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 ヒヨコと一緒に暮らすようになってから、ロボットの家は少し騒がしくなりました。



 例えば、ある日のことです。

 そのときロボットは、右手にじょうろを持って庭に立っていました。庭にいたのは、自分で育てていた野菜たちに水をやるためです。じょうろに入った水を気持ちよさそうに浴びた野菜たちは、いつかロボットがつくる料理の材料として使われる予定です。



 そのとき、ロボットの足元に一羽のヒヨコが近づいてきました。そのヒヨコは、ロボットのことを自分の親だと信じ込んでいるようです。一緒に遊びたかったのか、小さな羽を広げながら、ヒヨコはその場で何度もジャンプをしています。



 それでもロボットは、ヒヨコに目もくれませんでした。ロボットにとってヒヨコは、あくまでも食材の一つだったのです。餌をあげて、ヒヨコが元気に成長してくれればそれでよかったのです。



 いつまでも遊んでくれないロボットを見て、ヒヨコはだんだん機嫌を悪くしてしまったようです。

 ヒヨコは突然、ロボットが育てていた野菜たちに向かって体当たりをしました。そして、次々とその野菜たちを小さな足で踏み潰していきます。



 ヒヨコが突然暴れたせいで、庭にあった野菜の多くが傷だらけになりました。


 それでも、ロボットは全く怒りません。なぜなら、ロボットには『感情』がなかったからです。



 ロボットは、ヒヨコが大人しくなるまでその様子をじっと見つめていました。そして、冷静さをとり戻したヒヨコが、庭に寝転がって気持ちよさそうに日向ぼっこをはじめた頃、ロボットはやっと散らかされた野菜を片づけることができたのでした。




 また、別の日のことです。

 そのときロボットは、久しぶりにリビングに掃除機をかけていました。その理由は、数分前に食事を終えたヒヨコが、誤ってダイニングテーブルの上から食器を落としてしまったからでした。



 床の上にある割れた食器を見つめながら、ヒヨコは申し訳なさそうに顔を俯けています。反省の態度を示しているのか、ヒヨコはダイニングテーブルの上にペタンとお尻をついたまま、微動だにしません。



 そんなときでもロボットは全く怒りませんでした。

 なぜなら、『感情』がなかったからです。



 割れた食器の破片を片づけた後、ロボットは念のために掃除機をかけました。もしまだ床の上に小さな破片が残っていたら、ヒヨコが怪我をしてしまう恐れがあります。それを防ぐために、ロボットは掃除機をかけていたのです。



 そしたら、いつのまにかヒヨコはダイニングテーブルから下りていて、掃除機のそばまで近づいてきていました。

 どうやらヒヨコは、はじめて見る掃除機に興味津々のようです。



 しかし、ヒヨコは掃除機のヘッドに近づきすぎてしまったようでした。ヒヨコの身体の一部が、掃除機に吸い込まれそうになっています。



 身体の小さかったヒヨコは、懸命に羽を広げながら何度も鳴き声をあげていました。それに気がついたロボットが掃除機のスイッチをオフにすると、やっとヒヨコの身体も自由になります。



 難を逃れたヒヨコは、掃除機から逃げるように慌ててロボットの後ろに隠れたのでした。


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