散る散る満ちる
僕は、逃げ道を探していた。
けれど、出口はたった一つ。
僕が入ってきた入り口だけ。
だけど、そこはすでに、悪魔の手によって、閉ざされている。
それはつまり、悪魔をどうにかしない限り、僕にはどうすることもできないと言う事。
とはいえ、僕ではこの悪魔には勝てない。
第一世代で、しかも覚醒している彼女。
そんな彼女に種を持たない僕がどう対処できる?
せいぜい、軽くあしらわれておしまいだ。
しかも、最近、ちょっぴり耐性が出てきたみたいで、簡単な事では思考回路が破壊されなくなって来ている。
つまり、捧げるものが以前よりも大きくなってきているのだ。
けれど、僕としては、以前まで捧げていたものがぎりぎりの範囲の物。
というか、あれですらあげすぎだ。
とりあえず、もう既に僕の身体の半分くらいは汚れきってるし。
絶対、僕が女の子だったら、自殺物だと思う。
だって、好きでもない異性にべたべた身体を触られるんだよ?!
しかも、脱がされちゃったりするわけだよ?!
これが、まだ僕が男で悪魔が女だから、騒ぎにならないけど、本当にやばい。
まぁ、きっと、これが僕じゃなくて、他の人なら喜んでるだろうけど。
ホント、どうして喜んでくれる人じゃなくて、嫌がる人にやるのかが全く分からない。
もしかして、エス気質なんだろうか?
でも、僕自身もどちらかというとエス気質だから、それじゃ絶対にあわない。
お互いがお互いをなぶり合うとかおかしな状況だ。
「さぁ、めくるめく快楽の日々へと!!」
「ぬぉぉぉぉ」
と、そんな事を考えているうちに、襲いかかって来た。
どうやら、考え込みすぎたみたいだ。
それでも、なんとか避けきったのだから、なかなかのものだ。
とはいえ、いつまでも持ちそうもないが。
瞬間的な切れ味は彼女の方が上。
筋肉の使い方がうまいせいなのだろうか。
体力、筋力自体は僕の方が上なのだけれども、爆発力は目を見張るものがある。
以前も、僕の方が瞬発力があるからと、高をくくっていたら、近距離での攻撃をあっさりと受けてしまった事がある。
だから、いつまでも、のんびりとはしていられない。
どうにかして、打開策を考えなくてはならない。
とはいえ、相変わらず出口は一つ。
しかも、なぜか内側にも鍵穴があり、そこに鍵を差し込まない限りあかないようになっている。
とはいえ、だいたい予想はついているが。
「もう、逃げ道なんて物はないわ!!」
それに、のんびりと考えている場合ではない。
まずは、どうにか逃げ出す方法を。
そんな事を考えながら、彼女の攻撃を避ける。
すでに、何十回との突撃を食らっているため、ある程度先読みは出来る。
そのせいで、なんだか自分が人外に思えたような気がするが、きっときのせいだろう。
それに、この程度なら、誰にだって出来るはずだ。
だいたい、彼女もワンパターンだ……
そこまで思ったところで
「捕まえた」
あっさりと捕まってしまった。
ワンパターンな突撃。
だけど、それはフェイクだったのだ。
いきなり軽いフェイントを入れてきたのだ。
「うふふ。もう、これで都君の初めてはあたしのもの」
おかげで、この状況。
舌なめずりして、僕の事をがっちりと抱きこんでいる。
僕は、絶望した。
そんな中、自分のポケットで、携帯の鳴る音がした。
そこで、ようやく気が付いた。
携帯を使って我が友を呼び出せば良かったのだと。
まさしく、心境は青い鳥に出てくるチルチルとミチルのようだった。