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物は試しって言うじゃない

今日一日の荒仕事を終えて、僕は帰途へと着く。


まぁ、荒仕事なんていえば、聞こえはいいけど、単に一日授業を受けてきただけの事。


とはいえ、それでも、僕にしてみれば、かなりきつい作業に違いはないが。


なんと言っても、やはり高校の授業なんて眠い。


もうこれでもかと言うぐらい眠い。


数学やら物理やらなんかは特に眠い。


まるで、スリープをかけられているようだ。


て、スリープを知らない人もいるか?


これは、某ソフトにある強制的に眠りにつかせる魔法だ。


まぁ、それがどうしたと言われたら、そこまでだけど。


だいたい、そもそも僕は物理なんて物を取っていない。


とりあえず初期の設定時点で間違えているのだ。


と言うわけで、テイクツー。


数学なんかは特に……


あほらしい。


僕は、脳内でいったい何をしていると言うのだ。


全くの無駄じゃないか。


まぁ、僕は無駄をこよなく愛する人種だから、それはそれでいいけど。


そもそも、最近の人たちは無駄を毛嫌いしすぎだ。


無駄の何が悪いと言うのだ。


効率優先していると、いつかきっと限界が来る。


もう目先の欲にとらわれて、先が見えてないからだ。


まぁ、目先の欲にとらわれてるから、効率的にできないという事もあるが、それはこの際そこらへんに掃いて捨てておく。


僕が言いたいのはそんな事じゃなくて、無駄なように見える事もきっとたまに役立つ時があるのだ。


まぁ、その時点でその行為は無駄ではないけど、やっている時点では無駄だから、無駄なんだ。


だと言うのに、最近の教育と言ったら、完全に無駄を取り払おうとしているのだ。


なんと愚かな事だろう。


もう、あまりにも哀れ過ぎる。


さて、さっさと帰るか。


上履きを脱ぐと、下駄箱をあける。


とりあえず、いきなりの話題転換できっと読者は驚いているだろう。


まぁ、僕的にはおもしろいから、ありだ。


読者の驚愕の顔がもうありありと浮かんでくる。


「くくく」


そう思うと笑いが止まらない。


「ぐふふふっ!!」


と言うか、ツボにはまってしまった。


我ながら、楽しい人生だと思う。


まぁ、周りから奇異の目で見られているが、そんなものは気にしない。


「滅殺」


とりあえず、証拠隠滅をするから。


よし、これで、万事オーケーだ。


埃を軽く払うと、上履きをしまうと、靴を出す。


すると、それと同時に一通の便箋がひらりと落ちてきた。


それを取り上げて、宛名を見てみると、そこにはしっかりと僕の名前が書かれている。


ちなみに、僕の名前はビル・ゲイツだ。


なんていうのは、嘘で、本当は、ジョージ・ワシントンです。


……なんか、おもしろみがないなぁ。


とりあえず、本当のところは紺野都です。


まぁ、それはさておき、とりあえず、裏を見てみると、


『2-B竹原結奈』


差出人の名前も書かれている。


どうやら、その差出人とやらは、同級生の女子のようだ。


「……」


……ふぉぉぉおおお!!


そして、一コマほどはさんだところで、ようやく状況が理解で来た。


つまるところ、これはラブレターと言うものなのだ。


2-Bの竹原結奈嬢は、その小さな胸に熱い情熱のパトスを抑えきれず、こうして僕に恋文を送ってきたのだ。


とりあえず、不幸の手紙とか決闘状とかの案は却下だ。


乙女にそんな事をさせるわけには行かない。


はてさて、それはいいとして、中身を確認して見よう。


とりあえず、便箋を開封すると、中身を取り出し、確認する。


『好きです。もう、死にそうなほど好きなんです。貴方が居ないと心が乾いて、脱水症状を起こしそうなほどなんです。というか、むしろ、もう愛してます。バイカル湖よりも深く愛しています。今すぐ、役所に婚姻届を出しに行きたいほど、愛してます。この私の熱い情熱を受け止めてください。今日の放課後、貴方が私のこの熱い想いを受け止めてくれる事を願って、中庭で待ってます。ぜひ来てください』


そして、それを僕は、懐にしまうと、いきおいよく外へと飛び出す。


もちろん、目的地は家だ。


こんな妖しい、というか、いかれた恋文なんか受け取れない。


なんか、もうすぐにでも、精神病院にお連れしたいほどの内容だ。


なので、もちろん、会いたいと思わない。


むしろ、できる事なら一生会いたくない。


やはり、普通が一番なのだ。


そして、夕焼けの街並みを走り去った。




翌日、僕は普通どおりに、登校した。


ちょっと、昨日のいかれたラブレターが脳裏に浮かんだが、記憶の底から抹消した。


あんな恐ろしいものは、覚えておきたくはない。


精神衛生上よろしいものではないし。


そして、教室に着くと


「おはよう」


クラスのお友達にそう投げかける。


やはり、一日の始まりはこれだ。


元気のいい挨拶だ。


けれど、返事は返ってこない。


全くの無反応。


どうしたものだろうか。


そう思って、周囲を見回す。


けれど、なぜか、クラスのお友達は僕と目をあわせようとはしてくれない。


はてさて、いったい何があったのだろうか?


そんな事を考えていると


「どうして、昨日は来なかったの?」


唐突に、僕の目の前に一人のクラスのお友達が現れた。


けれど、なぜかクラスのお友達のはずなのに、見覚えがない。


一応、記憶力はあまり良くないほうだけど、さすがにしっかりとクラスのお友達の顔は覚えている。


なので、見覚えがないって事はないはず。


と言う事は、とりあえず、クラスのお友達ではないのだろう。


けれど、そうなると今度は別の疑問が浮かんでくる。


クラスのお友達ではない彼女が、なぜ僕の前に居るのかと言う事だ。


なんだか、さっきおかしな事を言われたような気がしたけど、たぶん空耳だと


「ねぇ、どうして来なかったの?」


そんな事を思っていると、さらに彼女は続けた。


どうやら、空耳ではなかったらしい。


けれど、空耳でなかったのなら、それはそれで大変だ。


「身の危険を感じたから」


とりあえず、僕は素直にそう答えた。


彼女の言った言葉で推察をした結果だ。


まぁ、僕にあった約束はとりあえず一つ。


あれを約束と言えるかどうかは別だが、一応あれも呼び出しだろう。


「……そう」


けれど、僕の答えを聞いた彼女は、本当に悲しそうな顔をする。


と言うか、さっきからじっくり見てみて思ったけど、この少女、かなりの美少女だ。


そう言えば、昨日、僕が証拠隠滅のために殺した友人の話では、この学園には大和撫子がいるらしい。


と言う事は、彼女がその大和撫子なのかもしれない。


名前も、確か、竹原結奈だったと思うし。


「やっぱり、あの台詞がだめだったのね。よし、んじゃ、作戦Bね」


彼女姿を観察しながら、そんな事を考えていると、不意にぼそりと彼女がつぶやいた。


なんだか、その内容は、ちょっぴりその姿に似合わない。


「紺野く~ん、あたし、紺野君の事が好きなの、付き合ってくれないかな?」


けれど、そんな事をのんびりと考えていると、次なる攻撃が来てしまった。


なんだか、やけに間延びした猫なで声。


というか、そんな声で、こんなところで、なぜ告白するのだろうか?


彼女には、羞恥心と言うものがないのだろうか?


とりあえず、僕は、かなり恥ずかしい。


うん、それこそ……


「え、ちょっと、なんで掃除用具入れに入るの!?」


とりあえず、掃除用具入れに避難するほど恥ずかしい。


「ほら、出てよぉ~」


けれど、あっさりと捕まると、外へと引きずり出される。


なんだか、こんな事をされると、余計に恥ずかしい。


まぁ、よくよく考えてみると、掃除用具入れに入る事自体が恥ずかしいような気がする。


さて、それはそこらへんに置いておいて、こうして出された以上、とりあえず逃げる事は難しいようだ。


しっかりと、制服を掴まれているし。


「で、答えは?」


どうやら、とりあえず、返事を聞くまで、離さないらしい。


まぁ、そうじゃないと、引きずり出すような事をしないだろう。


はてさて、そうとなると、正直困った。


周りを見てみれば、興味津々のご様子。


特に、男子は涎を垂らし、目を充血させている。


……とりあえず、気持ち悪いな。


僕は、それを見なかった事にすると、彼女の方へと向きなおす。


相も変わらず、美少女だ。


まぁ、数秒の内に顔が変わったら怖いが。


さて、答えはどうしたものか。


いや、まぁ、答え自体は決まっているのだが、どうやって切り出すかが問題なのだ。


とりあえず、間接的に行くべきだろうか?


まぁ、傷つけるのも可哀想だし。


それ以上に、暴走したら怖いし。


昨日の手紙の内容からして、暴走した時の姿が想像しただけで、泣きたくなる。


けれど、だからと言って間接的に言ったところで、きっと通じないと思う。


なんとなくだけど、とりあえず精神異常者には、そういうまどろっこしいものは通じない気がする。


なら……


「とりあえず、付き合えません」


直球しかない。


まぁ、変化球が投げられないんだからしかたないけど。


「がーん」


それはいいとして、僕が直球を投げると、彼女は目に見えて分かるほどショックを受けている。


思いっきり、口で言っている時点でなんとなくわざとらしいけど、ここらへんは無視する。


気にしたら、負けのような気がするし。


「作戦Bでもだめか。よし、最終手段ね」


うん、きっと負けだ。


つまり、これも空耳なんだ。


きっと。


「そ、そんな事言わないでよ?ほら、お試し期間みたいな感じでもいいから」


そして、めげない彼女はさらに続ける。


今度は、サンプル作戦のようだ。


というか、これがなぜに最終手段……


いや、そんな事は聞いてないから、知らないよ。


うん。


「とりあえず、君と一緒に居ると目立ちそうだからやだ」


それよりも、断る事の方が大事だ。


精神異常者と一緒に居るとやはり目立ってしまう。


とは言っても、別に僕はそういう人達を卑下しているわけではない。


単に、彼女が特別なだけなのだ。


本来は健常者のはずなのに、わざわざいかれた風に装っているのだから、その扱いで上等だ。


それよりも、なんだか、周囲の視線がどんどんきつくなって来ているような気がするし。


「だ、大丈夫。それはきっと慣れれば、大丈夫だし」


けれど、そんな僕の思いを全く汲まない彼女は、さらに続ける。


とりあえず、何が何でも引く気はないらしい。


「ごめん。僕は普通を愛しているんだ。普通こそが最高なんだ。だから、君が居てはだめんなんだ!!」


なら、こちらも、もう引く気はない。


とりあえず、自分の守るべき物は守る。


「そ、そんな事言わないで!!私はこんなにも貴方を愛しているのに。もう貴方なしでは生きていけない身体にされてしまったのに!!」


けれど、それでも彼女はねばる。


なんだか、ものすごく台詞口調なのは気のせいだろうか?


というか、さらりと大声で物凄い事を言ってくれた。


とりあえず、狼さん達が目つきを変えた。


ついでに、女性陣は、汚物を見るような目で見てくれてる。


「紺野君て、実は鬼畜だったんだ?」


「え、何?もしかして、あっちの趣味があったんだ?」


「きっと、あれよ。嫌がる竹原さんに無理やり……」


「え、それって犯罪じゃ……」


『紺野君、最低』


というか、完全に犯罪者扱いだ。


「ちょ、む、無罪だ!!冤罪だ!!僕には、そんな趣味なんてない!!」


とりあえず、否定してみるが、彼女達は信じてくれるようすはない。


やはり、世間は美少女の味方なのだ。


「ね、責任を取ってよ?」


そして、とどめに、彼女はそう言った。


その瞳にはチェシャ猫のように、子憎たらしいほど笑みが浮かんでいる。


「アイアイサー」


結局、僕は白旗をあげた。


まぁ、とりあえず、彼女が言ったように、物は試しって言う言葉もあるし。


試してみて、意外といい結果だって出る可能性はあるし。


というか、出てくれないと困るんだけど。

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