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異端の魔術師(マジシャン)~神器の継承者~  作者: arandora
気がつけば外国でメイドハーレム
5/6

護衛候補生達の紹介

 廊下を通って来た先にある大広間は、まさに別世界であった。

 決して贅沢とは言えないながらも、安物は使っていないと分かるインテリアが視界中に広がり、目の前には若い頃の鉄平の祖母であろう当主の肖像画が描かれたキャンパスが飾られていた。

 更に、明らかな異質な力で浮かされている、縦横無人に広がる屋敷内の水源として作られたであろう水路。

 真ん中に来賓を迎えるときに中央から姿を現せる様に作られる一見質素な、しかし見るものが見れば最高品質の階段が5階上まで一気に上がれるようになっていた。


 1階は主に来客との歓談の場なのだろう。

 乙葉とニーナに案内されて辿りついたその歓談の場の大広間では、昨日(昨夜)鉄平を締め落とした老人(祖父の泰三)が大手を振って鉄平立ち人を迎えていた。


「お~い、てっペ~い!コッチじゃコッチじゃ。互いにモテる男同士、久々に語り合おうじゃないか!ん~~?か~かっかっかー!」


 そう言って鉄平を誘う泰三の手には、朝っぱらから酒瓶(銘柄はウォッカ)が握られていた。そして、見るからに赤ら顔で、両手にはここのメイドと思われる、私服姿の美女達が周りを取り囲んでいた。

 しかも、年寄りやることだと思って無視しているのか、明らかに胸を揉まれているのに平気な顔で泰三の首に手を回している美少女(見た目鉄平と変わらない、15.6の少女)までいる。

 年寄りのハーレムとはまさにこの事であった。


「……祖父ちゃん。もしかして、ここのメイドさん達全員に手を付けた訳じゃないよな?」


「な!?ま、待て鉄平!誤解じゃ!ワシはいずれお前が気に入ってお前の物になるかもしれんオナゴには手を出してはおらんぞ!?本当じゃ!!」


「さて、どうかな?……所で、昨日はいきなりでビックリだったぞ?爺ちゃんは見た目も凄いが中身も凄いんだから、俺みたいな若いやつに本気の締めはやばいって」


「ははは……すまんすまん。つい、嬉しくての?……それよりじゃ、鉄平」


「ん?なんだ?爺ちゃん」


 出会いの挨拶もそこそこに切り上げた泰三は、鉄平に昨日の遅れた要因の問いただす。


「なんで道に迷って居たのなら連絡を寄越さなんだ?そうすれば美琴さんの側近を速攻で向かわせて、もう少し早く再会できたろうに」


 そして、その事に「ああ,そのことか……」と、手をポンっと合わせてから、鉄平は返事をする。


「それがさ?人工知能搭載の最新式端末のバッテリーが無くなっちゃっててさ。そんで地図を頼りに来ても爺ちゃんの地図が大まかな所しか書き込んで無かったから、全然違うところを行ったり来たりだよ。それに、空港で運悪く注意されてたひったくりにも遭っちゃうし。まあ、カバンには着替えしか入れて無いからそれほどの痛手でも無いけどな?」


「!!なに!鉄平の荷物を持ち逃げした奴が居るじゃと!!?美琴さん!」


「い、いや、爺ちゃん?」


 祖父の突然の怒りの剣幕に怯える鉄平。

 更に事態は思わぬ方向へ向かった。

 いつの間にか泰三の背後に立っていたこの屋敷の主、皇美琴に泰三が問いかけると、美琴もまたそれに素早く反応したのだ。


「ええ、即刻空港管理室に問い合わせ、鉄平さんが着いた時刻の前後の監視カメラの記録をあたらせます。着替えのみといっても犯罪は犯罪。厚生の余地があるかどうか見極めねば行けませんから」


「は!」


 隣に控えていた、昨日のソルトとは別の執事は、返事と共に音もなく消えた。

 そして、それを確認すると美琴は鉄平に振り向き。


「鉄平さん?勘違いしないで頂きますが、泰三さん?…‥夫?……お爺さまの怒りは孫馬鹿ですが、私は貴方のお婆ちゃんであると同時に、ある意味この国を影で見守る役目もありますの。その為、犯罪行為に関しては、発覚次第対処し、改善策などを打ち出さなければなりません。これは貴方の為だけでなく、否、寧ろこの国全体の為の措置。貴方が気に病む必要はありませんよ?勿論、貴方の無事を確かめられた今でこそそういう判断が下せるので有って、貴方がこの場に居ない状況でそういう事実を知ってしまっていたら、対応は変わっていたかもしれませんがね?」


「は、はあ……」


 言われても一般庶民代表の鉄平には実感はない。

 単に自分の遭遇した出来事が変な方向に発展していると思うくらいだ。


「それよりじゃ、鉄平!」


「わ!なに?爺ちゃん」


 暫く惚けていると、ハーレムから離れ、近くに寄ってきた泰三に徐に高い高いをされ焦る鉄平。

 その様子に、美琴もまた苦笑している。


「ワシにも詳細は分からんが。何やらワシの先祖には変な血が流れているらしく、ワシと霊子?が酷似する鉄平にも同様の血が流れているようなのじゃ。しかも鉄平にはこの皇一族の当主、美琴さんの血も加わっていることから、複雑な何かがあるらしく、何かの検査をするらしい。倅にはなんにも無いと思うんじゃが、鉄平にはあるらしい。しかし、ワシには全く分からん。すまんの?鉄平」


 と、本当に申し訳なさそうに言ってきた。

 全然……と言えば嘘になるが、あまり気にしていない鉄平は祖父に向かって


「いや、俺は別に良いよ?第一、俺に何か特別な才能があるなら、どんな物があるのか知りたいし、念願の魔法が使えるなら嬉しいし」


「うう……許してくれるか。優しいのう、鉄平は」


 目元を拭い大げさに感動してから、徐に顔を上げたあと泰三はとんでもない事を言ってくる。


「それではこうしよう、美琴さん。もし鉄平に何も能力が発現しなくても、ワシの護衛の彼女らを何人か鉄平の護衛に付けると言うのは。若しくは鉄平の嫁候補を見繕って護衛にするとか」


「お、おい爺ちゃん?!」


「それとじゃ、、確か端末?のバッテリーが無くなったと言ったか?あれは脆いからの。大樹(鉄平の父親)に聞けば充電はしていたと言ってたから、そんなに早く切れることは無いはずじゃから、恐らく他の要因があるのではないか?ちととどろき君に見て貰え。……居るかの?」


「え!?ちょ!?何がどうなってんだ!?」


 いきなり話がコロコロ変わる祖父に戸惑う鉄平を他所に、話は進む。


「はい、ここに」


 そう言って鉄平達の前に進み出た若い執事。

 その声からは男か女かは判断が出来ない。

 見た目黒髪黒目で、長身で中性的な優男(女?)風のその執事は、進み出ると直ぐに鉄平の横に回り込んだ。


「鉄平様、端末を拝見します」


「あ、はい」


 そう急かされ、ポケットから最新機種の端末を取り出す。


「……ふむ、少しデータを拝見してもよろしいですか?」


「……え?」


 突然の提案に固まる鉄平。


「ど、どういうことですか?バッテリーが無くなったんじゃ?」


「いや、この持ってみた感じからして、恐らく端末のデータの許容範囲を超えた何かが中に入っている模様です。なので、要らないデータを削除して復旧してみますので、許可を頂きたいのですが?」


「……え~と……」


 非常にマズイ展開になったと内心で思う鉄平。

 それというのも、鉄平は端末内の許容範囲一杯に青少年らしいデータを保存しているのだ。

 もし、この見た目中性的な執事が男なら、同性同士この女性が多く集まる場で後の主になる可能性のある鉄平の黒歴史の公表は避けてくれるだろう。

 だが、もし女性なら……


「?どうしました?何か見られてはイケナイデータがあるのですか?」


 そう言ってさり気なく鉄平の耳元へ口を近づけると、微笑みながら驚くべき事を言ってくるのだった。


「(ご心配なく。僕はこのような格好ですが、女です。そして、魔法は物質に対する内部干渉。なので、今持った時点でこの中に保存されている大部分のデータは拝見させて貰いました。その上で申し上げますが、この中に主が適度にその方面に関心があるのを嫌がる女性は居ません。大体泰三様からして未だ現役ですからね。鉄平様がそう言う御仁でも、大部分は頬を染めて恥ずかしがる程度ですよ。僕はいい加減見慣れているので感情に出したりはしませんが)」


「(……そうなんですか?けど、そこまで分かるなら、どうしてわざわざ確認する必要が?)」


 鉄平としては当然の疑問が湧いてくる。


「(それは、幾ら魔法でも、使い手によっては出来ることと出来ない事があります。僕は物質の内部に干渉出来るといってもまだまだ未熟で、電源が供給されていない状態での魔法は、内部の閲覧はブロックされている物以外は見れますが、内容の消去並びに付け足しと言った、介入は無理なのです)」


 今の時点で内容を確認されているのは確定。

 更にはこの事で、未来の主候補のこの年齢特有の性癖が屋敷にいる大多数の女性にバレることも確定した。

 なぜなら、泰三が興味深そうにこちらを見ていたのだ。

 今の状態でこっそり対処してくれと言っても後で追求される。

 なので、もうあまり隠す必要も無いと思った鉄平は、観念して許可を出す。


「成る程……。分かりました、どうぞ」


「はい、少々お待ちを……」


 そう言って端末を両手でハサミ、その両手の隙間から魔法陣が出現し……一瞬で消える。


「どうぞ」


 そうして轟が開いてみせた端末には、充電してくださいの文字があり、次の瞬間には満タンになる。


『充電完了しました』


 というメッセージが入り、復旧が終わったという事が証明された。

 更に、手元で操作していないにも関わらず、こちらに画像を見せたまま保存しているデータを表示する。

 そして、その画像を見た鉄平の近くにいた女性達の反応は色々。

 しかも、昨日会っていた者も、会っていないものも加わって興味深げに見ていたから、大変。

 それぞれが次の通り。


「……////」顔を赤くして目を逸らす者(ニーナ、ルナ等)。


「あら兵藤君、噂通りの趣味ね。これが健康な男の子って奴なのかな?」と、何か納得している者(乙葉)。


「うわ~~」珍しそうに見入っている者(若いメイドなど)。


 しかし、轟の言ったようにあからさまな嫌な表情や、ゴミ虫を見るような目の女性は見た目一人も居ない。

 祖母だという美琴でさえ微笑ましく見ているだけであった。


 そうした公開私刑の後、どれを残すか問われた鉄平は


「もう、どれでも良いです」


 と諦めた感じになっていた。


「分かりました。画像を小分けにして、配分の高い画像(露出が多い、又は全裸)を多めに残して後は1割程消去します。それで大幅に負担が減ってパンクする可能性も殆ど無くなるでしょう。」


「……」


 本当に優秀(主に男性主の性関係に関して)な女性執事な轟さんでした。


「……これで大丈夫です。どうぞ」


「はい」


 ひと仕事やり終えた満足気な轟と、何故か燃え尽きたジ〇ーになっている鉄平。

 その一連のやり取りに運悪く?画像を見れなかった泰三が頭を傾げながら。


「ふむ?何故か鉄平が沈んだ様子になっておるが、端末は無事直ったのじゃろう?」


「ええ、カ・ン・ペ・キです。余分な物も含めて♪」


「?まあ、それならいい。そして、確か地図?のことも言っておったが、ワシら一般人は魔法師の様に魔装機をとかいうのを扱えない分、科学技術の分野に頼らねば成らんのじゃから、ケチくさい事はしないで、衛生から送られる地図も良い物を落とさんと迷子になるぞ?魔法師の奴らは魔装機とか言うので魔工技術とか言う物を用いた物凄い物を扱えるからの?」


「そなの?」


「ああ、鉄平も見たかもしれんが、魔工技術に比べれば、科学技術は遅れておると言わざるをえんからの?しかも、魔法師は科学技術も魔工技術も両方を使えるから、更に便利さが違うといった腹立たしいものじゃ。魔法を扱う者は魔装機と言う個人向けの魔法機械を使えば、極自然に力を流すだけで使えてしまう物らしいからの。ワシもこの数十年でそれを嫌というほど味わったわい」


 「悔しいがの?」と言って一般人の代表のように話すが、鉄平から見れば、この祖父こそ異常な者代表なのであまり共感することが出来ない。


「それと、話は戻すが護衛に関して美琴さんは意見はあるかの?」


「え!?またそっち!?」


 もうついて行けない鉄平なのであった。

 そこで美琴が助け舟を出す。


「まあまあ、泰三さんの意見も尊重した上で、それらの事は私の方で色々としておきますから、先ずは話の続きに戻り、儀式の事に移りましょう」


 美琴がそう言って、周囲のメイドを見渡し一人足りない様だが、必要人数はいることを確認すると……。


「では、粗方の必要な者も居ることですし、これから儀式に立ち会うメイドの紹介をしましょうか?……一人足りない者は、直に向かうでしょうし。今いる者だけを紹介しましょう。先ずはニーナ?」

「はい、ここに」


 そう言って鉄平の背後に控えていたニーナがスっと美琴の前に姿を見せる。

 その姿は先ほど鉄平に用意されていた部屋でバカをやっていた人と同一人物とは思えない、洗練された動きであった。


「そして乙葉?」


「はい、おばあ様」


 ニーナと同じく、音もなく美琴の前に現れる乙葉。


「最後にクロエ?」


「は、ここに」


 そして、いつの間に其処にいたのか、鉄平には全く気が付かなかった、クロエを呼ばれた女の子。

 その子は何処と無く昨晩のリルカに似ていた。


「それでは、恐らくニーナと乙葉に関しては簡単にはしているでしょうが、改めて全員自己紹介をなさい。……先ずニーナから」


 そう言われてスっと前に出たニーナは、鉄平の前で右手をへその前に添える形の挨拶をしてから名乗る。

「では。……昨日も紹介しましたが、私ニーナ・レイルロードといいます。ニナで構いません。そして、先ほどもしましたが、一般魔法は基本使えて、更に固有に召喚魔法が使えます。これからよろしくお願いします」


 言い終わった後に、また最初と同じ礼をしてから一歩下がる。

 そして、次は乙葉。

 これもまたニーナと同じ礼だ。


「私もさっき話したけど、兵藤くんの遠い遠い親戚に当たる、そして、同じ中学の同じクラスの委員長をしてる、村雨乙葉です。公私共によろしくね?兵藤くん」


「あ、ああ。よろしく……」


 誰もが見惚れる様な笑顔で語りかける乙葉に、鉄平は既にメロメロであった。


 そして、最後に対面は初めての……しかし、昨日のリルカと同じような顔をした、髪も眼も同じ色の少しだけ背の高い女性が前に出る。

 そして、他の二人同様の挨拶をする。


「私はクロエ・キリングだ。恐らく昨日貴方を護ったリルカに似ていると思っているとは思うが、それもそのはず。私はリルカの姉だ。そして、リルカは結界を得意とするが、私は暗殺や隠密系の魔法を得意とする。だからという訳ではないが、周囲の警戒は任せてくれ。貴方の安全は私が全力で守ろう」


「あ、はい。よろしく……」


 いやに堅苦しい人物なのはさておき、実力は問題ないのだろう。

 なにせ実の孫を護るために選んだメンバーなのだから。


「では、これより儀式に入りますが……。もう我慢できませんから、鉄平さん?こちらへ」


「?はい……」


 美琴にそう言われて素直に近寄る鉄平。

 すると次の瞬間……。


「!!ん……んん??」


 思いっきり抱きしめられた。

 しかも齡い80近いとは思えない力強さ。

 更に女性としても膨らみも些かも衰えていない、最盛期とも言える肉体だった。

 その事に鉄平は自分の実の祖母(他人から聞いた話を信じるならだが)に思わず欲情しそうになる。


「……やっと会えた。……抱きしめられた。本当は危険な事はして欲しくないけど、ごめんなさいね?そういう訳にも行かないの。貴方は知らないけれど、泰三さんの孫でもある故に大きな役割があるの。これから様々な事が貴方に降りかかるでしょうが、なんとか生きて私たちの元に帰ってきてちょうだいね?」


 鉄平を抱きしめながら、耳元でそれだけ言うと、美琴は大人しく鉄平を離す。

 その顔は抱きしめた事に満足したように微笑んでいた。


「……コホン!では、次に泰三さんから何かありますか?」


「……?ワシか?そうじゃな~。……おお!鉄平の護衛の件で思い出したぞ。鉄平!」


「え、なに?」


「お前は夏休みの課題は勿論、送ってきて貰う手筈になっておるんじゃろ?」


「ああ、ただ遊びに来るだけじゃダメってオヤジが言うから、取り敢えず全部の課題は明日か明後日には届くだろって」


「ふむふむ」


 鉄平の答えに、頷きながら思案すること数秒。

「では、ニナちゃん。それに乙葉ちゃん。鉄平の勉強を見てやってくれるかの?ニナちゃんは確かジュニアスクールという場所でトップの成績だったそうじゃからな?」


「ええ、覚えていて下さり光栄です。その私で良ければ喜んで」


 泰三の申請にニッコリと微笑みながら快諾の意を表すニーナ。


 更に泰三は続ける。


「そして、乙葉ちゃんは鉄平と同じクラスらしいから、どんな事をやっておるか分かるじゃろ。二人で協力して鉄平の頭を鍛えてやってくれ。クロエちゃんも出来るなら頼む」


「「「はい」」」


「勿論、訓練もそうじゃが一般人のワシとしては取り敢えずは勉強が主じゃ。孫がアホでは他所様に自慢できんからの?身の回りの事については二人共美琴さんから交代で鉄平の世話を任せられておるじゃろ?」


「いや?今朝の時点で既に世話をしてくれるって話になってたぞ?……なあ?」


「ええ(はい)」


 その鉄平言葉に、爺さんが大げさに反応する。


「なんと!ワシに似て手が早いの~。それでこそ我が孫じゃ!かーかっかっか!」


「い、いや……爺ちゃん?言っとくが、俺はまだ何もしてないぞ?」

「な!それはイカン。男たるもの据え膳はキチンと頂かなくては健康とは言えんぞい」


「まあまあ、其の辺は本人の自由意思に任せましょう、泰三さん。……それでは、まだまだ話はあるでしょうが、儀式も進めなくては成らないので、早速演習場に行ってもらいましょうか?……ルーシェン?先ずは私とソルトをコルダと夢道の待機する場所の前まで転送してくれる?」


「は~い」

「!」


 何処からともなく現れた陽気な声に、鉄平は驚いて声もでない。

 しかし、周囲を見ると、慣れているのか鉄平の驚きに苦笑しているものが殆どだ。


「じゃ、ソルトさんもこっち来て?」

「ええ。毎度お世話になります。……頼みます」


 ソルトの言葉に手を横に振りながら


「いえいえ」


 と言って固まった二人に向かって魔法陣を展開し……。


「『人体転送ラ・コール』」


 と、一言詠唱するだけで、二人はその場から消えた。

 その事に唖然とする鉄平。


「じゃ、先ずはあたしの紹介をしてから、演習場に一緒に行きましょうか?」


 と言ってから、ルーシェンと言われた女性は鉄平の方に目を向け、簡単に自己紹介を始めた。


「あたしはこのニナちゃんの上司で、ロイヤルナイツ候補生の指導的立場の者だよ。子供相手の指導教官とはまた違うけどね?……まあ、それは兎も角。名前はルーシェン・ハワード。国籍は美琴様の所に来てからはイギリスに帰属したけど、出身はアメリカだね。そして、ロイヤルナイツはあたしの後輩に当たるけど、実力はあたしの上っていう微妙な立場の人なのさ」


 ハーフの緑の髪を前で半分に分け、後ろで括ってポニーにしているニーナと背丈は変わらない女性だ。

 そのルーシェンの説明に、ニーナは付け足しをする。


「そして、このルーシェン教官は自分で言った通り、私だけでなく私たちロイヤルナイツ候補生全体を管理してるの。けど、手癖は最悪の悪戯好きで困るのよ……って、またですか?!」


「な~んだ。びっくりさせようかと思ったのに、ニナちゃんは気づいてたか」

「「「え?!いつの間に?!」」」


 見れば、今鉄平の前に居たと思っていたルーシェンが、次の(ニーナが喋りだして注意がそちらに行った)瞬間には、既にニーナの背後に回って胸を揉んでいた。

 あまりの早業で、これには慣れている皆も驚く。


「そりゃ~、そんだけ揉まれたら普通は気付きますよ。それでなくても貴女は油断していると何処から襲って来て服を脱がせてくるか分からないんですから」


 そう言いながら「は~」と、本当に困った様子になるニーナ。

 そんなニーナを見て、何故か口元を歪ませてから鉄平の方を見て一言。


「もう、そんな事言ってると、コウだぞ!!?」


 と、ワザと少しだけ位置をズラしてニーナの体全体が見えるようにしてから……物質(体)転移魔法を使った(物体の場合は無機物の為、一々詠唱の必要はない)。


「……ぶっ!」

「……え?……キャーー!!」


 突如裸になるニーナ。

 そして、それをしっかりと見てしまった鉄平。

 思わず鼻を押さえるも、鼻血は吹き出してくる。

 しかも、ご丁寧に何故か鉄平の前にテーブルが置かれ、そのテーブルに転移したニーナの衣服が畳んで……まるで人が入っているかのように並べられた状態で……置かれていたので、興奮の度合いに拍車がかかる。

 そして、被害者のニーナは思わずルーシェンに抗議しようとするが、それよりも鉄平に見られている恥ずかしさが優先して大事な部分をしゃがみながら隠す。

 その為、殴ろうにも手が塞がってしまって殴れない。

 その間も鉄平に見られる悪循環。

 周りのメイドも「サービスは必要ね」とばかりに一々鉄平の目を塞ぐことはしない。

 鉄平と同じクラスで、女性の裸を男の子に見せたくない乙葉でさえ、微笑みながら見守っている。

 なので、ニーナも仕方ないので「もう!これだから教官の手癖の悪さは嫌いなんです!」と涙目で言っているのみだ。

 勿論、等の本人は何時ものことなのでなんとも思ってないのだが。

 そして、鉄平はこの機会にと、鼻血を引き出しながらもマジマジとニーナの綺麗な肢体を観察している。

 シミのない綺麗な白さと、程よい肉付きの締まった体。

 小さくもないが大きくもない、程よい大きさの胸。

 それを鼻血を気合で我慢しながら見ていると、不意に放送が流れる。

 

『ルーシェン?いい加減戯れはそこまでにして、皆を連れてきなさい。こちらは既にシュミレータの準備を終えてるわよ?』


「……ち、もうちょっと遊びたかったのに。……まあ、良いわ。3人とも、主が待ちくたびれてるから、あたしが纏めて送ったげる。一つの所に固まって?……ニナ?もう悪戯はしないから早く来なさい」


「……」


それから服を着直したニーナを宥めてから、ルーシェンの転移魔法で鉄平以下3名は儀式会場である演習部屋へと転移した。

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