薄っぺらな真実
こんな事しなければ良かった。
目の前には、貴公子と悪魔の二人。
だが、その二人の会話はまさしくすさまじい。
というよりも、上流階級の人間がするような恐ろしく優雅な会話。
僕の前とは大違いだ。
もしかすると、本当の恋をするとこのレベルにまで達すると言うのか?
恐ろしい。
もし、あんな姿で来られたら、きっと僕みたいな純粋な子はあっさりと落とされてしまうだろう。
いや、あの姿で迫られて助かった。
しかし、これで良く分かった。
彼女は、本気なのだろう。
ならば
「おい、瀬川三等兵。あの貴公子に襲いかかって来い」
「はぁ!?なんでだよ!!」
いい作戦が思いついたので、とりあえず、命じてみたのだが、どうやらおつむが僕以下らしく、ついてこれない。
「ばかめ。ここで、貴公子に絡んで、それをあの悪魔か貴公子のどちらかが倒せば、いっきに盛り上がるだろうが」
つまりあれだ。
貴公子が倒せば、それはつまりそれなりに気があると言う事。
それが分かれば、あの悪魔はきっとそのまま告白するだろう。
確信へと変われば、きっと行動に出るはず。
そして、その逆に悪魔が倒せば、あの貴公子も恋に落ちるだろう。
僕が見たところ、あの貴公子は頼りになる女性が好きそうなタイプだ。
「というわけで、さっさと行け!!出番が欲しいんだろう!!」
というわけで、無理やりクランクアップ。
とりあえず、さっさとくっつけてしまおう。
そうすれば、僕も平穏となる。
そして、あの悪魔も幸せ。
まさしく、最高のシナリオじゃないか。
というわけで、どうなるだろうか。
そう思って、事の成り行きをうかがおうとした。
が
「いやん、助けて、都君」
なんて言って、いきなり悪魔が僕に飛びついてきた。
いや、何故に!?
思いっきり、自分の予想とは真逆に行かれて正直びっくり。
いや、待て。
もしかすると、これは・・・
「うん、きっと都君は、あたしを助けにきてくれるって信じてた。だって、噂を心配して、あたしの事を見に来てくれたんだもん」
そして、彼女の言葉を聞いて、確信へと変わった。
「謀ったな!?」
そうだ、謀ったのだ。
きっとあれだ。
僕にやきもちなんて物を焼かそう。
そんな感じなのだ。
残念ながら、そんなものは全く焼かなかったが、周りはそう思わないだろう。
あぁ、なんて事だろう。
まさか、逆に僕が踊らされるなんて。
もう少し、後先を考えれば良かった。