酷く憂鬱な青
「やれやれ」
何とか悪魔を振り切った僕は、ため息混じりそう言うと、その場に座り込む。
上を見上げると、青い空が広がっていた。
とりあえず、屋上へと逃げてきたのだ。
ここなら、あまり人は来ないから、大丈夫だと思う。
一応、屋上は使用禁止になってるし。
まぁ、僕は盟友から鍵を拝借しているから、いつでも使えるけど。
使った鍵を、ポケットに入れると、上へと上る。
まぁ、上と言ったら、どこだと聞かれるかもしれないけど、上と言ったら上だ。
とりあえず、そこをなんと言うかは知らない。
でも、屋上に出た事があるなら、誰でも知っているはずだ。
階段がある上の部分、貯水タンクがあるところだ。
そこに上ると、貯水タンクの陰に隠れる。
とりあえず、念には念をと言うところだ。
貯水タンクに背を預けると、空を見上げる。
相変わらず、腹立たしいほど空は青く澄んでいる。
そう言えば、悪魔が告白して来たのも晴れていた。
なんだか、晴れると言うのは、縁起が悪いな。
悪い事ばっかり重なって居るじゃないか。
とはいえ、まぁ、基本的に晴れている日が多いんだから、それは当然なのだが。
それでも、この青い空が憎らしい。
とりあえず、金色に塗りたくってやりたいぐらいだ。
まぁ、それはそれで、まぶしすぎて、うざったいだろうけど。
にしても、のどかだ。
なんだか、久しぶりのような気がする。
こんなに穏やかに学校で居られるのは告白されて以来だ。
それを考えるといかに彼女が僕の事を振り回してくれているのかが、良く分かる。
全く、いい加減にしてもらいたいものだ。
もう、タバコがあれば今すぐにでもふかしてしまいそうなほどだ。
いや、まぁ、嘘だけど。
とりあえず、タバコは嫌いだし。
だって、健康に悪いんだよ?
死亡率が上がるんだよ?
それが分かっていてすえるわけがないじゃん。
全く吸ってる人の気が知れないね。
ガチャ、と物音が響く。
ぼんやりと考えていると、不意にドアが開いた。
これはもしかすると
「ここにも、いないのかなぁ。でも、なんかいそうなんだよねぇ」
と思ったら、案の定、誰かが屋上に来たみたいだ。
しかも、悔しいほど、それこそ、泣きたくなるほど聞き覚えのある声。
そうあの悪魔だ。
どうやら、その恐ろしい嗅覚でここまでやってきたらしい。
「あ、この上とか怪しそう」
そして、その嗅覚はついに、僕の匂いを捕らえたらしい。
はしごを上る音がする。
これは、危険だ。
身の危険大だ。
とりあえず、彼女が上ってくるほうとは逆から降りる。
そして、それと同時に、壁に身体を這わせて、ゆっくりと、頭上を確認しながら、迂回して、ドアへと向かう。
「あれ、いないかぁ。ここだと思ったんだけどな」
上りきったのだろう。
悔しそうな声が聞こえる。
その口調振りから、どうやら見つかってないらしい。
ただ、このままのんびりしていると、降りてこられて、鉢合わせの可能性もある。
とりあえず、さっさと逃げるが一番……
「あ、都君見っけ」
と思いきや、不運にも見つかってしまった。
頭上には、もう満面の笑みを浮かべて僕の事を覗き込んでいる彼女の姿がある。
けれど、まだ、大丈夫だ。
とりあえず、すでに扉は目の前。
すぐに飛び出せば、捕獲と言う最悪の状態だけは免れる。
よし、飛び出せ、僕!!
「捕まえた♪」
けれど、それよりも、早く彼女が動いた。
なんと、はしごを使わず、飛び降りたのだ。
しかも、僕の上に。
「ぐへっ」
もちろん、僕はあっさりと潰される。
それと同時に顔にものすごい圧迫感を感じる。
けれど、それが何なのかは全く分からない。
ただ、目の前は憂鬱になりそうなほど、僕の嫌いな青だった。