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たった一つの約束

「で、お前ら、どこまで行ったんだ?」


今は、夕暮れの補習中。


けれど、教室内には、場に相応しくない言葉が流れた。


「菅原先生。とりあえず、そう言う事言うから、恋人に逃げられるんですよ」


だから、とりあえず、釘を刺しておく。


目下まじめに勉強中の真面目君に言うべき言葉ではない。


あ、真面目君がなんで補習なんてしているんだ。


そう思った人もいるだろう。


ちなみに、この補習は授業中話していたせい。


もちろん、話しかけてきたのはあの悪魔。


いつの間にか、僕の隣の席に陣取ると、ぺちゃくちゃと話しかけてきたのだ。


おかげで、それを見つかって、こんなざまなのだ。


しかも、諸悪の根源であるはずの悪魔は、その美貌で盟友を色仕掛けで落として、帰宅だ。


どうやら、僕を待つと言う選択肢はなかったらしい。


まぁ、待たれたからと言って一緒に帰る事なんてないけど。


わざわざ苦労を背負って帰る人間なんて居ない。


さて、それはいいとして、問題をすらすらと解いていく。


悪魔みたいに優等生ではないが、それでも劣等生でもないので、苦もなく解ける。


とりあえず、目の前にいるナメクジ教諭は無視する事にする。


相手にしてたら、いつまで経っても終わらないし。


それに、ちょうどいいだろう。


自分自身を見つめなおすには。


「なぁ、とりあえず、俺の相手をしてくれよぉ」


けれど、そんな事お構いなしに、ナメクジ教諭は僕に話しかける。


もう煩わしいったらありゃしない。


「とりあえず、これ以上騒ぐと塩をかけますよ、ナメクジ先生」


なので、一刀両断の下にする。


ペットのしつけはやっぱり厳しくないとね。


まぁ、ナメクジがペットなんて嫌だけど。


うんうん。


目の前に居るナメクジ教諭はさらに落ち込んでるけど、気にしない。


めんどくさいし。


とりあえず、早く帰りたいし。


というわけで、さらさらと書いていく。


まぁ、ところどころ適当だけど、気にしない。


今のこの状況なら、どうにでもなるだろう。


いくら我が盟友とは言え、時間の浪費を被るような状況になれば、切り捨てるしかないのだ。


ああ、なんて切ないものなのだろう。


「とりあえず、終了です。それいじゃあねぇ」


そして、全て埋め終えると、どろどろになっているナメクジ教諭に提出して、さっさと帰る。


外に出ると既に、空は茜色に染まっている。


なんだか、それがものすごく切ない。


あぁ、なんて僕は感受性が豊かなんだろうか。


もしかすると、芸術家向きなのかもしれない。


よし、とりあえず、明日から油絵でも描いてみよう。


題材は、やはり人目を引くものがいい。


というなら、やはり肖像画だろうか。


それで、肖像画でも美人画がいいだろう。


なんなら、裸婦画に挑戦してみるのもありかもしれない。


いや、けれど、そうなると、相手が難しい。


堂々と脱いでくれる人なんでいない。


いや、一名いるか。


けれど、とりあえず、あれは却下だ。


その後何を要求されるか分かったものじゃない。


というか、そもそも、僕に芸術なんて向かない。


僕なんかは、平々凡々に生きていくことこそ、ぴったりなのだ。


「ねぇ、これから、どこに行く?やっぱり喫茶店?」


そんな事を悶々と考えていると、不意に空耳が聞こえた。


まるでお約束のようなタイミング。


「あ、それとも、もしかして、都君の部屋?きゃ、もう、大胆なんだから」


そして、さらにヒートアップする空耳。


とりあえず、警報がなっている。


けれど、悲しいかな、僕には逃げられない。


がっちりと腕を取られている。


これをされて、果たして逃げれるだろうか?


否、逃げられない。


これでも、一応フェミニン精神旺盛なのだ。


とりあえず、女性を傷つける事は出来ない。


今は亡き父上と母上としたたった一つの約束なのだ。


まぁ、別に本当に死んでるわけじゃないけど。


それに、向こうに非があるときは別にかまわないって言われてるし。


ただ、これは非はないんだろうな。


だから、どうする事も出来ない。


ああ、悲しい。


こうして、たった一つの約束にしばられてしまう自分が本当に悲しい。


「でも、うん、あたしは、大丈夫だよ?心の準備だって出来てるし。もういっそのことご両親に紹介してくれたって全然かまわないから」


でも、とりあえず、この妄想悪魔をどうにかしないといけないだろう。


そうでもしないと、翌日には子供は何人欲しいかという話にまで発展しそうだから。



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