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ある日のことでした。
「モウソロソロ、タベラレルコロダ」
ロボットはついに、育ててきたニワトリを食べようと決意したようです。
最初からそのつもりで育ててきたので、その準備はすぐにできました。
リビングにあるダイニングテーブルの上には、白いお皿が一枚用意されていました。しかし、そのお皿の中には、まだ何も入っていません。そこには、ロボットの食料となる鶏肉を使った料理が入る予定だからです。
ロボットは、リビングのソファーで静かに眠っていたニワトリを見つけると、そちらに向かって歩き出しました。横たわっていたニワトリの身体を、ロボットは静かに両手で持ち上げます。
微かな振動で目を覚ましたニワトリは、ゆっくりと目を開きます。まだ眠いのか、何度も瞬きをしていました。ロボットが目の前にいたことに気づくと、ニワトリは「コケッ」と嬉しそうに一鳴きして、羽を広げました。遊んでくれると勘違いしたのでしょうか。ニワトリは、ロボットの胸の中で何度も羽をばたつかせています。
ロボットはそんな様子のニワトリを、無表情でじっと見つめていました。
ニワトリもまた、つぶらな瞳でロボットのことを見つめ返します。
「コケッ」
最期に聞こえたニワトリの鳴き声が、いつまでもロボットの耳に残っていました。
次回で完結になります<(_ _*)>