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異端の魔術師(マジシャン)~神器の継承者~  作者: arandora
気がつけば外国でメイドハーレム
1/6

始まり

 場所はイギリスの一般人用に創られた結界式住宅街『ニューローマ』。

 そこで今一人の日本人の少年が息も絶え絶えに地面にヘタっていた。

 しかし、魔者から超能力(現代魔法、古流魔法等)を使えない一般人を護るために張られた結界といえど、内側からの驚異には脆いもの。

 そして、それは大都会の人々が寝静まった住宅街でも、魔なる者に襲われる危険が出るという証明。

 そんな一歩間違えば危険な場所に、どう見ても観光客とは違う日本人が旅行バックも持たずに、ハンドバック一つ肩に下げた状態で息を切らせている。

 夏の最中というだけに半袖の短パンというラフ過ぎる装いのボサボサ頭の少年は見上げる満点の夜空に感動することもなく、途方に暮れている。

 少年…兵藤鉄平…は中学生活最後の夏休みを、100歳を間近にした今でも現役バリバリを主張する祖父の住むイギリスへ、凡そ十年ぶりにわざわざ日本から単身ローマにまで遊びに来ていた。

 何故単身かは両親が「お前一人で行くことに意味がある。何故かは行けば分かる」と言っていたから。

 詳細は祖父がしてくれるらしいのであまり聞いていない。

 しかし、単身の少年ということで不幸にも空港で早速注意されていたひったくりに遭ってしまっていたのだ。

 高校生にも成っていない少年には仕方ないことであろうが、やられた本人には溜まったものではない。


「……はあ、……はあ、クソ!今時ひったくりに遭うなんてついてねー。っていうか、爺ちゃんの地図も何処が住所か分からんぞ?……あー!!もう!こんな事なら母さんに強請って大きめの太陽光発電型のタブレット端末にしとくんだった!!最新機種で人工知能搭載型ってのが売りのAIフォンって最新の端末も、便利なのは良いけど地図が小さすぎて全然分からん!……まあ、バッテリーが切れた今、その意味もないんだが……」


 地図を見ながら彷徨った挙句に見つけた、光源になりそうな住宅街の数メートル離れた場所で途方に暮れていた。

 父からイギリスに住み込んでいる祖父に連絡して貰ってメールで地図を作ってもらい、現地人に道を聞けるように常用会話ようのアプリもAI端末にインストールして日本を発つまでは良かった。

 しかし、イギリスに着いて見れば空港で早速旅行かばんをひったくられた。

 一応ハンドバックにしか主な荷物は入れてなく、旅行かばんには着替え一式しか填めて居なかったので(祖父に空港で置き引きに遭うトップテンの物がカバン関係だと教わってたので)それほど困る事はなかったが、肝心の地図が全く役に立たなかった。

  しかも、アプリで訪ねようにも会話が早すぎて使う本人にはチンプンカンプン。

 途中でAPC(オートパイロット式自動車)を発見するも、その会話機能自体が英語に設定されていたため、使用できなかった。

 仕方ないので自力で縮尺と方角を頼りに捜索すること半日。

 因みに空港へ着いたのは昼過ぎで、現在腕時計の時間で22時過ぎ。

 頼みの綱の祖父の住所の電話は端末のバッテリーが充電切れで使えない。

 充電設備のある所へ行こうにも、現在地が分からない。


「まあ、文句を言ってもバッテリーが回復するわけでも無いし、さっさと現地の警察署でも……っていっても、言葉が通じるかどうか賭けなんだが……」


 そんなこんなで立ち上がって、微かな明かりを頼りにしようと都会地味た都市の住宅地の公園を補導してもらう目的でブラブラ宛もなく彷徨い歩き、ポリスマンを見つけようと行動した矢先、鉄平は己が目を疑う者に出くわした。

 それは、学校の歴史の時間に習った世界の魔法文化の成り立ちの際、それに出てくる魔なる者。

 普通の結界の中にいる一般人では滅多にお目に掛かれない者。

 世界各国で優秀な魔術師が魔法制御技術開発所(以下魔技研)にて数十人という魔術師が結界を常に管理している為、その外にでない限りは滅多なことでは出くわさない異形。

 その異形が今、鉄平の目の前にいる。


「……え…っと、ハ……ハロー?マイネームイズテッペイ、ヒョウドウ?ファッツユアネーム?」


 驚きのあまり異形に通じるかどうかわからない、練習してなんとか言えるようになった英語で自己紹介をする。


「……グラアアア!!!」

「ヒイ!!」


 当然の事ながら通じないようで、突然雄叫びを挙げて目の前の獲物(鉄平)を威嚇する異形。

 見た目は3メートル近い大柄すぎるゴリラ風の人型の異形。

 手足は丸太のように太く、あの筋力で殴られたら後ろにある壁まで一直線で叩きつけられること必至だ。

 その異形が獲物を見つけたことによる歓喜の顔をして、そのまま鉄平に向かっていこうとした時、背後から若い女の子の声が二種類聞こえた。


「霊質から、堂島泰三様のお孫様の兵藤鉄平様だと確信した上で命令させて貰うわ!危ないから、少し下がってて!大丈夫、直ぐに終わらせるから!……リルカ、原点回帰結界『八式結界陣』展開!今から弱らせるから、準備が出来次第結界を起動させて!それから何時も通り、結界内で降魔を滅するわよ?《魔剣機マジック・ソード・マシン接続アクセス》」


 そう言いながら鉄平の前を通り過ぎた女性は、闇にも輝くような金髪を横髪で纏め、背中のあたりまで流しているおよそ165くらいの、顔は素早く通り過ぎたので余り見えなかったが、それでも整っていると分かるくらいの美少女。

 その少女が、何故か鉄平にも理解できる日本語で口早に警告を発すると、その次の瞬間には前方に幾何学模様の、一般に魔法陣と呼ばれる物が出現しそれに体ごと突っ込んで行く。


 その後出てきた時には、明らかに超常現象で動かしていると分かる、体から浮いている機械的な武装を纏っていた。

 武装の下は特殊な素材なのか知らないが、肌に密着していて、体のラインが際立ったレオタード型のインナーを着けている。序に言えば胸はあんまり大きくない。

 強いて言うなら貧乳だ。

 そして、左手には細い剣を持ち、右手で魔法陣を展開しながら異形に向かっていった。


「はあ!!」


 気合の声を発し、異形に向かって細剣を異形に降ろしながら片方の手から炎を出して異形にぶつける。


 そんな少女の頑張りの最中、鉄平は隣に来たリルカと呼ばれた女の子を見る。

 その女の子は、夜ということであまり見分けが付かないが、恐らく銀色に見える髪を地面すれすれにまで伸ばした状態の女性で、背は小さく150あるなしの小柄な少女……否美少女だ。


 先ほどの金髪の少女と違って、すぐ傍に来てくれて、何かしらの準備を行っている。

 準備とは言っても先ほどの少女と同じで前方に魔法陣を出しているのだが、その際に魔法陣の淡く輝く光でその顔が顕になった。

 外国人特有の彫りの深い端正な顔立ちではあるが、幼さの残るあどけない少女の顔で、鉄平が思わず見つめているとそれに気付いた彼女はニッコリと微笑み。


「大丈夫ですよ、鉄平様?皇グループって聞いたことありませんか?ここイギリスでは知らない人が居ないくらいの戦闘専門の護衛を抱えている巨大な警備会社のことですが。ニナちゃんはそのグループの親元とである我が皇メイド隊の中でも15歳でAクラス魔術師の試験に合格する程の天才です。あの程度の降魔に遅れは取りませんですよ?」


 その幼い顔のままに鉄平を不安にさせないように優しく説明する。

 その表情に鉄平は漸く安心したように再びその場に尻餅を付く。


「ふふふ、よく頑張りましたね?今はそのまま休んでいてください。《魔書機マジック・ブック・マシン接続アクセス》」


 鉄平の様子を微笑みながら見ていた少女は、あくまで優しく褒めながら、休憩を促し、自分は先ほどのニナと呼んだ少女と同様に魔法陣を用意する。

 そして、その用意した魔法陣に向かって体を入れると、次の瞬間には金髪の少女とはまた違った機械的な武装を纏っていた。

 言うなれば、金髪の少女の鎧が、中世の騎士の鎧なら、銀髪のこの子は黒魔術師の洋服を機械的にした物だ。

 武装のしたはニナのそれと変わらない体のラインが浮き出るレオタードのようなインナーを着ており、リルカの場合は更に薄手のマントのような物を羽織っている。

 これがオシャレなのか、必要な装備なのかは鉄平には分からない。

 そして手に持つのは、剣の代わりに本だった。

 しかし、それは只の本とは違い、3Dを用いた科学的な本で、開いたと同時にそのページの中のデータが全て表示されるようになっているらしかった。

 それというのも、彼女がその本に手を翳すと、本が勝手に捲られ、その度に表示されているデータが変わっていっているからだ。


 そして、何度かのページを捲る行為の後に、一つのページを見つけて頷いた後、そこの箱のような映像をタッチして何事か呟いた。


「原点回帰結界『八式結界陣オクタリア』展開。範囲……周囲100メートル。レベル5。起動時間30分。《起動コネクト》」


 恐らく起動した?のだろう。

 リルカのアクセスという言葉と共に魔法陣が現れ、数百種類にも及びそうな数字や図形の描かれた空間が周囲を覆う。

 その空間は、先ほどの言葉に従い、大凡100メートルの長さで八つの柱を4点に構成されているようだった。


「……ふ~、これで霊子の乱れは遮断できる筈です。後はニナちゃんの邪魔に成らない様に私たちはここで見ているとするですよ。……ああ、鉄平様には後で纏めて説明される筈ですから、今しばらくお持ちくださいです」


「……ああ、分かった」


 額に汗が滲んでいるのか、それともひと仕事終えた事からのノリなのかは知らないが、額を機械服のマントで拭う。


 そんな風にリルカの観察をしていると、ニナの方もそろそろ大詰めのようで、人型がさっきから忙しない雄叫びを挙げていた。


「ギィシャーー!!!」

「うるさいわね!これでも食らってなさい!《炎獣モーフ》」

「ギュアアーー!!!」


 ニナが人型の攻撃を掻い潜りながら手から再び魔法陣を出す。

 それは、ライオンの形をした炎。

 その炎を相手にぶつける。

 そして、怯んだ所へ細剣で体に傷を付けていく。

 鉄平は、あまりの凄さに言葉を発するのを忘れてその光景に見入っていた。

 そして、5分くらい化物の腕を躱しては斬りつけ、炎や氷の魔術を使って相手を攻撃していただろうか。

 不意に、人型が最後の悪足掻きか、手を上に高々と上げて吠える。


「ウオーーーーン」

「……!リルカ、恐らく奴らの独自魔法が来るわ。彼に衝撃が届かない様にして!」

「りょーかいです!鉄平様?少し失礼しますね?」

「……え?わぷ!」


 人型が何かをしてくると踏んだニナは、リルカに鉄平の守護を指示し、それに応える様にリルカは鉄平に近寄ると、ヘタっている鉄平を抱きかかえ、ニナと人型を背にして機械鎧を合体させ、頑強な機械の壁を作って鉄平を庇うような態勢になる。

 そうして、仄かに香る少女の甘い体臭と「大丈夫、大丈夫」という励ましの言葉。

 その事に鉄平は押し付けられる胸の感触(どうやら見た目とは裏腹に、そこそこの大きさがある隠れ巨乳で、サイズ的には90前半は固い。そんな、何となく役得感がある出来事)を楽しむことになる。

 幾ら小さくて可愛い女の子でも、そこに胸が有りそこそこの大きさがある熟れた実は、少年の欲望を刺激するのには十分な破壊力があった。

 なので、鉄平は思わずその目の前の果実を揉んでしまっていた。


「……ん…って、鉄平様?男の子ですから気持ちは分かりますが、集中しているのでもう少し優しくお願いします。少し激しいです」

「あ、ごめん」


 どうやら揉まれること自体は嫌では無かったようで、顔を少し赤くしながらも、やんわりと言ってくるリルカ。

 そして、そのような注意をされた鉄平は素直に謝って、少し優しい触りに切り替える。

 そしたら女の子は何も言わなくなり、ひと時の間その感触を楽しむ鉄平だった。


「ーーー」


 そうして、人型が声に成らない声で魔法陣をだし、そこから放たれる黒い塊。

 それは、結界内で爆発し、周りのビルを巻き込む大惨事となった。

 そして、余波はニナやリルカ&鉄平にも及ぶ。

 幸いニナもリルカも鉄平も、機械武装で衝撃を受け付けないようになっていたので怪我は無いが、現在進行形で破壊されているこの辺りの惨状はどうするのか鉄平は興味本位で聞いてみた。

 一応護って貰った事に対して「ありがとう、もう良いみたいだよ」と一言言ってから顔と手を胸から離したあと……。


「……ふう。なあ、この状況はどうする気だ?幾らこの結界?で周りに見えなくしたからって、これを解除したらここら一帯だけ破壊されているんだろ?そんな事に成ったら警察が何か言ってくるんじゃないのか?」


 少女の方は鉄平の感謝の言葉に「どういたしまして」と応えた後に少々蒸気した顔で……


「ああ、それは心配要りませんです。この結界は、その為の……というより、こういう災害に対する備えの為の結界ですので。……見てください。降魔……あの人型の魔者が先ほどの魔法を使った衝撃により自壊していきます。それと同時にこの結界も役目を終えて消え、同時に元の街並みに戻ります」


「へ~」


 少女の話を聞いた鉄平は、感心しながら聞き入った。

 そして、確かにゴリラのような人型が、上に挙げた手の方から崩れ始める。

 段々と崩れゆく姿はそこはかとなく悲しい物があるが、殺らなかったらこちらが殺られていただろう事は鉄平にも分かるため、その事については何も言うつもりはない。

 逆に助けてもらった感謝をしなければならないのだから。

 そうして、徐々に形を崩壊させ、全てが塵になったと同時に周囲を覆っていた数字や図形の結界が弾けるようにして消える。


「ふう~、漸く片付いたわね。やはりあれだけの大きさの降魔は久しぶりだから、思ったより時間がかかったわ」


 ニナはそう言いながら、再び前面に魔法陣を作り出し、その魔法陣に歩きながら通過すると、次の瞬間には西洋風のドレスに身を包んだ、恐らく最初に見た姿のニナが現れた。

 そして、何故か結界解除と共に修復されていた周囲の建物を背景に、鉄平の足元まで来て膝を着き、改めて自己紹介を始める。


「恐らくリルカから説明はされてると思うけど、改めて自己紹介をするわ」


 そう言って何かの儀礼としての行動か、簡易的なものかは知らないが、左胸に右手を添え頭を下げて名乗る。


「私はこのイギリスで、あるお屋敷のメイドをしている、ニーナ・レイルロードよ。ニナでいいわ。リルカに聞いているかもしれないけど我が主、鉄平様の祖母にあたる……」


「え!?俺の婆ちゃんって死んでるんじゃ無いのか?ってか、なんで君がそんな事知ってんの?」


 鉄平の問いに、ニーナはしまった……というような顔をしたが、自分が伝えるべきことでは無いと判断し、保留して先を続ける。



「その事に関しては、お婆様とお爺さまから直接聞いてください。……そして、私の紹介に戻りますが、私は貴方のお婆さま……皇美琴様の直属のメイド隊……ロイヤルナイツの候補生で、Aクラス魔術師試験に合格したプロだから、私の歳では優秀な部類に入ると思うわ」


「まあ聞いて教えてくれるなら聞くけど。それよか、ロイヤルナイツってのは知らないけど、さっき聞いた話では君くらいの歳でAクラスの資格ってのは天才って聞いたけど?」


 リルカに聞いたことが事実なら、結構実力がある筈なのに、優秀な部類で収まるのか不思議に思って聞いてみた。

 するとニナはその質問に一つ頷きくと、微笑んでしかし、悔しそうにして説明した。


「天才かどうかは分かんないけど、私の歳でAクラスの資格保持者は確かにあまりいないわ。けどね、世の中には、貴方のお爺さまの様に、魔法を使えないのに隔絶した実力を持つ【超越者】と呼ばれる方達が居たり、一つの分野に精通して他とは次元が違う実力のある【卓越者】と呼ばれる方達もいるの。その人達に比べれば、私なんか高がAクラス……っていう扱いなのよ」


「へ~?因みに、そいつらの実力はどのくらい?」


「ん……どう言えば良いかな~?って、私が説明するより貴方のお爺さまや美琴様に直接聞いた方がイイわよ。どうせお爺さまの住所がわからないで迷ってたんでしょ?電話も通じないって言うことで、わざわざ魔術師協会の祓魔師の仕事が終わったばかりの私たちが派遣されたんだから」


「え!?さっきも気になること言ったけど、……じゃあ君らって爺ちゃんの知り合い!?」


「知り合いっていうより、黙ってるように言われてますが、私たちの主が鉄平様のお老婆さんなのです。そして、その老婆さんのお孫さんという鉄平様は、結論として私たちの次期主のドラフト1位指名の方なのです」


「……え、……えー!!?それマジ?俺、なんにも聞いてないんだけど?!」


 リルカの言った有り得ない、あまりの論理に思考が麻痺し、思わず大声で叫んでしまった鉄平。

 しかし整理すると、鉄平の足りない頭で理解できた内容は、この目の前の美少女たちは、もしかしたら鉄平のメイドに成る可能性があるということだった。


「……つぅ~……。ちょっと、鉄平様?戸惑うのは分かるけど、こんな近くですごい声出さないでよ。耳が痛いわ……」


「あ、ごめ……ん……」


 どうやら叫んでしまった事で、隣にいたニナの耳に直接ダメージを与えたようだった。

 そして、顔をしかめながら耳を塞いでいた彼女に言われて思わず間近で見てしまったその整った容姿に息を飲む。

 欧米人が彫りの深い顔をしているというのは聞いたことはあるが、それでもここまで美人だとは鉄平は思わなかった。

 暗がりでも分かる程の金髪の長髪に、湖のように何処までも澄み切った、海のように深い青。

 そして、昼間にでも見れば誰でも振り向いてしまうであろう絶世の美貌。

 隣に居るリルカも幼い容姿であどけなさが先行している美少女だが、このニナ……ニーナは、既に大人の魅力も放ち始めている美少女だ。

 そんな感じの観察をしていると、不意にニナは微笑んで鉄平の顔を見ながら言う。


「ふふふ、その様子では私の容姿は次期主候補の貴方様のお眼鏡に適った様ね?同じ主となる可能性を秘めた人なら、容姿を受け入れてくれる人の方が私たちメイドも安心だし、分かり易いわ」


「そうですね~。幾ら能力重視の我らスメラギ護衛隊ロイヤルナイツとはいえ、主の側近メイド並びに護衛候補に容姿が受け入れられなくて外されるとなれば女としては結構ショックですからね~」


「……?さっきも言ってた私たちってのは、君ら二人のことじゃないのか?護衛隊って言うからにはそれこそ10人規模の団体さんで構成されてたりするのか?」


 リルカのガーディアンナイツの言葉に、鉄平はそんな考えを思い描いて問う。


「?いいえ?実際の人数はあまりに多いから主様自身把握していないらしいわ。

 その為、数少ない男性執事の一人でイギリスの魔術師組織の幹部であり【電子魔操師】と呼ばれる方の能力に管理を任せておられるわ。

 そして、私が把握している屋敷の同年代で構成されてるロイヤルナイツ候補生は私を含め5人のAクラスの魔法師が居るわ。魔術師で無い者もいるけど魔法を使えることに、そして優秀であることに変わりがないから同じ立場なの。

 その5人がそれぞれ4人の異なるタイプの部下を使って色々な指令を遂行して達成するほど、主の護衛を任せられるロイヤルナイツに昇格できるの。……今は各地へ任務に出ていたり、美琴様の代わりに色々な役割があって捜索隊には一人のロイヤルナイツの方しか加わってないけど、その方は危険度の高い場所に飛んでるわ」


「はあ~い♪ニナ、リルカ?鉄平様は見つかったかしら?」


「「「!!!」」」


 それは突然の来訪だった。

 会話の途中に気配も無く現れた妖艷な美女。

 身長は見た目少女という年齢の女の子にしては相当高く、170はあるんじゃないかと思う程で、こう言ってはなんだが胸もリルカやニナのそれとは比較にならない程の豊満な双丘が、重力を感じさせないかのようにツンと上を向いて自己主張している。

 髪はウェーブの掛かった真っ赤な髪で、その真紅の瞳と合わさって神秘的な様相を呈していた。

 そんな彼女は、明らかにニナやリルカの知り合いという感じで気楽に話しかけているが、二人共あまりの事に口をパクパクさせて驚いていた。

 そして、比較的そういうイタズラ的な行動をする事を知っていたニナが復活し、驚きと苦笑混じりに尋ねる。


「……!!……なんだルナか、驚かせないでよ。……あんたか来たってことは、近場の他の場所へ向かった子達はもう屋敷?」


 突然の来訪者に驚くリルカと鉄平の事を他所に、ルナと呼んだ女性に色々と聞く気満々なニナ。

 そして、ルナと呼ばれた女性もまた、いつもどおりの反応なのか、ニナの問いに普通に応える。


「ええ、各地の魔者は資格者が隊を編成して向かって、皆で手分けして討伐済みよ。さっきメルの広域通信魔技器を隊員の何人かに渡したから、そろそろ帰還用の転送魔法陣が私の前方に開かれる筈よ……ほら」


 そう言って顎をシャクって前方を示す。

 その振る舞いは女王様が板に付いた感じの、誰に対しても高圧的な感じのする物だった。

 その事に鉄平があからさまに嫌そうに反応すると、ルナと呼ばれたその赤髪の女性は慌てたように手を大げさに振りながら鉄平に振り向いて。


「あ、鉄平様?これは違うのよ?一々指とかで示すのが煩わしかっただけで、普段はお淑やかで慎ましやかな女性ですからね?」


「ははは。……別に俺は気にしないよ?確かに女王様ってキャラは俺は苦手だけど、それも個性だから否定するつもりは無いから。安心して?まあ、それに俺自身あまり状況が飲み込めて無いから、爺ちゃんに色々と聞かないとイケナイからね」


 鉄平がそう言って個性を重んじるような事を述べると、3人の女性は一様にほっと胸をなで下ろした。

 その事に「これは想像以上に厄介な事になりそうだな」と祖父のアグレッシブぶりを心の奥で呪うと同時に女性に恵まれる要因を与えてくれた事に感謝もするのだった。

 そして、この分なら日本に帰っても運が続いて可愛い彼女が出来るかな?と期待が込み上げてくる鉄平だった。


 それから、実際に目の前で開いた次元の扉から、黒い執事風のメガネを掛けた男性が出てきたと同時に3人は一斉にその男性の前に膝まづく。

 身長180センチの痩せ型のインテリ系の男性で、メガネだけでなく服装全てが闇に溶け込む黒だった。

 そして、その男性は3人を見、次いで鉄平の方を向き、頭の先から足の先を舐め回すように値踏みしたあと。


「ふむ……、どうやら貴方が堂島泰三様のお孫様、兵藤鉄平様で間違いないようでございますね。わたくし、皇美琴スメラギミコト様の執事をやらせて頂いております者の一人で、【ゲート管理者キーパー】と呼ばれている【次元魔法師】ソルト・バートンと申します。以後、お見知りおきを」


「あ、こ、こちらこそ……って、どうして俺が爺ちゃんの孫だって直ぐに解ったんですか?判断基準はニナさん達だけでしょ?」


 鉄平の言葉に、ソルトはメガネをクイッと押し上げると、微笑みながら応える。

 それは実に絵になる動作であった。


「わたくしはこれでも美琴様の執事をやり始め、人の保有霊子を数多く拝見してきました。その経験から泰三様と鉄平様の霊質がほぼ同一のように酷似しているのがわかったのです。そして、ニーナやルナ、リルカ達の態度からそれは確信に変わりました。

 ……気付きませんでしたか?彼女たちもほぼ迷わずあなた様を助けようと行動した事を。それは彼女たちに渡した透明のコンタクトレンズ……霊子識別魔技器……が作用した為です。

 ……そして話は変わりますが、貴方は自分が気付かない内に我が主の恩人にして夫である、堂島泰三様と同様の素質を受け継がれている可能性が高い。よって早速我が主の屋敷においで頂き、そこで世界でも未だ少数の者たちしかいない超能力者(魔術師等の超常現象を引きおこす者)としての力を身に付ける訓練をしてもらいます。

 その事が美琴様の後継者となる儀式の最重要過程ですから。

 ……長くなりましたが、この扉もまだまだ世に出せるレベルの物ではないので、不具合が生じる前に通りましょうか?……ルナ?」


「はい。……メル?聞こえる?アリサに扉の出力先を屋敷に固定してもらって?うん、鉄平様が見つかったの。それで今から泰三様と、主様にお会いして頂いて後継者としての色々を知って貰う事になるようよ?……うん、じゃあそういう事で。……ソル様。準備OKです」


 ルナの返事にソルトは静かに頷き、鉄平を自然に立ち上がらせてから片手を握って扉の方へと導いた。

 余談だが、ソルトの手があまりにも細いので女性と勘違いした事は鉄平の黒歴史に刻まれる事になる。

 そうして、扉を向けた所に、漸く目的の人物、鉄平の祖父である堂島泰三氏が満面の笑みで鉄平を出迎えるのであった。

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