じが止まらなかった。

  相手が中将ということもあってかなり気を使っていた。

 2人は注文した食事を受け取り、近くのテーブルに腰を下ろした。

  「君の先程の戦闘見させてもらったよ。君は自分の戦闘用機械義体を使わなくてもあんな良い動きができるんだね。」

 セオドアはコータを褒めた。

 コータは軍に入る前は感じなかったのに軍に入ってからは階級の高い人に褒められると他の人が褒めてくれるのとはまた若干違った嬉しさがあるということを感じていた。

  「ありがとうございます。」

 コータは素直にそう返した。

  「あの時は君の活躍で我々の基地が守られたということをジョージの奴から聞いているよ。ああ、一応あいつの方が位は高いがあいつとは昔からの同僚なんだ。私的な場所ではいつもお互い対等に会話しているんだ。ところで、ジョージの奴から聞いたんだが君も対策チームに入れてもらうためにS級5位を目指しているのかね?」

 セオドアはコータに聞いた。

  「はい、目指しています。」

 コータは真顔でセオドアの顔を見ながらそう返した。

  「セオドア中将も目指されているですか??」

 コータはセオドアの階級が気になった。

  「まあ、わしは目指してはおらんかな。もう入っておるし。」

 セオドアは余裕のある表情で言った。

  「え、セオドア中将は既にS級以内なんですか??」

  「そうじゃよ。年寄りだから動けないと思ったかね?」

 セオドアはまた小さく笑いながら言った。

  「コータ君、という名前だったよな?君、良かったらわしと試合してみないか??」

 セオドアがまた少し王者の余裕にも見えるような笑みを浮かべながらコータに言った。

  「え!良いんですか??」

 コータはS級がD級と戦うメリットがないと思っていたため、その提案がとても意外だった。

  「ああ。まあ、あの時基地に落下する戦艦を止められる術はわしにも他の者にもなかったからの。君がいなかったら、わしは生き残ってたろうが、大量の死者を出していただろう。あの時の礼も兼ねてな。それに君の実力がどれほどのものなのか、わしの目で見定めたいのじゃ。(それにわし獲得ポイント900あるから何やっても対策チーム入りは確定だしの。)」

  「ありがとうございます。是非お願いします。」

 コータにとってS級と戦うのは願ったりもないことだった。

  相手はこの基地で5番目以内に強い軍人ということになるが逆に彼に勝つことができれば自分への自信になると考えた。

  「じゃ、決まりじゃな。時間はいつにするかの?」

  「後2時間後でお願いします!」

 コータは休憩時間とセオドア対策用の機械義体の選別にかかる準備時間も考慮してこの時間を指定した。

  「わかった。2時間後じゃな。」

 その後コータはセオドアと別れて、受付に戦闘用機械義手、義足の使用の申込書を提出しにいった。

 セオドアはおそらく一般生活用機械義手、義足で倒せる相手じゃない。


  申請は簡単に通った。

 そこでコータは特殊武器室専用と書かれた鍵を受付から渡された。

 コータは受付で鍵を受け取ると階段で地下に降りて再び準備室の前まで来た。

  特殊武器室は準備室の二つ左隣りの部屋だった。

  特殊武器室に入るとそこは試合会場全体の半分ほどの、学校の体育倉庫を数倍の大きさにしたような武器庫だった。

 そこには10メートル程の高さのAIRが十体程壁に並び、刀、銃、槍、大砲等のあらゆる武器が綺麗に横並びに保管されていた。

十数体並ぶAIRの上には「AIRコーナー」と書かれた横に長い長方形の看板があった。

 コータは「AIR」、「オートマウェポン」と書かれたコーナーを通り過ぎて「戦闘用機械義手、戦闘用機械義足」と書かれたコーナーまでたどり着いた。

  機械義手、義足が横並びにケースに保管されてあり、それぞれのケースには装備のスペックの説明書きがされていた。

 コータはケースの中に入れてあるいつものルイコウ博士特注の機械義手と義足を取り出して、普段使っている機械義手、義足と横並びにされた戦闘用機械義手、義足を徹底的に付け比べていった。

 ひたすら左端のケースから機械義手、義足を取り出して、普段の機械義手、義足と付け比べることを繰り返して、左から順にどんどんケースが開けられていった。

 そして12番目にケースから取り出した黒い機械義手、義足が一番自分の普段使っている機械義手、義足の感覚に近いと感じた。

 コータはその12番目の黒い機械義手と義足を体に装着した。

 その後、ひたすら取りだした11個の機械義手と義足を全てそれぞれのケースの中に戻し、特殊武器室を出た。

  (この黒い機械義手と義足は確か防御に特化しているってケースに書いてあったけどその割には重さを感じさせないな。他の機械義手と義足には銃とか刀が飛び出すタイプもあったみたいだけど普段俺が使っているのがただ殴って蹴るだけの機械義手と義足だからこの機械義手と義足がベストだろう。)

 コータはそのまま選手訓練室と書かれた部屋に入った。

  部屋の中はサンドバッグや並べられた的等、武器の試し使用のための訓練用の道具が並べられていた。

 コータは訓練室の中の「回避訓練室」と書かれた看板のある部屋に行った。

 そこは四方から飛び出してくる槍を避けるという訓練場だった。

 コータは右手に持ったケースを三つある回避訓練室の真ん中のルームの入り口扉の右横に置いて中に入った。部屋に入ると入り口の右側にスイッチがあった。

 コータはスイッチを押した。すると部屋中から機械音が響き、コータに向かって壁から槍が四方八方から飛び出してきた。 

 その無数の槍をコータは全て避けきった。

  避けきったと思ったらまたさらに無数の槍がコータに向かって飛んできた。

 コータはこのひたすら避ける行動を3分くらい続けた。

  攻撃を避けきれないものは機械義足、義手で全て防御した。

 3分経ち、部屋中に響いていた機械音がぴったりと止まった。

  「防御面でもスピード面でもこの機械義手と義足は正解だった。」

 コータは自分の選んだ機械義足と機械義手の性能に自信を持った。

  時計を見ると試合開始まですでに十分を切っていた。

 コータは慌てて選手訓練室を出た。

  訓練室を出るとすぐ目の前にリングが見えた。

 コータはケースを会場入り口の右横に設置されたロッカーに入れて、通路から試合会場のリングに歩いて向かった。

  「おお!只今入場しました!機野コータ選手!彼はこのランク戦に参加して今日一日のわずか三時間でE級からD級に昇格した期待の新人です!」

  実況がコータの入場と同時にコータを紹介した。

 (そういえばD級以上の試合からは審判と実況は別になるんだった。)

 セオドア中将はまだリングに来ていないようだ。

 コータがそう思った時、選手控室の奥から歩いてくるセオドア中将の姿が見えた。

「おおっと!選手控室から我らがシアトル軍のエース、セオドア・ルート中将が登場しました!」

 セオドア中将が姿を現すと試合会場の観客席が一気に湧いた。

 それだけセオドア中将のここでの人気は高いらしい。

「セオドア中将は現在S級2位に君臨する方です!軍の階級と兵士ランクを見合わせてこのご老人に勝る兵士は現在このシアトル基地には存在しません!」

 実況はコータがE級だった時の試合の実況と同じ人が実況していたが先程までの試合以上に実況の仕方に熱が入っていた。

「この試合、S級とD級、明らかに勝敗が見えているとこの会場の大勢の観客が思っているでしょうが機野選手にはどうか我々にジャイアントキリングを見せてもらいたいものです!」

 コータとセオドア中将はリングに入り、互いに向き合った。

 そして上のモニターが試合のカウントを開始した。

「5,4,3,2,1、ファイト!!!」

 試合の火ぶたが切って落とされた。

「両者、使用する武器は機野選手は戦闘用機械義手、機械義足「ブラックアームス」「ブラックレッグス」。セオドア選手は日本刀型オートマ・ウェポン「鬼殺しレンタル」。どちらもこのランク戦の特殊武器に指定されているため、どちらの選手も獲得報酬ポイントが5ポイント下がることになります。つまりこの試合にセオドア選手が勝利してもポイントが得られません。負ければポイントが下がるだけ。そんなデメリットしかない試合に了承したのは何か機野選手との間に大きな事情があったのでしょうか??」

 冷静に考えてみればそうだった。

 この試合、セオドアはオートマ・ウェポンを使用する以上勝利しても0ポイントにしかならない。

(それだけ俺に勝つ自信があるのだろうか??いや、だったら武器をオートマ・ウェポンではなく通常武器にしてくれば、少なくとも3ポイントは手に入る。そうしなかったのは手を抜かないためにそうしてくれたんだ。本気で俺の実力を見定めるためだけに俺との試合を引き受けたんだ。)

 コータはセオドアがこの試合を引き受けてくれた意図を理解した。

 そしてだからこそ全力をセオドアにぶつけようと考えた。

 セオドアはまだ刀も抜かずに刀の柄に手を添えているだけだった。

 コータはなんとなくだがセオドアはあの刀以外の武器を持ってきていないような気がした。

 それだけあの刀一本で戦うことに自信があるように見えた。

(ならば近接武器同士での戦いになる。)

 コータは拳で構えながらセオドアとの間合いを脚を引きずってゆっくり詰めていった。

 セオドアは徐々に自分に近づいてくるコータを気にも留めず試合開始からその場から一歩も足を動かさなかった。

 コータはゆっくりと近づくのを止めて右に急激に速くステップを踏み、セオドアの後ろ背中から3メートルのところに回り込んだ。

 そしてそのままセオドアに直線的に突っ込んだ。

 セオドアはコータの方を向かなかった。

 コータがセオドアの背中に右拳を叩き込もうとすると、セオドアは後ろを向いたままの状態でそのパンチを刀で防いだ。

 そして後ろを向いたまま左脚をコータの腹に向かって蹴り上げてきた。

 コータは右拳を刀で防御された状態でセオドアの蹴りを左脚のすねで防御した。

 コータはいったん右脚で後ろに跳び、セオドアとの距離を6メートル取った。

「自動防御じゃよ。わしがお前さんを視界に映していなくとも刀がお主の機械の拳に勝手に反応してわしを守ってくれた。」

 セオドアはゆっくりとコータの方を振り返り、コータに言った。

「AI、人工知能とは便利なものじゃの。人がやりたくないことを勝手にやってくれる。わしがお主の攻撃を望んで食らいたいと思っても刀が人間を守るよう設定されていれば食らいたくとも食らうことができない。お主の攻撃を防ぐのが面倒くさいと思ったら勝手にその面倒くさい防御をやってくれる。しかしそんなわしらの機械への「甘え」が彼らを暴走させたのじゃろうなあ。」

「試合中にべらべらと良いんですか?時間切れで引き分けになりますよ。」

 コータはセオドアを挑発して攻撃を向こうから仕掛けさせようと考えた。

「なんだ、せっかく重要な話をしとったのに。何やらカウンターを狙いたいようじゃの?」

 セオドアはコータの挑発を読んでいた。

「なら、その挑発に乗ってやるかの!」

 セオドアは直線的にコータに突っ込んできた。

 そのスピードは脚が機械義足になっているのかと疑うくらい速かった。

 セオドアは右腕の刀の切っ先を下の地面に構えた状態で上に振り上げてコータを切ろうとした。

 コータは前の試合のように目を凝らして敵を見ることで、自分の視界に映る時間を遅らせた。

 その瞬間だけはコータの目にはセオドアの動きが通常の何倍もスローな動きで映った。

 コータはセオドアの刀を左に避けて、左拳をセオドアの心臓位置を狙って叩き込んだ。

 その時セオドアは左手で左腰に巻いていた脇差しを抜いて脇差しでコータの左拳を防御した。

 そしてすぐさま右手に持つオートマウェポンの方の刀でコータの腹を突き刺そうとした。

 コータの右腕はコータの意志とは関係なくオートマウェポンの刀に反応してその刀の突きを右上腕部で防御した。

 再びコータは後ろにステップしてセオドアとの距離を取った。

「なんだ。武器その刀一本じゃなかったんですね。」

「誰も武器はこれだけなんて言っとらんぞ。」

 コータは自分の戦闘用機械義手のオート防御に救われた。

 今までのD級に上がるまでの試合でオート防御、オート攻撃機能のような人工知能の内臓されていない一般用機械義手、機械義足を使って戦ってきたので余計に人工知能のありがたみを今の右腕の自動防御で感じた。

「しかし今のやりとりでわかったが、お前さんオート防御機能のない、人工知能の内臓されていない武器を今まで全く使ってこなかったな??」

 セオドアはコータの今までの戦闘経験を見抜いた。

「だからレベル3、レベル4アンドロイドを破壊したような人間がE級の人間相手にあれだけ手こずったというわけか。人工知能機能のない武器では普通の人間にも勝てない。」

「何が言いたいんです?」

 コータはセオドアの挑発にイラついた。

「わしが言いたいのは機械に甘えるなということだ。その甘えはいつかお主が機械に頼れない状況の時にお主を殺すぞ。」

 コータはセオドアの言っていることに反論する事ができなかった。

 人工知能機能のない一般用の機械義手と義足を使って戦闘をして初めてコータは自分のみの力の非力さを実感した。

 もし一般用機械義体で戦闘をしたらレベル1のアンドロイドにも殺されるだろう。

「じゃああなたを倒して自分を成長させます。」

 コータは再び構えた。

(あの「目を凝らして集中することで体感時間を長くする」能力を使えばこの人に勝てるかもしれない。)

 コータは自分の左脳のことが人に知られていないのが幸いだったと思った。

 コータはセオドアに再び直進していった。

 セオドアは刀を右手に持って構えた。

 しかしコータはセオドアとの距離2メートルのところで突進を止めてリングのコンクリートの地面を右拳、左拳で連続で殴打した。

 殴打して破壊されたコンクリートの破片は宙に飛び散りセオドアとコータの前に破片の壁を作った。

 セオドアは一瞬、空中に舞うコンクリートの破片の壁が邪魔になってコータの姿を見ることができなくなった。

 コータは空中にコンクリートの壁ができているうちに上に跳び、セオドアの後ろに空中から回り込み、右膝をセオドアの後頭部に食らわせようとした。

 しかしコータが右膝をセオドアの後頭部にぶつけるより先にセオドアはコータに自分の後ろに回り込まれたのに気づいた。

 体を後ろに反転させ、コータと正面に向き合い、右手のオートマウェポンの刀でコータの右膝の攻撃を防御した。

 右膝を刀で防がれた体勢からコータは左脚でセオドアの刀を上に蹴り上げた。

 セオドアはその攻撃で後ろに後ずさりした。

 コータはその隙を狙って右脚をセオドアの足下に引っ掛けた。

 セオドアは足を引っ掛けられて体勢を崩した。

 コータは体勢を崩したセオドアの顔面に右拳を叩き込んだ。

 拳はセオドアの右頬に命中し、セオドアを数メートル吹っ飛ばした。

「おお!D級の拳がS級の顔面にはいった~!!ダメージポイントは60です!!」

 会場が一気に湧いた。

 誰も始めは期待していなかったD級がS級を倒すかもしれないという事態が起きるかもしれない。

 観客の数人がその一撃のダメージポイントにそんなジャイアントキリングが起きる期待を抱き始めた。

 コータもそのダメージポイントに勝利を一瞬予感した。

 そしてコータが一気に攻撃をたたき込んで決着を着けようと倒れた姿勢から起きあがろうとするセオドアに突進していった瞬間だった。

 コータの額に「何か」が命中した。

 コータはその「何か」にコータは先のセオドアのように後ろに吹っ飛ばされた。

「試合終了!ダメージポイント100でセオドア選手の勝利です!!」

 実況の突然の決着宣言にも、コータは自分の身に何が起こったのかわからなかった。

 セオドアの方を見るとセオドアのオートマウェポンの刀の刀身が7メートル近く伸びていた。

 自分の額に命中したのは刀の切先だったのだと気づいた。

「秘密兵器は最後まで残しておくもんじゃろ。しかしお前さん、今のが実践だったら額を貫かれて死んでいる所じゃったぞ。幸いここのランク戦用軍服に額当てがあったからよかったようなものの・・・。」

 コータは自分のあまりに突然で呆気ない敗北に尻餅をついたまま数秒間口を開いたまま唖然としていた。

 すると額当てがパカンッと真っ二つに割れて地面に落ちた。



 コータは準備室に戻り、一度シャワールームでシャワーを浴びた。

 コータはシャワーを浴びながら先程の試合の流れを頭の中で反芻していた。

 あそこでああしたのは最善の手だったか、もっと良い手があったのではないか、なぜ慢心して直線的に攻撃を仕掛けてしまった挙げ句カウンターを食らってしまったのか。

 60ポイント取った所からの自分の慢心や気が緩んでしまったことに自分自身に腹が立って仕方がなかった。


 シャワールームから出て、体を拭き、着替えをしている最中、携帯が鳴った。

 次の試合予定についての知らせだった。

「3時半よりC級選手との試合・・・後二十分後か。」

 表示されている自分の現在の獲得ポイントを見たらポイントが10ポイントから2ポイントになり、兵士ランクがD級からE級に下がっていた。

「そうか、通常の敗北ペナルティで3ポイント、特殊武器の使用ペナルティで5ポイントでマイナス8ポイントされたのか。」

 コータは一気に最初に戻ってしまったようで先程の試合での自分の慢心に加えてE級への逆戻りに一層落ち込んだ。

 だがすぐに思考を切り替えた。

「仕方がない、最低でも今日中にD級に戻ってやる。」

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