ドアの向こう
僕は、ただいま保健室にいる。
その原因を作ったのは、もちろんあの悪魔。
いきなり、襲いかかってきたから、ひょいと避けたのだ。
すると、いきなり
『都君が捨てたぁ!!あたしの身体の隅々まで味わうだけ味わって捨てたぁ!!』
そんな事を大声で叫びだしたのだ。
しかも、女優さながら涙をこぼして。
当然、それを見た彼女に毒された野朗どもは目の色を変えて、突撃をかけてきたのだ。
もちろん、なんとかそれは回避したけど、その途中で、軽く足を捻ってしまったのだ。
だから、こうして今保健室で治療している。
もちろん、部屋の中には、僕と保健医の先生と二人きり。
もし、こんな手負い状況であの悪魔といようものならあっという間に貞操を奪われてしまいかねない。
とりあえず、まともに走れないし。
「はい、終わり」
シップをはり、包帯で固定し終わると、彼女はそう言う。
彼女のおかげで少しは楽になった。
ホント、さすがは保健医様様だ。
ちなみに、保健医の彼女は、若い。
しかも、割と可愛らしい。
なので、割ともてる。
よって、これはこれで嫉妬の対象になるかもしれないが、まぁ、別にいい。
どうせ、今とたいして変わりはしないだろうし。
それを考えると本当に平穏とは無縁な僕の生活だ。
「ありがとうございました」
僕は、彼女にそう礼を言うと、立ち上がる。
とりあえず、今日はさっさと帰らせて貰おう。
こんな状況で、彼女と無事に渡り合える自信はない。
まずは保身が第一だしね。
立ち上がると、扉に手をかける。
とりあえず、まずは、ここから出なくちゃいけない。
その後は、教室に帰り、カバンをとらなくちゃ。
そして、僕は、扉を開けた。
否、あけようとした。
けれど、それよりも早く。
ガンガン、と思いっきり扉を叩く音。
そして
「都君。そこにいるのは分かってるの。早く、そこから出ないとその年増の女に純潔を奪われちゃうわよ!!」
そう叫ぶ声が聞こえる。
とりあえず、状況が分かった。
僕は、鍵を閉める。
彼女がいきなり入ってこなかったのは正直助かった。
まぁ、とりあえずそれだけの常識はあるのだろう。
こんな時だけ、常識ぶってもしかたないような気がするがそれは置いておく。
とりあえず、逃げ出す準備をしないと。
今の防御壁は扉一枚だけ。
ドアの向こうには、舌なめずりしている獣の姿がある。
「行儀悪いですけど、ここから失礼します」
なので、こうするしかないだろう。
一応、彼女に謝っておいて、窓から外に出る。
保健室が一階で助かった。
とりあえず、このまま帰ってしまおう。