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こうした行動は、他のロボットたちには見られません。地球上で暮らすロボットたちの中で、自分の身体にひたすら食べ物をとり入れていたのは、このロボットだけでした。
ロボットが食事をするなんてことは、普通に考えればありえないことです。なぜならロボットは、何も食べなくても生きていける身体だったからです。
昔、地球に住んでいた人間たちの多くは、食事をしていたという話があります。そうしなければ、彼らはどんどん痩せ細っていき、中には餓死してしまう者もいたようです。
また人間たちの中には、『食事』を単なる生きる術として考えるのではなく、趣味の一つにしていた者もいたようです。きっと、多くの人間にとって食事は、生きるために大切なことであり、ときには心の中まで満たしてくれるものだったのでしょう。
しかし、ロボットは人間と身体の構造が違います。
人間のように突然お腹を空かせることもなければ、何ヵ月間何も食べなくても餓死することはありません。それにもし、ロボットが毎日食事をしたとしても、その料理を味わえることはなかったはずです。なぜならロボットには、味覚も感情もないからです。いくら人間の真似をしても、ロボットはロボットのままなのです。
つまり食事をするという行動は、この時代のロボットたちにとって、不必要な時間とされていたのでした。
そんな無意味な行動をとり続けるロボットのことを、周りのロボットたちはいつも不思議そうに見ていました。それは論理的に説明できない事柄だったためでしょう。中には、そんな仲間のロボットのことを、欠陥品ロボットだと勘違いした者もいたようです。
そうした勘違いをしたロボットたちは、食事をとり続けるロボットに対して、修理工場へ行くように勧めました。身体のどこかに異常がないか調べてもらうためです。
けれども、修理に訪れたロボットの身体には、どこにも異常は見られませんでした。それどころか、そのロボットは、他のロボットたちよりも性能が良く、誰よりも健康な身体だということが判明したくらいです。
ロボットが何度、修理工場へ行っても結果は同じでした。身体に異常は見つかりません。
でもなぜ、そのロボットが毎日食事をしていたのかは、結局、誰にもわからないままなのでした。