どうかそのままで
僕はそろりそろりと足音を殺しながら、歩を進める。
とりあえず、時刻は放課後。
既に、授業は終わり、後は帰るだけになっている。
もちろん、帰るだけなんていうのは、誰にだってできる事だろう。
僕にだって、そんな事は出来る。
ただ、安全に。
そうなると、話は変わってくる。
僕は安全に帰るだけと言うのが非常に困難なのだ。
理由はただ一つ。
あの悪魔の存在だ。
あの悪魔のせいで、僕は、安全に帰る事が出来ない。
けれど、それも今日で終わらせるつもりだ。
とりあえず、僕は、トイレに行くといって、彼女と別れた。
そして、トイレにはいると、トイレの窓から脱出した。
もちろん、足音を出来るだけ殺して。
そして、それはうまく行き、とりあえず、今は下駄箱付近にいる。
ただ、そこは、トイレのそばにあり、もちろん、その前には彼女がいる。
なぜか、興奮したように、はぁはぁと息をしながら、顔を赤めている。
挙句の果てには、トイレの前で行ったり来たりをしては、中に入ろうとしている。
もちろん、周囲の目があるから、本当には入らないが。
とはいえ、その行為自体が完全に変態だ。
しかし、それが大変困るのだ。
とりあえず、あの悪魔の感知能力はすさまじい。
さすがは第一世代と呼ぶべきか、鬼のような嗅覚を持っている。
下手な事をすると確実に気付かれる。
とはいえ、だからといって、このまま上履きで帰るわけにはいかない。
なので、今、こうしてそろりそろりと歩をゆっくりと進めているのだ。
彼女が、不意にトイレに顔を突っ込んだ。
どうやら、周りに人がいなくなったのを、しめたと思ったのだろう。
僕の姿を確認している。
まさしく、千載一遇のチャンスだ。
とりあえず、どうかそのままでいてください。
そう心の中で祈りつつ、上履きを脱いで靴を取る。
それと同時に彼女の方もしっかりと確認する。
すでに、そこに、彼女の姿はいない。
おそらく、トイレに入ったのだろう。
羞恥心と言うものはないのだろうか?
いや、とりあえず、人がいないから、やっているんだから、羞恥心とかは関係ないかもしれないが。
それでも、恥を知って欲しい。
きっと、あれだ。
周りに人がいない事をこれ幸いと思って、そこで押し倒そうとしているのだろう。
なんて、浅ましい考えだ。
けれど、甘い!!
とりあえず、ロシアの黄色いお菓子ぐらい甘い!!
僕は、今から自由となる。
青い翼を持った機体に乗って、飛び立つのだ。
「ミヤコ・コンノ、フリ○ダム、行きます!!」
靴を履き替えると、そう声高く叫ぶと、僕はその場を後にする。
そして、外に出た瞬間。
「はい、捕まえた」
あっさりと捕まってしまいました。
しかも、僕が先ほど通っていたところから出たところを考えると、きっと僕と同じ事をしたのだろう。
とほほ。