全ては在るがまま
「おはよう、クラスのお友達!!」
僕はいつも通りにそう声高々に叫ぶと、教室に入る。
「お、都か。おはよ」
けれど、クラスのお友達の反応はない。
全くと言っていいほどない。
皆、どうしたと言うのだろう。
あれほど、深い友情の絆で結ばれていたと言うのに。
もしかして、これが今流行のいじめと言うものなんだろうか。
いや、きっとそうなんだろう。
クラスの女王か帝王が覇権を握り、哀れな子羊な僕をなぶり殺しにしようとしているのだろう。
「いや、おい、無視すんなよ」
くそ、僕は負けないぞ。
権力なんかには屈しない。
僕には、正義と言う名の剣がある。
「おーい、お前の親友がお呼びだぞ?」
とりあえず、真っ先にする事は、雑魚の殲滅だ。
やはり、恐怖の魔王と戦うのならば、これが王道だ。
雑魚から倒してレベルを上げていく。
これこそが、覇権を奪い返す近道だ。
「すまない。僕は本当は戦いたくないんだ。できる事なら、静かに平和に暮らしたいんだ。だけど、世間が、世界が、ううん、運命が、僕に戦えと言うんだ!!」
そして、僕は、拳を握ると、力を込めた一発を目の前に居る雑魚へ。
「な、なんで!?ぐへっ」
とりあえず、ザコウォーリアーを一撃の下でしとめる。
ちなみに、某機動戦士シリーズとは全く関係がございません。
「どうして、戦争はなくならないんだろう。どうして、静かに暮らせないんだろう。ここは、こんなに静かなのに」
けれど、討ち取った雑魚を見下ろすと、なんだか切なかった。
やはり、いつの世も戦争と言うものはかくも切ないものなのだ。
けれど、僕は止まらない。
止まれない。
だって、僕は、彼が示す道を進めないから。
僕達には僕達の道があって、それを強制する事はできないし、させたくないから。
周りを見回す。
悪の一団は、呆然としている。
あっけなく先鋒が打たれたのがショックなのだろう。
けれど、こちらからして見れば、やはり弱いのだ。
さぁ、次は誰だ。
誰が来ると言うんだ!!
だが、誰が来ても、恐るる足らず。
今の僕は最強だ。
「ねぇ、何をしてるの、都君」
「ひいい!!いきなりラスボスだ!!」
だがしかし、なんて事だ。
いきなり、ラスボスなんて。
しかも、向こうはなんと最高の武装で来ている。
だというのに、こっちは拳のみ。
シールドは、先ほど前線基地に置いている。
さらに、こっちはエネルギー切れ寸前だ。
くそ、デュートリ○ンビームは、射出してくれないのか!!
核エンジン搭載機の彼女が羨ましい。
「僕の負けだ。くそ、蒼き清浄なる大地を守る事ができないとは……」
完全な劣勢。
というよりも、負け戦。
その場に崩れる事しか出来ない。
調子に乗った僕がいけなかったんだ。
新しい機体をもらったからと言って、調子に乗りすぎたんだ。
怒りの翼を持った少年も調子に乗りすぎて、自由の翼の少年どころか、その親友相手に負けてしまったではないか。
というか、そもそも、あれは自爆みたいなものじゃないか。
なんと言う事だ。
「とりあえず、落ち着いたらどうだ?きっと、お前の言っている事の大半分かって居ないだろうし」
ザコウォーリアーの彼がよみがえり、僕の肩を叩く。
その瞳はどこまでも優しい。
ああ、なんて事だろう。
僕は、なんて間違ってしまった事をしてしまったんだろう。
そうだ、闘いに闘いで応対してはいけないのではないか。
ペンは剣よりも強し。
そう言うではないか。
「ありがとう、ザコウォーリアー。僕は大切な物を忘れてしまうところだったよ」
そんな事を思い出させてくれた彼に謝辞を言う。
本当に、ありがとう。
「とりあえず、僕は、月に行くよ。あそこなら、きっと僕を受け入れてくれる。種を持っていない僕でもきっと受け入れてくれる」
そして、僕は、彼の手を振り解くと、教室を出る。
否、青い星から飛び立つ。
目指すは月!!
きっと、そこにたどり着ければ、僕はきっと幸せになれる。
「あぁ、保健室に行くの?大丈夫?あたしがちゃんと看病してあげるからね」
なのに!!
そう思ったのに!!
なんと、彼女は僕を追いかけてくる。
逃がすつもりはないらしい。
なんと、恐ろしい事だ。
誰か、助けてくれ!!
「諦めろ。それが運命だ」
けれど、運命は残酷だった。
新たな友は、僕を見捨てて、割り切ったように、そう言う。
その瞳が全てを語る。
世には、幸せなんて物はないのだと。
そう、諦めて、全てを受け入れるしかないのだ。
あるがままを。