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青い惑星

僕達は宇宙船の中に居た。


寿命を終えた星から、半ば追い出されるようにして、僕達は宇宙へと出た。


とてもとても綺麗だった星。


緑で囲まれた生命の星。


僕達はそこで生まれ、そして育った。


だけど、今僕達は、そんな鳥かごから追いやられ、旅を迫られている。


今、この宇宙船に居るのは二人だけ。


宇宙船に乗った時は、もっとたくさんいた。


だけど、悲しみにくれた仲間達は、自決をした。


はたまた、新種のウィルスにやられた仲間も居た。


そんな中、僕達二人だけは、なんとか生き残った。


一時は、彼女も新種のウィルスにやられて、死にかけた。


だけど、奇跡的にも彼女は回復した。


その時は、思わず愛の奇跡だなんて、陳腐な想いが浮かんだ。


そして、そんな奇跡の中、僕達は広く果ての見えぬ世界を歩き続ける。


二人きり。


それが、寂しい時もあった。


仲間がどんどん死んでいくのに、直面しては、二人して泣いた。


だけど、それでも、僕達は耐えられた。


そこには、愛しい人の姿があったから。


もしあの時、彼女が助からなかったら、僕も一緒に死を選んでいただろう。


もう、僕は彼女なしでは生きていられない。


彼女なしでは、僕を語れないから。


「ねぇ、あたし達は、これから、どうなるのかな?」


彼女は、僕の背中にしがみつき、頬擦りしながら問う。


その声は、悲しみに帯びている。


「きっと、僕達は、この手に幸せを掴むさ。僕達の背中は、死んでいった仲間の魂を背負っている。幸せにならなくちゃいけない義務があるんだ」


そんな彼女を、愛しく思い、そっと振り向き抱きしめる。


僕は、何があっても彼女を守る。


僕は男だから。


男だから、何があっても彼女を守らなくちゃいけない。


例え、この身が地獄の業火に焼かれようとも。


「そうだよね。うん、ごめんね。また心配かけちゃった」


そんな僕の想いが彼女にも伝わったのだろう。


抱きしめる力を強める。


僕も、やはりそんな彼女が愛しい。


僕を信じてくれる彼女がたまらなく愛しい。


視線の先を変え、ガラス越しに見える宇宙を見る。


星々の瞬きが混沌とした闇を照らす。


ふと、その星の輝きに目を追っていると、一つの惑星に目がいった。


自分の星とは違い、青の惑星。


だけど、今まで見て来たものとはどこか違う。


優しい青をした惑星。


「ちょっと、ごめんね」


僕は、そう言うと、彼女の手を優しく振り解き、コンソールパネルをいじって探索機を飛ばす。


「どうかしたの?」


そんな僕の姿を見て、彼女は訝しげに、席に座る僕のくびに手を回し、パネルを覗きこむ。


その声の調子はどこか期待している。


「もしかすると、居住可能惑星かもしれない」


もちろん、僕としては、彼女の期待に応えてあげたい。


けれど、だからと言って、両手で喜びをあらわにするわけにも行かない。


もしかすると、すめない可能性だってある。


そんな事になれば、きっと彼女はひどく落ち込むだろう。


だから、こんな時こそ、落ち着かないといけない。


しばらく待つと探索結果が出た。


その結果は……


『第一級居住可能惑星』


それは、僕達にとっては願ってもない事だった。


第一級。


それは、僕達が住んでいた星と同レベルの惑星。


それはつまり、この旅が終わりを示した証。


「ねぇ、あたしたち、もう歩き続けなくてもいいんだね?」


彼女が、その結果を見て涙をこぼしつつ、僕にしがみつく。


「あぁ、もう全てが終わったんだ。僕達はこれから幸せになれる」


その思いに答えるように、僕は彼女を抱きしめる。


そして、そっと彼女のあごに手を添える。


その意味に彼女も気付いたのだろう。


涙をふき取り、目を閉じる。


それが合図。


「結奈、愛してるよ」


僕は、そのまま彼女との距離をゼロに……


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


その瞬間で僕は目を覚ました。


身体中はもう完全に鳥肌が立っている。


それもこれもあの悪夢のせいだ。


何が……


『結奈、愛しているよ』


だ。


間違えても、誰が言うかって言う台詞だ。


なんで、僕があの悪魔と二人きりで宇宙船で旅しないといけないんだ。


しかも、僕があの悪魔なしでは語れない存在?


そんなの冗談じゃなさ過ぎる。


とりあえず、あの悪魔なんて必要ない。


あぁ、もう気持ち悪すぎる。


だいたい、あんなところで二人きりなんて、絶対食われてしまうじゃないか。


本当に、最悪な夢だった。


いったい、どうして、あんな夢なんて見てしまったんだろう。


身体を起こし、周りを見まわす。


授業中に寝てしまったから、教室。


とりあえず、大声を出したけど、休み時間だったみたいだから気にしない。


まぁ、あんな悪夢を見た原因は授業中に寝てしまった僕が悪いんだろう。


一種の罰なんだろう。


とりあえず、背中にへばりついて、僕の身体中を舐めまわすようになでている悪魔のせいなんかじゃないはずだ。

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