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いびつな世界に最後の花を  作者: ジックの使用人
1/1

孤独と邂逅、そして廃人へ。




この東京にも、平穏な時がかつてはあった。


だが、それは既に過去の事。今は、あらゆる物が跋扈し、はびこる世界になっていた。

整備をされないままになっていたアスファルトの道路からは、ちらと、雑草がたくましく生えている。

そこに咲く花が風に揺られている。


その脇を、宮本武蔵は通り抜けた。


「全く、なんでござろうかこの世界は。怪しげな物と、怪しげな人。挙句の果てには妖術使いまで。ここは道理の効かぬ、それがしにとっては、地獄同然でござらんか。」


彼は普段どおりの稽古を山中で始めようと、刀を構えて声を出していた。

そしてそのまま、気づいたら見たこともない建物が広がる、この阿鼻叫喚の世界に居た。


周りを見渡せば、異形の者が、大勢、その力を交えていた。

武蔵は、とりあえず身を隠し、戦いにならないように、してきた。


食べ物は近くの木でなっている食べれそうな物を食べた。だが、


「腹は減るのう・・・・・・・・・。」


武士は食わねど高楊枝、の心がまえは持ってはいるが、それでも腹は減るものだ。

すきっ腹を抱え、周囲を警戒しつつ路地裏を歩いていると、曲がり角から一人の人間が歩いてきた。


背中に、大がまをつなぎ合わせたような武器を背負っている。

その顔は虚ろだったが、武蔵はこの男を日本人だと思った。


顔が、日本人の様なのだ。「

このおかしな世界に、同胞が居るとは!」

と武蔵はその喜びに、逃げるにも忘れ話し掛けた。


「もうし、おぬしらは、この異なる世界にて、同じ日本のお人とお見受けいたすが?」


その怪しげな人は、口を開いた。


「・・・・・・・〇▽×☆〇◇?」


それを聞いて武蔵は、この男がどうやら日本人でないことを悟った。


そして、期待を裏切られた感情からか、それともこの男の懐に持っていた、おにぎりのような物を取る為

か、刀を抜いた。


「人の食べ物を食べる為とは、それがしも地に落ちたのう。侍の端くれにもならん。・・・・・だが、こうでもしなければ生きのびなければのう。」


武蔵は二本の刀を持ち、走り寄っていった。


相手も少し慌てながら鎌を手に持つ。


近寄る時、ふとむさいこの者が聾唖(目や耳やら聞こえない)者ではないかと思った。

だが、その考えは目の前のおにぎりのような物で、あえなくすっ飛んでいった。


いつだって、食欲はすべてを制する


「でええいっ!」


武蔵は大小の長さの違う日本刀を、同時にたたき付ける。


相手はそれを、思いっきり鎌を振るう事で、振り払った。

その動きを見て、武蔵は勝てると確信した。


左の小刀で、突きを見舞いつつ、右手の刀でケサ斬りを見舞おうとした


しかし、その時、後ろから、火の玉が自分の顔を通り抜けていくのを、武蔵は理解した。


「なっ!」


その火の玉は、路地にあった家に当たると爆発した。それを見て、武蔵は目の前の者と距離をとり、

後ろを振り返る。


そこには、黒い服を全身に着た、大勢の男たちが杖を持って立っていた。男達はさらに火の玉を作り出している。


武蔵は、それを見て後ろに顔をやりつつ、聞いた。


「のう・・・・・・・手を組まないか?」


おにぎりで一瞬沸騰しかけたが、どうやら逃げ場のないこの路地で、武蔵は冷静になった。

その、鎌を持った男は、きょとんとしたしていたが、すぐに首を一回立てに振った。


「・・・・・・・・いざいざ。」


武蔵はそれを見るや否や、背中を預け、向き直って、この黒服の男達に向かって、刀を構えた。


「・・・・あ、う?」


戸惑っている声が聞こえた。

無理もない。この世界で、簡単に信じることは、死を意味する。


だが、武蔵はこの得体の知れない、今殺し合いになった、男の目を信じた。

虚ろであっても、その奥に、存在する、何かを見た。


それに今は目の前の怪しい男達と戦うと決めたのだ。

ここは逃げてはいけない。

それに、あの火の玉を、


刀で切りつけてもみたいのだ


火の玉が飛んできた。さっきよりも大きい。その火力は、話に聞いた狐火よりも、遥かに恐ろしい代物だった。

武蔵はその恐れを捨てて、一歩踏み出した。




爆発音がすると、その火の玉は固形の形になって割れ、ばらばらと地面に落ちた。それは、灰色をしていた。立ち止まった男の右腕は黒く染まり、左腕は、白くなっていた。

(火が固まった?・・・・・・・・・・・いや、それよりもあの者は、何者でござろうか!)

武蔵はあまりにとっぴな事に暫くほうけていたが、男は構わず黒服の男に突っ込んでいく。その姿をみて、武蔵も思わず刀を、握り締めて走っていった。向こうの黒服の男達も、手に剣を持ち応戦しようとしている。と、男はその黒い右腕を、相手の男に振るった。

轟音がして、男が家に突っ込む。家は崩れていった。

それをみた杖を持った者が、再度火の玉を放つ。その数は、何十個もあった。口のきけない男は、後ろから迫ってきたその火の玉を、白く染まった左手で跳ね返し、軌道をそらしていった。瞬く間に路地の家々は、火に包まれた。杖を持った男の顔が驚愕に占領される。だが、再び火の玉を作り出そうとする。

そして、崩れ落ちた。その脇には、刀を振りぬいた一人の侍が立っていた。

「おぬしらが、如何に妖術を使っても、我らは倒せぬでござろうよ。いざ、覚悟!」

今や、形勢は逆転していた。黒服の男達は、ありったけの力を振り絞って応戦した。

暫くして、一つの路地から二人の煤けた男が、ふらりと、おにぎりを齧りながら出てきた。


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