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第1話『特に問題はなかった日のこと』

この作品は、

何かが起きる話ではありません。


判断や説明を探さず、

書かれていない部分も含めて

そのまま読んでもらえたらと思います。


朝は、いつもと同じだった。


天気予報では雨の可能性が示されていたが、

実際には降らなかった。

空は少しだけ曇っていて、

それ以上でも以下でもない。


彼は制服に袖を通し、

ポケットの中身を確認してから家を出た。

忘れ物はない。

少なくとも、意識できる範囲では。


駅までの道で、

前を歩いていた人が一度だけ立ち止まった。

スマートフォンを落としたらしい。

彼は拾って声をかけた。


礼を言われ、

それで終わった。


特別なことは起きていない。


学校に着くと、

昇降口の掲示板に新しい紙が貼られていた。

委員会からの連絡事項だったが、

彼の関係する内容ではなかった。


教室では、

誰かが席を替わっていた。

理由は聞かなかった。

聞く必要もなかった。


授業は滞りなく進み、

板書は整っていて、

質問は出なかった。


昼休み、

彼はいつもの場所で昼食を取った。

近くの席で、

少しだけ声のトーンが下がる瞬間があったが、

内容までは聞こえない。


問題は起きていない。


午後の授業が終わり、

放課後になる。


彼はそのまま帰る予定だったが、

廊下で顧問の教師とすれ違ったとき、

一瞬だけ視線が合った。


何も言われなかった。


それは、

声をかける必要がないという判断だったのか、

そもそも気づかれていなかったのか、

彼には分からない。


分からないことは、

判断の対象にならない。


帰り道、

掲示板アプリを開いた。


新しい書き込みはなかった。

更新がないことを確認して、

アプリを閉じる。


彼は歩きながら、

今日一日の出来事を思い返そうとした。


拾ったスマートフォン。

掲示板の紙。

視線が合った瞬間。


どれも、

説明できる。

処理できる。

記録する必要はない。


そう判断したところで、

思考は止まった。


止めた、というより、

続ける理由が見つからなかった。


家に着くと、

鞄を置き、

制服を脱ぐ。


部屋は静かで、

特に変わった様子はない。


机の上に、

以前から開きっぱなしのノートがあった。

何かを書こうとして、

やめたページ。


彼はページを閉じ、

ノートを棚に戻した。


今日は、

何も書く必要がない。


そう判断できることが、

少しだけ楽だった。


夜になり、

明日の予定を確認する。


特記事項はない。


問題が起きていない一日として、

今日も無事に終わった。


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