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クエスト王子と婚約者の私

募集テーマのワードから、タイトルに『クエスト』を使用しています。

 私の婚約者は王子様。

 王位継承順位は、そこそこ低い。

 ご公務とかも、本当にそこそこ。

 殿下はいつも暇そうで、年がら年中夏休み。

 その有り余る時間をたっぷり使って、毎日自由な研究に没頭している。


「でんかーっ! 今日も婚約者の私が様子を見に来ましたよーっ!」


 研究室の扉を開けて、大きな声で呼び掛ける。

 殿下の姿は……見当たらない。

 最初に目に入ったのは、積み上げられた本の山だった。


「これは……あっ、殿下」

「やっ、やあ、婚約者殿」


 本の陰に殿下がいた。

 珍しくうろたえている。


「そんな所で……何をしておられたのです?」


 隠れてた?

 なんのため?

 隠れなければいけないような————


「いやいや、違う違う。話を聞いてくれ」

「お聞きしますよ。何が違うのです?」


 軽く首を振りつつ本の陰から出てくる殿下。


「やれやれ……それでその……たまには読書でもしようかと」


 そう言って、本の山から一冊。

 両手で受け取る私。


「えっと……『幻想の騎士』」


 何これ?

 もう一冊。

 片手で受け取る。


「こちらは……『王国の探求者 超改訂版』」


 ぱらぱらとページをめくってみる。

 どちらも冒険小説みたいな感じだけど。


「選択肢が出てきましたよ」

「面白いだろう。ゲームブックと呼ばれる本だ」

「へー」


 正直ちょっと面白い……かも。


「王国の方は宝探しだ。俺は騎士の方が好みだな」

「どう違うのですか」


 ぱっと見では似通った印象だ。


「宝探しは探索と戦闘だけなんだ」


 飽きてしまう、ということだろうか。


「騎士の方はすごいぞ。まず主人公である騎士が王子に呼び出される」


 王子が王子に……。


「騎士は王子の依頼で王子の婚約者のために働き……彼女と恋に落ちてしまう」

「はぁ」

「王子にも別の女性が現れる」

「なんで!?」

「いや……とにかく、そこに君が来たから、ばつが悪くてな」


 確かにそれはちょっとだけど。


「たまにならよろしいのではないですか」


 暇人でも王子は王子。息が詰まることもあるだろう。

 冒険、恋愛。

 本の中では誰だって自由。


「うむ。しかし俺はいつも探求クエストばかりだな」

「えっ……と。今なんと?」


 よく聞き取れなかった。


「いや、現実でも本の中でも何かを探し求めている」


 そうかも知れない。

 研究も。


「王子も騎士も、それぞれが愛の探求者なんだ」

「はぁ。なんだかいい気がしませんね」

「失言だった。俺は君一筋だ!」


 本当かなぁ。


  *


 数日後。

 殿下は今日も熱心に。


「待ってくれ! このクエストで最後————」


 もう!

 本は全部没収!

 問答無用!

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