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異端の魔術師(マジシャン)~神器の継承者~  作者: arandora
気がつけば外国でメイドハーレム
3/6

浴場での一時

 任務から帰ってきたと同時に後継者の鉄平を搜索に出ていたニーナにとって、久しぶりのお風呂は念願の物だった。

 しかし、それは1人の時や同じメイド仲間や仕事仲間との時に話で、突然同い年程度の男の子相手にお風呂の世話をしろと言われても、戸惑いの色の方が強い。

 だが、主の孫であり、後継者に言葉より先に手を挙げてしまった事も事実。

 例えば、これがそこそこに若い年頃の男性が相手ならこの身を差し出し、初めてを捧げる迄はいかなくても、色々と嫌な頼みを引き受けなければならない位の迂闊な行動であったはずだ。

 まあ、その点ではニーナの今使っている個有魔法の一つ、召喚魔法の風の聖獣『風聖騎フセキ』に担がせて浴場に移動している鉄平は幸運な事に、嫌がる相手に対しての乱暴な行為はしない様な人で安心できそうだ。

 何故そう言えるかは主の話で大体分かるから。

 まあ、助けた後の事と、先ほどの会話でその人隣はそこそこ分かる感じだったから、ニーナ自身も理解できるが……。

 そして、隣に付いて来ながら鉄平の様子を診察しているミューレも隣の監視ルームで見張っていてくれるのだから、万一の事は無いだろうと思う。


「ふ~、やっと着いたわね。大きな浴室なのは良いけど、屋敷が大きすぎてここまで来るのに毎度毎度何分も掛けて来ないと来れないのが唯一の欠点よね。これで、ソル様の次元跳躍魔法を一般魔法師にでも使える魔装具としてライルさん達が開発してくれれば、少しは楽になるんだけど……っと、愚痴を言っても仕方ないか」


 色々と愚痴を零しながら、どうにか大浴場に着いたので、先に別れたミューレがそろそろ医療キッドとモニター類を起動してくれているはずだから、さっさと脱衣所に入ることにする。


 脱衣所には幸いに子供達の誰も入っておらず、きちんと整理されたままだ。

 普段ならこの時間帯には訓練と作法の授業を終えた、ジュニアスクールから戻ってきた子供メイド候補生達の団体さんが我さきにと浴場を使うのだが、今日は予め次期主(鉄平)が日本から来ると泰三に聞いていたようで、皆我慢しているのだろう。

 彼らの入浴は普通の家庭のそれとは違い、極端に遅い。

 それというのも、彼らを指導している担当教官のシールズが、無駄なことが大嫌いな性格のため、授業の全てが終わった後でないと入浴の許可を認めないからだ。

 普通は女性の生徒が大半な訓練生なだけに、汗を掻いた後に一旦は座学の授業前に風呂に入らせるのが良いと思うのだが、時間の無駄の一言でそれを禁止している。

 その事はニーナも幼い時、同じシールズに教わった生徒として苦笑を禁じえないが、今の生活を思えばそう育てられた事に感謝もしている。

 それは何故か?

 それは今の魔者相手の駆除や除霊、討伐の任務が、汗を掻いただけで抜け出せるほど簡単な物が何一つないから。

 気を抜けば即、死に繋がる物で慣れていないと本当に我慢が出来なくなる。

 その点、終わった後のひとっぷろは格別なのだ。

 普段の彼らの使ったあとの脱ぎ散らかした様のあたかも戦場のような光景を見れば納得も行く。

 そして、ここまで整理されたママなのは、使っていない証拠だ。

 最悪、今日は諦めさせたかだろう。

 そのお陰で、何時もより感覚的に広々と感じる脱衣所のベンチ周りに、さっさとフセキから鉄平を降ろして一先ず横たえる。

 そして、彼の衣服を順番に脱がしていく。

 すると、当然男のアレが姿を見せて来る訳だが、脱がせたりするのに目を瞑ってするわけにもいかず、顔を真っ赤にしながらも、なるべく触らないように脱がしていく。


「……ふ~、なんとか脱がし終わったわね。……んじゃ、今度は自分のを脱ぎますか。って言っても一瞬なんだけど……」


 自分の服を脱ぐのにここまで手間が掛かるとは思ってもいなかった。

 しかし、脱ぎだせば早い。

 普通の戦闘用スーツ場合、魔装機に入れてある戦闘服は数種類あるが、簡易型の物は肌に密着するレオタードのようなインナータイプのスーツのみ。

 そのスーツの上に、今のドレスの私服を着ているのだ。

 この私服は何故かは知らないが、魔装機を起動させると同時に入れ替わりで腕の魔装具に収納される。

 そしてインナーも、ブレスレット型の魔装機の別枠に収納すれば座った状態でも、一瞬で一糸まとわぬ裸体が顕になる。

 その後は主に許可されたバスタオルを苦し紛れに体に巻きつけるだけだ。

 本来(泰三の世話の場合)ならインナーをつけた状態で世話をするのだが、あの悪魔ミューレの入れ知恵で、より一層恥ずかしい状態を晒さねば成らなくなった。

 そして、バスタオルを巻きつけた状態でベンチに腰をかける。


「ほんっとに数年前迄が嘘の様な技術の進歩よね。この機構を編み出した人が、ホントに私と同じ年齢なのか、ホントだとしたら敬意を持って応対するのに値するわ……」


 ベンチに腰を掛けた状態で思う。

 毎度の事ながら、便利になり過ぎた魔装機構に感心しつつ、その開発者にも感心すると……。

 主が抱える数百人のメイドや執事の中には、当然ソルト(次元魔術師)やコルダ(電子魔操師)の様な、あと少しで卓越者と呼ばれるに値する実力者も数多く存在するが、やはり技術面では魔法大国日本の技術力は他とは隔絶した域にある。

 魔術の実力ではその歴史の深さから数歩先をイギリスやアメリカと言った西洋の魔術組織は歩んでいるが、事開発面では両国とも日本には数歩の遅れを取っている。

 だからだろう、今回主が鉄平を後継者として迎えられる年齢(現在のイギリスでは、ハイスクールに入学間近の男性は成人として捉えられる)に達した事で、その第一の試練として日本の魔法学園への派遣を要請すると考えたのは。

 その前段階として地元のジュニアハイスクールで多少の経験を積むのも必要だということで、日本で中学3年の今の時期を機に話をすすめたらしい

 そして、その護衛兼友人として自分たち候補生の実力者を日本に送る計画を先ほど話して聞かせたのは。


「しっかし、幾ら何でも今まで魔法の仕組みはおろか、魔法陣すら見たことがあるかどうかも分からない人に、事前知識を与えた状態だけで未知の技術を得てこいって感じの任務は正直荷が重いと思うけどな~?……まあ、例え失敗してもその失敗を経験として自分の糧にさせようってのが狙いでしょうけど。……あ、起きたの?待っててね?今お風呂に入れたげるから。どうせまだ疲労で体が思うように動かないでしょ?」


「……グ~」


 バスタオル越しに胸を揉まれている感じがして腰掛けているベンチの横に目を向けると、目は閉じているが恐らく薄目を開けているのだろう、迷いなくニーナの慎ましい胸を両手で揉んでくる鉄平が居た。

 しかも、中学生の癖に何故か妙に手馴れている手つきだ。

 ただ揉んでいるのではなく、そこそこ強弱を付けているので、自然と感じてしまう。

 なので、感じているのを悟られないために、胸から手を退かして彼の体を腕のブレスレット型魔装具にインストールしてある一般現代魔法の風の元素魔法(召喚魔法で運ばないのは浴室の結界と、その強度の脆さの為。施設内の結界はその性質上特殊(覗きや精神操作の魔法等攻撃力とは無縁だが、それだけに個人の資質による対処が必要になる物))な魔法を未然に防いではくれるが、逆に攻撃性の高い魔法は素通りしてしまう。現代魔法が使えるのは、言い方は悪いが万能故に威力が小さい為。その為現代魔法は、個人の固有魔法に掛かれば(この屋敷のメイドのみではあるが)何の障害にも為らないのだ)で体を軽くしてから、その両脇に手を入れて抱えて浴室に向かう。

 普通なら恥ずかしいが、今の彼はどうやら寝ていると思わせているらしく、色々と体を触ってくるが基本触るだけなので邪魔には為らない。

 そういうことも有り、比較的簡単に浴室のタイルに彼を寝かせることができた。後は体を洗って挙げて湯船に浸からせ、疲れを取らせてあげるだけ。


「……っし、これでよし。後は簡単な洗浄魔法で体の汚れを取ってあげれば少しはマシでしょ」


 そう言って、腕の魔装具にインストールしてある、4元素混合魔法《垢落とし》を発動する。

 垢を落とすだけなのに4元素全てを混ぜ合わせる必要があるのかどうかは定かではないが、実際に一番汚れが除けるのがこれなので、ニーナは自分の時にもこれを使っている。

 内訳は、土と風で体表面の汗や垢などのゴツゴツした不純物を取り除く。

 それから水と火で温度調節したお湯を出して浮き上がった垢を流す。

 これだけでかなりの汚れが落ち、仕上げに風と火で温風を作って乾かす(実際はこれから湯船に浸かる為あまり意味はないが、そこはノリである)。


「……ん?おお!!?おーー!なんじゃこれ?!気持ちいいぞ!~?」

「……寝たふりは止めたの?」

「……グ~~~……」


 魔法を発動した途端、体中の垢が落ちるなんとも言えない快感に声を上げる鉄平に苦笑しつつ、今までの寝たふりをしないのか聞いた所、見事な寝たふりを刊行した間抜けな主候補に、眉間のシワが濃くなるのを感じずには居られないニーナ。

 そして、自分でも気が付かない間に手が勝手に動き……。


「もう遅いわ!」

「へぶっ!」

「あっ……ごめん……」


 思わずと言った感じで主に言われていた悪い癖が再び炸裂して、その悪い癖を出す己の手を見ながら被害者に謝るニーナ。

 だが、思わず出たのはこの相手がそうさせるので仕方がないのだ。

 そう思っていたのだが、隣で監視していた悪魔ミューレから放送が入る。


『ニナちゃーん?さっき美琴様に言われたばかりでしょ~?そんな事では何時まで経っても美琴様の側近は任せて貰えないわよ~?』


「……ですけど……、今のは鉄平様にも原因はありますよ?素直に起きれば良いのに、寝たふりなんかするから、ついカチンと来るんです」


 放送の内容に動揺しつつも、手を挙げてしまった理由を話すニーナ。

 すると、今度は意外な……しかし、ニーナにとっては今まで以上に恥ずかしい、悪魔の提案が降ってきた。


『……では、そこで寝たふりをしている鉄平様に質問。もしニナちゃんがバスタオルを取って顔を抱きしめてくれれば、寝たふりを止めますか?』


「勿論!!胸が小さいのはこの際気にしません!」


 ガバッという擬音が付くような跳ね起き方をした鉄平に隣の部屋から「あははは!!素直な人ーー」という笑い声が浴場まで届いた。

 どうやら放送は切っていたらしかったが、今の笑い声は放送がなくても周囲の部屋には届いたのでないか?という声の大きさだった。

 その声の大きさと、鉄平の反応に苦笑しつつ、話を出来る態勢に持っていこうと、恥ずかしいが鉄平の要求通り……とはいかないのがせめてもの抵抗か、ニーナはバスタオルを体に巻いた状態で起き上がった鉄平の体を恥ずかしいのを我慢してギュッと抱きしめてやる。


「……私も恥ずかしいんだから、このくらいで我慢しなさいよね。慣れてくればその内屋敷の可愛い子達が色々とサービスしてくれるはずだから」


「そ、それは……ほんと……ブハ!!!」


 ニーナの説明を聞いた鉄平は、興奮のあまり鼻血を吹き出した。

 それが不幸にもニーナの抱いた直後だったので、感触があまり味わえない内に再び鉄平の意識は飛ぶことになる。


「……」


 再びピクピクと痙攣しながら気絶する鉄平。

 そして、突然の鼻血に驚いたニーナもまた、その出来事に混乱する一人。


「……まあ、純情な少年って事で私たちの安全が少なからず保証されたと思えばいっか」


 意外とショックも小さかったニーナは、それで片付けミューレに気になるデータを伺う。


「……先生?この場合の鉄平様の霊子回復の状況はどうなってます?」


『……私の予想を上回る回復力で回復していってるわ。流石に思春期の男の子って感じね。精力がそのまま精神の回復力に直結して行ってるかもしれないわ。って事で、ニナちゃん達若い子のサービス精神が、鉄平様の霊子の回復源であると同時に、魔法使用時の回復要素でもあることがハッキリしたわ』


 どうやら浴室内の霊子メーターをモニターしているミューレはその予想以上の鉄平の回復力に、若さと精力に旺盛さを理由に考えているらしい。

 確かに、彼……鉄平……の祖国日本での漢字の字面的に、精神力と精力は切っても切れない関係があるのは否定できない。

 こちらでは精神力=メンタルだが、言葉の違いは意識の違いでもあり、その国の風土による違いは何に関しても説明が付けられるのだ。

 しかし、そうなると新たな疑問が沸き起こる。


「……さいですか……。けど、他の男性執事の皆さんはこれほどお盛んでも無いんですよね?霊子の回復もそれぞれ異なりますし。皆さん鉄平様ほどでは無いにしても、同じくらいお若いのに……」


 その疑問を解決するためにも質問をしてみるのだが……。


『そこは……ほら、泰三様のお孫さんって事で?納得できない?』


「……まあ、確かに」


 言われて納得の答え。

 主の夫には悪いが、泰三はあの歳になってもお盛んだ。

 何故か魔法とは形態が異なる仙術という技法をマスターしており、自身が望まぬ限り子は成さない事が出来るらしいが、その所為でチョクチョク屋敷を離れて街へナンパに出かけているらしい。

 しかし、被害者(妊娠者)が出ていないので、そして泰三自身のポケットマネーでやっているために主からのお小言もないらしい。

 そんなお盛んな泰三の孫なのだから、ニーナもミューレも、鉄平が他より精力が旺盛でも仕方ないという結論に達したのである。


「じゃあ、鉄平様はこのまま湯船に浸からせて、私が体を洗い直して出る頃に同じように出せば問題ないですか?」


『そうね~。多分問題ないと思うわ。何か異変があったら伝えるから、それまでは普通にご奉仕してあげて?』


「分かりました」


 そんな感じで、当初の予定とは異なるが、無事体を休めてひと時の風呂を満喫したニーナは、浴場を出て鉄平用に予め用意された部屋に運び、自分も美琴に言われた通りに下着になって添い寝をするのであった。


 

 

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