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意味のない鍵

いきなりだが、僕の部屋には鍵が二つある。


一つは最初から付いていた鍵。


とりあえず、昔はそれでよかった。


それ以前に、鍵を閉めるような事はなかった。


ただ、悪魔が僕の周りをうろつきはじめた頃から、自己防衛手段のためにかけるようにした。


けれど、それもあっさりとマイナスドライバーで開錠された。


まぁ、所詮は一軒家の部屋鍵。


そんなものだろう。


なので、僕はわざわざかんぬきを買ってきて、それを部屋に装着させている。


何を厳重にと言った感じだろうが、僕だってできることならそんな事はしたくない。


ただ、しなければ、僕の貞操が危険なのだ。


あの忌まわしき、キッチンでの出来事以来悪魔はなりふりかまわなくなってきた。


休み時間中は常に僕の膝の上。


それを僕が嫌がろうとすると、泣いて、僕を非難する。


途端に、周りからひんしゅくの嵐。


そして、二人きりになるや否や、僕の制服を脱がそうとする。


とりあえず、音楽室と保健室と屋上、そして教室でそれをされた。


けれど、それは別に学校で限った事ではない。


とりあえず、公園に入ったら、茂みの中に引きずり込まれそうになる。


普通に商店街を歩いていたら、路地裏に引きずり込まれそうになる。


もう、ほとんどしている事が、性犯罪者と変わりない。


今すぐにでも、できる事なら、警察に引き渡したいが、そんな事しようものなら、きっと僕が捕まる。


やはり、どこまでも、世間様は美少女の味方なんだ。


と、それはいいとして、そんなわけで、あの悪魔は僕の身体を奪おうと画策している。


そして、それは、この部屋でも同じ。


以前は、この部屋の鍵を開けると、すやすや眠る僕のパジャマを脱がしていたのだ。


すんでのところで起きていなかったら、完璧に既成事実を作られていた。


そんなわけで、かんぬきを付けて、完全防衛手段を取っている。


だから、とりあえず貞操は安全なのだ。


いや、安全だと思っていた。


今、目の前で起こっている事に、気が付くまでには。


「さぁ、めくるめくる快楽の世界へ!!」


上下下着だけの悪魔が、僕のパジャマを完全に剥ぎ取っている事に気が付くまでは。

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