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入学、出会い、訓練、そしてランク戦

ーーーーーーーーーー翌日  ブライトウイング ハイスクール

「初めまして。機野コータです。よろしくお願いします。」

 挨拶をするために教壇に立ったコータの一面には赤い制服を着た生徒がズラリと座っていた。昨日と同じような感じがしたが昨日と違う所は30人の前で挨拶したということと厳粛な空気の中での挨拶ではなかったことだった。

「はい、挨拶ありがとう!みんな仲良くして上げてね!」

制服と同じ赤色の、栗色でミディアムヘアーの白人の女の先生が教壇の前でクラス全員に向かって言った。

 昨日と違う所は立場が上の人間の性格もだなとコータは感じた。

「機野君の席は真ん中の列の後ろから二番目の左の席ね!」

 コータの席の右隣には小柄な黒髪ショートヘアーのアジア系の女の子が座っていた。

 さらに驚くことに、偶然にもコータの目の前の斜め右の席がハヤトの席だった。

「それじゃ1限目の授業始めよう!」


 1限目の授業が終わった。

「コータ君!まさか同じクラスでこんな近くの席になるとは思わなかったよ!」

 ハヤトが驚きと嬉しさが混ざったような表情で言った。

「同じクラスになったのは、なんとなくだけどジョージ大将が学校に手回ししてくれたんだと思う。でも流石にこんな近くの席になるとは思わなかったよ。」

 コータも自分の近くに知り合いがいてくれた事が心強かった。

 ふと右隣の女の子に目を移すと読書をしていた。

(日本の本?この子中国人かと思ったけど日本人なのか?)

 これもまた偶然なのか、自分の左隣の女の子は日本人だった。

「3年ぶりの授業はどうだった?」

「こう言っちゃなんだけど簡単すぎた。さっきの数学の授業は実は教科書の始めから皆が解いているページまでを始めの十分で先に記憶してから皆が解いているページを解いたんだ。」

「凄い!皆が半年勉強してきた内容を十分で覚えちゃったんだ!コータ君頭良いんだね!」

 ハヤトがコータの学習能力の高さに驚いた。

「頭良い・・・ていうか左脳が勉強中勝手に作動しちゃうからさ。嫌でも覚えちゃうっていうか・・・。」 

 コータは照れくさそうに言った。

「そうなんだ。脳が機械だと勉強も簡単に覚えられちゃうんだ。」

 ハヤトはうらやましいと思ったがコータに対して不謹慎だと思ったので言うのを止めた。


 そして一日の授業が終わり、放課後になった。

「なんか、色々簡単すぎたな。」

 コータは思わず正直に口にしてしまった。

「そ、そう??」

「教科書三年間開いてこなかったけど、英語は左脳の中の自動翻訳機で全部わかっちゃうし、歴史みたいな暗記ものは見ればすぐ記憶できる。数学や化学みたいな数字も左脳が勝手に問題を処理してくれる。体育はやると人に怪我させそうだから見学するしかない。唯一難しかったのは音楽みたいな美術系だったな。」

「音楽は苦手なの?」

「音楽だけは左脳が通用しないんだよ。音楽みたいな人の感性で作られるものはどっちかっていうと右脳を使うんだ。だから俺の素の人間の脳を使う事になる。まあ正直左脳が機械になるまでは全科目苦手だったけどな!」

 コータは笑いながら言った。

 ハヤトは完璧に全科目こなしているように見えるコータにも欠点がある事を知って少し安心した。

「じゃあ、とりあえず学校全体を案内しようか??」

 ハヤトが聞いた。

「ああ、頼む!」

 校内を歩きながら校舎内をよく見ると昔自分がいた日本の中学校と大して変わらない構造をしているように見えた。

 いくつかの教室があり、学年があり、体育館があり、図書館があり・・・・。

 唯一違う所はいる人間の人種が皆バラバラというだけだと思った。

「おい、ハヤト。そいつ誰だ?」

 コータとハヤトが学内を回って音楽室を通り過ぎようとしたところで男が3人声をかけてきた。

「ポール君、ピート君、スチュアート君。」

 太った白人の男と筋肉質の白人の男とがりがりで眼鏡をかけた背の高い白人の男の三人組だった。

「ポール君、この間君に昼食代って言って貸したお金、そろそろ返してくれないかな?」

 ハヤトが困ったような顔で言った。

「え、そんな金借りたっけ?」

 ポールという太った白人の男はとぼけたような声で言った。

「貸したよ。ピート君にも一か月前貸しているよ!」

「そうだっけか?でもよ、冷静になって考えても見ろよ。お前ら日本人のせいで今世界が大迷惑している。そしてお前ら日本人は俺達アメリカのお情けで難民としてうちの国で暮らしていけている。難民手当とか色々もらってんだろ?それだけのお情けを俺達アメリカ人にかけてもらっているんだ。俺達の昼飯代、日本人であるお前が奢るくらいしても良いんじゃないかあ?」

 ピートという筋肉質の白人の男がニヤニヤしながらそう言った。

 隣でスチュアートというがりがりの白人の男も同じようにニヤニヤしている。

「・・・・・。」

 ハヤトは彼らに反論できずにいた。

「いや、でも補助金ハヤトがもらっているとしても、それお前らの親が稼いだ金から出された補助金であって、お前らが稼いだ金から出ている補助金じゃないんじゃねえの?」

 コータが反論できずにいるハヤトをフォローした。

「誰だお前?」

 スチュアートが言った。

「機野コータ、転入生。良いからハヤトに金返してやれよ。」

 コータは鋭い目つきでスチュアートを見ながら言った。

「お前も日本人か。本当にお前ら日本人は少しは世界に大迷惑をかけたってことを自覚しろよなー。」

「ハヤト、こいつらにいくら貸したんだ?」

「30ドル・・・。」

 ハヤトがコータに言った。

 そしてコータはスチュアートの制服のポケットから少しはみ出ている財布を見て、スチュアートが反応できないほどの一瞬の速度でそれを抜き去った。

「ええと・・・なんだちょうど30ドル持ってるんじゃん。ハヤト、ほらよ。」

 コータは財布から30ドル抜いてハヤトに渡した。

「てめえいつの間に!!」

 スチュアートが大声で言った。

「財布は返すよ。」

 コータはスチュアートのポケットから抜いた財布を今度もまたスチュアートが反応できない速度でポケットの中に返した。

「おいお前、ただで済むと思ってねえよな??」

 筋肉質のピートが手の骨の音を鳴らしながら言った。

「ハヤト、走るぞ。」

「え?」

 コータはハヤトを背負って全速力でポール、ピート、スチュアートが塞いでいる通路の方向とは逆方向に走った。

「あ、待ちやがれ!!」

 三人が後ろから追いかけてくるのがわかった。

 三人はハヤトを背負うコータを追いかけたが通路の曲がり角で見失った。

「いない・・・。あいつら教室に隠れ込んだのか??」

 コータとハヤトは曲がり角で三階の窓から飛び降りて下の校庭の校舎裏にいた。

「コータ君無茶しすぎ!」

「平気だよ!これくらいの高さ、今まで散々飛び降りてきたって!」

 コータはシュラと50メートル以上あった軍の西門の壁を飛び降りた5日前を思い出して言った。

「それよりハヤト、お前なんでもっとあいつらにガツンと金返せって言ってやらなかったんだ?」

「それは・・・彼らの言い分も正しいかな?って思っちゃって。僕ら日本人の難民が迷惑かけてるって所が。」

「それがあいつらがお前に金を返さない理由にはならないだろ!!」

 コータはハヤトに怒った。

「あいつらがアメリカ人だからとか、お前が日本人だからとかじゃないんだよ!お前は人に優しい奴だけど、お前が人に優しくするのと同じくらいお前は人に怒らないとダメだって!」

 コータはハヤトの気弱な部分も含めてハヤトの事が好きだったが、そんな気弱な部分が弱点であるとも感じた。

 ハヤト「ご、ごめん・・・。」

「いや、謝ることじゃなくてさ・・・。」

 コータはハヤトにどう説明すれば良いのか言葉が見つからなかった。

 するとコータの視界に草むらのベンチに座って読書をしている黒髪でショートヘアーの小柄な女の子の姿が見えた。

 コータの隣の席に座っていた女の子だ。

「ハヤト、あの子日本人だよな。あの子について知ってる?」

「ああ、平塚ハクさんね。実は彼女も君と同じシアトル軍人なんだよ。」

「軍人?!あの子が?」

 コータはどう見ても戦闘向きじゃない見た目の女の子が軍人と聞かされて驚いた。

「見えないよね。実は彼女に何回か話しかけようとしたことがあるんだけど、全部無視されちゃって。無視というかプリント回してって言えば回してくれるから無視ではないんだけど、一度も言葉返してくれないからなんか話しかけづらいんだよね・・。」

 コータは女の子が読んでいる本に目を向けた。

 コータが大好きな日本の小説だった。

「ちょっコータ君あの子に話しかける気?」

 コータは女の子に興味を持って草むらのベンチに歩いて行った。

「君、その小説、人間不適任だよね、飯田オサムの。」

 コータは本の話から会話しようと考えた。

「・・・・・。」

 女の子はちらっとこちらを見ただけで無言を貫いた。

「その小説の中の「世間とは個人」って台詞が好きなんだよね。何だか世の中の本質を表しているみたいな清々しさがあってさ!」

「新手のナンパ??」

 女の子が口を開いた。

「いやいや、単純に俺、その小説大好きだからさ。それに君がシアトル軍人って友達から聞いたから仲良くしておきたいなって思って。同じ日本人だし。名前は平塚ハクさんだよね?」

 コータは同い年の女の子と小学生以来話していなかったので若干緊張していた。

「そうよ。実はあなたに聞きたいことがあったの。」

 ハクは鋭い目つきでコータの顔を見ながらか細い淡々とした口調でコータに言った。

「聞きたいこと?何かな?」

「あなた、あの時なんでアンドロイドに止めを刺さなかったの?」

 ハクは先ほどと同じ淡々とした口調で、無表情だ。

「あの時、というと?」

「あなたがレベル2アンドロイドの首を跳ね飛ばした時よ。私の所属は4番隊。あの時あなたと同じ西門の中にいたのよ。アンドロイドが首を跳ね飛ばしたくらいじゃ死なないのは知っているでしょ?」

 コータは喋りかける前の印象より全然喋る子なんだなと思った。

「あの時アンドロイドの頭部には爆弾があった。だから破壊しなかった。」

 コータはハクの質問に答えた。

「そう。正直、あなたに戦闘に入って来られて迷惑だったわ。あなたがいなければあのレベル2とレベル3を追い詰めていたのは私だった。あなたのせいでレベル1を相手にしなくちゃならなかったわ。」

 コータはしばらくハクの言葉に返す言葉が見つからなかった。少しの間を置いて言葉を返した。

「別に誰がどのアンドロイドを破壊したとかどうでもよくないか??」

「あなたは手柄とかにこだわるタイプじゃないのね。でも私は違う。あなたも当然知っているでしょうけど、S級上位5名はアンドロイド対策チームに選ばれる。私は必ずそれに選ばれる。私がS級になるためにあいつらレベル2レベル3の首が必要だったのよ。」

 ハクは相変わらず静かで淡々とした口調だった。彼女は感情を表には出さないタイプの子なのだろう。

「そうか。何か悪かったな。」

 コータはそういう手柄の取り合いみたいなのもあるんだなと思いながら、大して悪いとも思っていなかったがハクに謝った。

「・・・アンドロイドとの戦闘を対人戦みたいに考えてたら死ぬわよ。」

 ハクは冷たい目をコータに向けつつも本をたたみ、バッグに入れてベンチから立ち、どこかに歩いて行ってしまった。

「・・・・・仲良くなれなかったね。」

 ハヤトが唖然とした顔でコータに言った。

「ハヤト、あの子について他に何か知ってる?知り合いがアンドロイドに殺されたとか。」

 コータはハクからアンドロイドへの憎しみのようなものを感じ取っていた。

「うーん・・・友達に前聞いた話なんだけど僕達みたいにアンドロイド達に日本で家と親の仕事を奪われたみたいだけど、彼女のご両親はニューヨークに普通に暮らしているみたいだよ?」

「じゃあ誰かがアンドロイドに殺されたわけではないのか・・・・?」

 その時コータはハヤトに今日まで聞き忘れていた事を思い出した。いや、具体的には聞こうと思っていたが聞きづらかったのであえてずっと聞かないでいたことだ。

「ハヤト、今までお前に聞いていなかったことだけど、お前のご両親って・・・・?」

「生きてるよ。」

 ハヤトは即答した。

「今はロンドンで二人で難民として暮らしてる。僕をこのシアトルに送ったのはロンドンよりここの方がアンドロイド対策が万全だからって言ってた。後、語学勉強とかも兼ねてね。」

 ハヤトは軽い口調で言った。

 コータは何だか自分のことのようにホッとした気持ちになった。

 ふとコータは時間が気になって時計を見た。

「やばっ!もう四時半じゃん!訓練5時からなの忘れてた!」

「え、そうなの!早く行かなきゃ!」

「とりあえずまた夜な!」

 コータはその場でハヤトと別れて制服のまま全速力で基地まで走った。


放課後の軍での訓練が終わった。

 時間は既に夜の九時を回っていた。

 コータは訓練が終わり、更衣室に戻ろうとしていた途中でランク場に明かりがついているのが見えた。

 中の兵士の声が外まで聞こえてきた。

 すぐ近くにランク場があったのでコータは更衣室には行かずそのままランク場に向かった。

 ランク場の扉は半開きになっていた。

 コータはそのまま扉の中に入り、上に通じる階段を上がった。

 2階に上がるとすぐに中央にあるリングとそれを囲う観客席が見えた。

 プロレスのリングの八倍くらい、ちょうど学校の体育館くらいの広さの正方形のリングだった。

 そのリングの中で兵士達はいつもの灰色の軍服ではなく全身白い軍服を着て戦闘していた。

 コータは試合会場の中には入らず、外の入り口の右側にある受付に向かった。

 受付の窓口の中で女性軍兵が2人椅子に座っていた。

「あの、初めてなんですが。」

 コータは受付の女性軍兵に声をかけた。

「選手としての説明を希望されますか??観客としての説明を希望されますか??」

「選手としてでお願いします。」

 コータがそういうと女性軍兵は説明し始めた。

「このランク場ではシアトル兵と登録されている方のみが選手として出場できます。

 ランクは合計E、D、C、B、A、Sの6つのランクに分かれております。

 それぞれのランクはEランクが10ポイント以下、Dランクが10ポイント以上、Cランクが30ポイント以上、Bランクが60ポイント以上、Aランクが100ポイント以上、Sランクが150ポイント以上の選手に階級分けされます。

 このポイントは試合に勝利するとポイントが上がり、逆に敗北するとポイントが下がるシステムになっております。具体的にはE級選手に勝利すれば1ポイント、D級選手に勝利すれば3ポイント、C級選手に勝利すれば6ポイント、B級選手に勝利すれば10ポイント、A級選手に勝利すれば15ポイント、S級選手に勝利すれば21ポイント、勝利によってポイントが増加します。

 例えばE級選手が最短でS級に上がりたければS級選手に7連続勝利して147ポイント、D級選手に一回勝利して3ポイント獲得して合計150ポイント獲得することが最短という訳です。


 逆に敗北すると現在のポイントが減少します。

 ポイントの減少数は各階級によって異なります。

 減少数は勝利した時に獲得できるポイント数と同数です。

 例えばE級選手の一敗はマイナス1ポイント、D級選手の一敗はマイナス3ポイント、S級選手の一敗はマイナス21ポイント、それぞれ減少します。

 つまり階級が上がれば上がるほど、一敗の重みが増してくるというシステムです。ここまでの説明でわからないところはございますか?」

「例えばE級がS級に勝利した場合と、敗北した場合のそれぞれのポイントの増減について教えてください。」

 コータは女性軍兵に言った。

「E級がS級に勝利した場合はE級選手に21ポイント加算され、S級選手は21ポイント減算されます。逆にE級がS級に敗北した場合はE級選手は1ポイント減算され、S級選手は1ポイント加算されます。」

「わかりました。続きをお願いします。」

 (初めからE級がS級に挑んでもS級にとってE級に勝つメリットは少なく、負けるデメリットの方が大きいから引き受けてくれないんだな)とコータは思った。

「次に武器使用についてです。戦闘に公平性を持たせるため、武器は全てこちらの会場のレンタルの武器を使用していただきます。ただしオートマウェポン、AIR、ヒューマロイドによる戦闘用機械義足、義手の使用は勝利時の加算ポイントを5ポイント減少、敗北時の減算ポイントを5ポイント増加させていただきます。一般の武器、つまりこれら3種類の武器に該当しない武器にはこれらのペナルティはございません。」

  「あの、私ヒューマロイドなんですがつまり自分の普段使っている機械義手、義足は使えないということですか??」

  「左様でございます。」

 コータはかなり不安になった。この三年間でルイコウ博士に作ってもらった自分専用の機械義手、義足以外の機械義体での戦闘を一回もしたことがなかったからだ。

  「つまり私みたいなヒューマロイドが戦闘する場合、E級、D級の人に勝利しても1ポイントももらえないということですか?」

  「戦闘用機械義手、義足を使用する場合はそうなります。こちらには一般用の機械義手、義足の用意もございますのでそちらで戦われる場合はE級、D級選手に勝利されれば通常通りのポイントが加算されます。」

  「なるほど…わかりました。」


  「次に試合の申し込み方法についてご説明いたします。試合は選手と選手の互いのサインを得てとり行われるものとします。

 つまりどちらかがどちらかに試合を申し込んだ場合、申し込まれた側には試合の拒否権があります。ただし拒否権の行使は試合の前日までとします。当日の試合の拒否は不可とします。

 試合を申し込まれた側には拒否権があるため、申し込みたい側の人が試合を何人に申し込んでも全員に拒否されてしまい、何日も試合ができないような状況になる可能性もあると思います。

 そのような可能性をなくすため、このランク場ではチャレンジ制度というものを取り入れ得ております。」

  「チャレンジ制度??」

 コータはまた聞き新しい言葉に反応した。

  「チャレンジ制度とはじぶんより階級が一つ上の選手に試合を申し込む場合、その一つ上のランクの選手は試合を拒否できないという制度です。

  拒否する場合は医師の診断書による病欠届や何らかの説明書を提出する必要があります。何の書類も提出されないで試合を拒否された場合は、自動的に自分のポイントからマイナス1ポイント減算されてしまうというペナルティが課されてしまいます。」

  「つまりEランクの人ならDランクに、AランクならSランクの人にチャレンジ制度を使うことができるという訳ですね。」

  「左様でございます。」

 コータは(正直D級にではなくS級にチャレンジしたい)と思った。

  「次に勝敗の決め方について説明します。勝敗はどちらかの選手がリングから外に出るか、使用武器が破壊されて戦闘続行不可能になるか、気絶するか、降参するか、そしてこれが大事なのですがライフポイントがゼロになるか時間切れでの残りライフポイントの優劣で勝敗が決定します。」

  「ライフポイント?」

 コータはゲームの中でしか聞きなれない言葉に耳を疑った。

  「ライフポイントのダメージはこちらで指定するランク戦用軍服への攻撃によるダメージ率でリング上のモニターにある残りライフポイント数から減算されていきます。ライフポイントは100から計算していき、基本的に右腕、左腕への一回の命中でマイナス5 右脚、左脚への一回の命中でマイナス10、下腹部で20、上腹部で20、心臓で70、顔で35、頭で70が基本のベースダメージとなります。もちろん、銃等の飛び道具もあるため攻撃武器の種類、方法、防御武器の防御力によって計算方法は変わっていきますが、このダメージ計算をベースと考えてください。ちなみにダメージ計算は試合時に選手に着てもらうランク戦用軍服に備えられたダメージ算出機能で判定されます。ここまでで質問ありますか?」

  「・・・・大丈夫です。」

 コータはライフポイントの説明を聞いて面白そうだと思った。

  「なお、このランク戦に参加する場合、死亡同意書へのサインが必要となりますのであらかじめご了承お願いします。」

  女性軍兵の言葉に、コータは軍はちゃっかりしてるなと思った。


  「このランク戦の目的は全て対アンドロイド戦、AIR戦を想定した上での兵士の戦闘能力向上が目的であり、対人戦における戦闘能力の向上を目的としたものではないことをご理解お願いいたします。」

  「最後に、試合の申し込み、拒否は携帯の方から簡単にご手続きできますので気軽にご利用ください。」

 コータはその日は選手登録と死亡同意書にサインだけして帰った。

 ポイント制度の話を聞いて、ハヤトのマンションに向かう帰り道、ひたすらどうやって5日以内に150ポイント稼ごうかということだけ考えて帰った。


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